小児のCRPのカットオフ値に関する論文3つ。

CRPの価値は医師や施設によって様々です。

私は神戸大学の研修医だったころ、岩田健太郎先生に「CRPはしょせん16点(160円)の検査。ペットボトルジュース1本分の価値しかない」と教わりました。
私が研修した総合診療科(現在は総合内科)では、CRPを測定することはありませんでした。
それは、CRPは測定するほどの価値がないという意味で理解しました。

いっぽうで現在の私は、採血するときは必ずといっていいほどCRPを測定しています(貧血や黄疸やアレルギーのフォローのときは別です)。

今回は、重症細菌感染症の診断におけるCRPの価値について考えます。

CRPに関する小児の論文3つ

CRPに関する小児の論文を3つ紹介します。

C-reactive protein in febrile children 1 to 36 months of age with clinically undetectable serious bacterial infection.(Pediatrics 2001; 108: p1275-1279)

まずは小児科の世界では有名なpediatrics誌から。
3歳未満の深部重症細菌感染症の診断において、CRP7.0mg/dL以上は感度79%、特異度91%で、CRP5.0mg/dL未満は尤度比0.087、検査後確率1.9%で有用だったと報告されています。

Risk stratification and management of the febrile young child.(Emerg Med Clin North Am. 2013; 31: p601-26)

次の論文は、比較的新しいものです。
CRP4.0mg/dL以上をカットオフとしたとき、重症細菌感染症の感度74%、特異度76%と報告しています。

「小児肺炎診療ガイドライン」に関する基礎的検討(日本小児呼吸器学会雑誌 2003 vol14 p198-204)

最後に、日本の小児呼吸感染症診療ガイドラインの礎ともいえる報告を紹介します。
ここでは、入院時CRP値が3.0mg/dL以下で、基礎疾患なく全身状態良好であれば、抗生剤は待ってもよいという結論になっています。

私の感想

私がCRPを測る理由の一つは、子どもが熱を出したとき、その熱の原因がウイルス性なのか細菌性なのかを知りたいためです。
ウイルス性であれば支持的な治療でやがて軽快しますし、細菌性であれば抗生剤を使ったほうが良い結果になります。

ただ、CRPを測定すればウイルス性か細菌性かがクリアに分かるわけではありません。
CRP6mg/dLの伝染性単核球症を経験したことは一度や二度ではありません(と煽った書き方をしましたが、経験したのは三度です)。

今回紹介した論文でも、CRPの尤度比は良いといえません。

小児呼吸器感染症ガイドライン2017にも「CRP値で細菌性とウイルス性を明確に区別することはできない」と書かれてます。

しかし、「じゃあどうすれば細菌性とウイルス性を明確に区別できるの?」というシンプルな疑問を解決できる方法はないのが現実です。

たくさんの発熱患者さんがやってくる一般小児科外来で、迅速にウイルス性か細菌性かを区別するためには、子どもの重症度を見抜く小児科医の技術と、やはりCRPが必要になると私は思っています。

私は上記3つの論文の中間をとって、CRP4mg/dL未満をウイルス感染、4mg/dL以上を細菌感染の目安としています。
こちらの本でも、CRPのカットオフ値を4mg/dLとしました。

もちろん、CRPはあくまで参考所見であることを肝に銘じたうえで、判断しています。

まとめ

重症細菌感染症の診断におけるCRPの価値を考えました。

私は、たくさんの発熱患者さんがやってくる一般小児科外来で、迅速にウイルス性か細菌性かを区別するために、私はCRPのカットオフ値を4mg/dLとして使っています。

しかし、紹介した論文が示す通り、CRPの尤度比は高くありません。
CRPはあくまで参考所見であることを肝に銘じなければなりません。

ABOUTこの記事をかいた人

小児科専門医、臨床研修指導医、日本周産期新生児医学会新生児蘇生法インストラクター、アメリカ心臓協会小児二次救命法インストラクター、神戸大学大学院医学研究科内科系講座小児科学分野に入局。現在、おかもと小児科・アレルギー科院長。専門はアレルギー疾患だが、新生児から思春期の心まで幅広く診療している。