胎児エコーや、生まれてからのエコーで、赤ちゃんに水腎症が見つかることがあります。
胎児エコーでは500人に1人が水腎症と言われます。
生まれてからのエコーでは、1000人から2000人に1人が水腎症と言われます。
小児先天性水腎症(腎盂尿管移行部通過障害)診療手引き 2016
私の肌感覚としては、もう少しいるんじゃないかなと思います。
よく産婦人科の先生に相談されますので。
なお、生まれてからのほうが水腎症の割合が減るのは、お腹の中で自然に治ってしまうケースがあるからだと私は解釈しています。
今回は、赤ちゃんに見つかる「先天性水腎症」について書きます。
水腎症のグレード
水腎症には、軽いものから重症なものまであります。
その重症度を表すのに、古くから「SFU分類」というのがあります。
グレード1-2は軽症、グレード3-4は重症です。
グレード1-2の水腎症は、通常は何も症状が出ません。
グレード3へと悪化しないか、念のためフォローし、腎臓のエコーを繰り返し検査します。
尿路感染症などの症状が出なければ、過度な心配はしなくても大丈夫だと、ホームケア事典に書きました。
いっぽう、グレード3-4の水腎症では、腎臓と尿管を結ぶ「腎盂」というところが大きく腫れています。
これは、簡単に言えば、腎臓に負担がかかっている状態です。
グレード3-4の水腎症は、エコー以外の検査が必要となります。
グレード3-4の水腎症の検査プラン:利尿レノグラムが先か、排尿時膀胱尿道撮影が先か
グレード3-4の水腎症に対して、どのような検査スケジュールを立てればいいでしょうか。
わが国には、水腎症のガイドラインが2つあります。
どちらも無料で読めるし、腎盂尿管移行部通過障害(UPJO)があってもなくても対応できるので、素晴らしい!
と思うのですが。
腎盂尿管移行部通過障害(UPJO)の有無を簡単に見分ける方法が分かりません。
したがって、アルゴリズム表の左に行くべきか、右に行くべきかが分かりません。
開始1秒で路頭に迷います。
いや、利尿レノグラム検査をすれば分かるんです。
でも、先天性水腎症に対して、症状があってもなくても全例で利尿レノグラムをするのか、という話になります。
腎臓が専門ではない医師にとって、利尿レノグラムは敷居が高いように感じます。
Up to dateにはどう書いてあるでしょうか。
Up to date: Postnatal management of fetal hydronephrosis
Up to dateでは「腎盂径10mm以上なら、まず排尿時膀胱尿道撮影(VCUG)をしなさい」と書かれています。
腎盂径の測り方は、おそらく標準化されていません。
わが国のガイドラインには、「短軸像で、腎臓内にある腎盂を測る」とあります。
長軸像で評価しないように注意しなければならないでしょう。
私は腎盂径10mmとは、SFU分類のグレード3と置き換えてもいいと思っています。
そして、「排尿時膀胱尿道撮影(VCUG)の結果、膀胱尿管逆流症(VUR)があれば、その程度に基づいて予防的抗菌薬療法を考慮せよ」と続きます。
もし膀胱尿管逆流症(VUR)がなければ、腎盂径15mm以上(グレード4と私は読み替えてもいいと思います)では利尿レノグラム検査をします。
膀胱尿管逆流症(VUR)がなく、腎盂径10mm未満なら、両側性なら3か月おき、片側性なら4-6か月おきにエコーし、水腎症の悪化がないか観察します。
以上のように、Up to dateではまず排尿時膀胱尿道撮影(VCUG)です。
排尿時膀胱尿道撮影(VCUG)はとても単純な検査で、結果の解釈も比較的簡単です。
腎臓を専門としていない小児科医にとって、利尿レノグラム検査よりも実施しやすいと思います。
まとめ
腎盂尿管移行部通過障害(UPJO)の有無を最初に見極める日本のガイドラインと、膀胱尿管逆流の有無をを最初に見極めるUp to date。
どちらが正しく、どちらが間違いというわけではないと私は思います。
ただ、少なくても私には、排尿時膀胱尿道撮影(VCUG)を先に行うUp to dateアルゴリズムのほうが実施しやすいです。