エムラクリームの使い方。実際に効果を確かめてみた。

小児科医の技術の一つに「子どもの採血(血の検査)」があります。

生まれたばかりの新生児であっても、生後6か月頃の肉付きのいい乳児であっても、3歳頃で力が強くじっとできない幼児であっても、小児科医は状況に合わせた採血をします。

このブログを読んでくださっているお父さん・お母さんも、わが子を小児科で採血されたことはあると思います。
子どもが採血されるとき、子どもは嫌がると思いますが、お父さん・お母さんも不安になるでしょう。

子どもの採血に対して、お父さん・お母さんは強い興味を持っていると思います。
それと同様に、小児科医も採血について強い関心を持っており、子どもの採血の方法には、いろいろなスタイルが試みられています。

採血を手早く終えるために、子どもをタオルでグルグル巻きにして身動きできないようにして、その上から腕を押さえつけて採血する施設もあるでしょう。

いっぽうで、子どもを親に抱かせ、絵本や動画を見せて注意をそらし、子どもができるだけリラックスした状態で採血する施設もあるでしょう。

どちらのスタイルがいいかは、子どもの年齢、子どもの理解度、付き添いのきょうだいの数、外来受診する子どもの数などさまざまな要素で変わってきます。

ただ、すべての小児科医はこう思っているはずです。
できるだけ子どもに負担をかけず、迅速に検査できる方法を取りたいと。

こういう状況で、一つの選択肢となるアイテムがあります。
それは、局所麻酔剤です。

局所麻酔剤とは、採血に伴う痛みを和らげてあげるというものです。

採血や注射の痛みを和らげる方法は色々ありますが、局所麻酔剤はその一つになります。
痛くない注射の記事にも、局所麻酔剤について書きました。

痛くない注射!子どもを泣かさない小児科医の9つのワザ。

2017年1月23日

子どもの痛みについて、小児科医は真剣に考えています。
120回日本小児科学会学術集会でも、教育セミナーとして「子どもの痛みについてもう一歩踏み込んで考える」というものがありました。
北海道大学病院の長先生の講演を聞きながら「エムラクリームかあ、使ってみたいなあ」と思っていました。
小児科学会の記録については、こちらの書いています。

日本小児科学会学術集会で学んだこと。

2017年4月17日

今回は、外用局所麻酔剤「エムラクリーム」を私自身に塗ってみて効果を試してみました。
その体験を書きます。

なお、この記事には皮膚に針を刺している画像を含みます。
(血液の画像は含みません)

エムラクリームとは

エムラクリームは小さなチューブに入っています。
中には5g入っています。

注射や採血を予定している部位に塗布し、ラップなどで密封することで麻酔効果が得られ、針を刺すときの痛みを和らげます。

エムラクリームを使ってみた

兵庫県立柏原病院の小児科外来に試供品としてエムラクリームが置いてあったので、さっそく使ってみました。

普通に白いクリームです。
あまりベタつかず、水っぽい印象です。
写真の量は、0.2g相当です。

腕に塗りました。
この量は、少ないです。
もっと厚く、皮膚が透けて見えなくなるまで塗りましょう。

添付文書では、「10cm2に1g使用する」と書いてあります。
そして生後3か月未満の最大塗布量は1g、生後3か月以上の乳児は2gとされています。

とはいっても、注射する場所はたった1点ですから、4cm2(2cm×2cm)の範囲で十分だと思います。
4cm2なら0.4gの使用になります。
(もっとたくさん塗ったほうが効果があるという意見がありましたら、ぜひ教えてください)

しっかりと塗ったら、ラップで密閉します。

5cmの長さで切ったラップを折って、上のような形にしました。
端を紙テープで止めています。

この状態で1時間待ちます。

…………。
………。
…。

なんだかピリピリとした感覚がします。

痛いわけでも熱いわけでもないのですが、そこだけ弱い電流を流されているような、じんじんとした感覚があります。

さて、1時間経ちました。

ラップを取ります。
クリームは皮膚から吸収されたのか、減っているように見えます。

ガーゼでクリームをふき取りました。
少し皮膚の色が白くなったでしょうか。

つねってみましたが、まったく痛くありません。
爪を立ててみましたが、まったく感じません。
麻酔はよく効いているようです。

麻酔がよく効いているのか確かめるために、針で刺してみます。
よく気が利く看護師さんがありがたいことに太い針を用意してくれたのですが、怖かったので23Gの細い針で試してみました。

なるほど、まったく痛くありません。

ラップをはがしてからさらに1時間経ちました。

中央の赤い点は、注射痕です。
周辺の皮膚がさらに白くなっています。

まだ皮膚はじんじんとしており、まったく痛みを感じません。

ラップをはがしてから2時間後です。

皮膚の色はもとに戻りました。
ですが、この時点ではまだ皮膚の感覚はにぶく、爪を立てても痛くありません。

痛みの感覚が戻ったのは、それからさらに1時間後でした。

エムラクリームの感想

自分自身に使ってみた感想としては、以下です。

  • クリームを塗ると、意外とピリピリした。
  • 皮膚の色が一時的に白くなった。
  • 麻酔効果はラップをはがしてからもしばらく(1-2時間くらい)は続いた。
  • 2cm四方、0.4gの使用量で十分だと思った。

私一人の感想であり、子どもへの反応は違うかもしれません。
ですが、エムラクリームの鎮痛効果は身をもって実感できました。

第120回日本小児科学会学術集会の長先生の講演では、薬液を注入するときはどうしても痛みがあるようです。
予防接種でエムラクリームを使う場合、刺すときは痛くなくても、薬液を注入するときは痛みがあります。

ですが、子どもの反応としては、たとえ薬液を入れるときに痛みがあっても、クリームを塗る方が満足度が高かったと講演で言われていました。

あらゆるケースでこのクリームを用いた処置をするのは難しいですが、薬を塗って、ラップして、というのはそれほど難しくなく、鎮痛効果はとても高いため、十分検討すべき処置だと感じました。

ABOUTこの記事をかいた人

小児科専門医、臨床研修指導医、日本周産期新生児医学会新生児蘇生法インストラクター、アメリカ心臓協会小児二次救命法インストラクター、神戸大学大学院医学研究科内科系講座小児科学分野に入局。現在、おかもと小児科・アレルギー科院長。専門はアレルギー疾患だが、新生児から思春期の心まで幅広く診療している。