2014年度の小児科専門医試験の臨床問題についてです。
専門医試験の勉強方法についてと、一般問題については、以前に記事を書きましたので、併せてお読みください。
そのうち思い出せた35問を書きます。
日齢2。突然ショックをきたし、高次施設へ搬送する。エコーでは左室が縮小している。搬送までにする処置を選べ。
選択肢は酸素投与、PGE1、輸液。
正解はPGE1。
左室低形成の症例です。
染色体G-Bandの画像と、陰部の画像あり。特に欠損や数的異常はなさそう。性染色体はXYである。陰部の画像では、陰核が肥大した女性器のような画像で、色素沈着あり。男性ホルモンは増加していると問題文中にあり。疾患名を選べ。
選択肢はアンドロゲン不応症、11βヒドロキシラーゼ欠損、21ヒドロキシラーゼ欠損。
正解はアンドロゲン不応症。
男性で性腺低形成をきたしたのなら、これしかなかったと思います。
発熱、腹痛をきたした児が2日後にネフローゼを起こした。原因菌は何か。
選択肢は大腸菌、肺炎球菌、腸球菌、クレブシエラ、黄色ブドウ球菌。
正解はおそらく黄色ブドウ球菌。
二次性ネフローゼの原因を問うものですが、ちょっと難しすぎると思います。
溶連菌とブドウ球菌が二次性ネフローゼの原因となりうるとのことですが、そんなの知りませんでした。
日齢2の正期産児。NTEDの画像。血小板低下、CRP1.4、発熱38℃。すべき処置を選べ。
選択肢は経過観察、バンコマイシン投与、血漿交換
正解は、経過観察。
NTEDは小児科専門医試験では頻出問題です。
学童期の男児。幼少期から瞬目あり。授業中に「ア、ア」など言う。注意してもやめない。最近「ばか、しね」などの発言が目立つ。疾患名はどれか。
正解はTourette症候群。
小児科試験問題集に同様の問題がありました。
生後1か月の乳児。3歳姉が2週間前から咳嗽しており、百日咳と診断された。児に対する適切な処置を選べ。
選択肢はエリスロマイシン投与、姉と隔離する、経過観察、γグロブリン投与、DPT接種。
正解不明。
エリスロマイシンは肥厚性幽門狭窄症の合併あるため、生後1か月未満には使いにくいですが、生後1か月であれば使ってもよいように思います。
ただ、抗生剤の予防内服は保険適応がないですよね、きっと。
3か月未満の児が百日咳に罹患すると重症化しやすく、死亡の可能性もありますので、経過観察というのも取りにくい処置です。
γグロブリンの有効性は不明ですし、発症前投与もいささかやりすぎのように思います。
姉と隔離する、というのがもっとも適切に思うのですが、正解は分かりません。
周囲の人に聞いてみましたが、無難な隔離か経過観察を選んだ人が多い印象でした。
生後10か月から中耳炎と肺炎を繰り返す。今まで受けた予防接種では副反応なし。白血球数は正常である。異常を認める検査はどれか。
選択肢は好中球貪食能、好中球殺菌能、IgG、IgE、補体。
正解不明。
伴性無ガンマグロブリン血症と思い、IgGを選びましたけれど、難しいです。
アトピーと易感染性のある男児。皮下結節が多いので、全身のレントゲンを撮影した。この疾患に特徴的なレントゲンはどれか。
選択肢は頭蓋骨、前腕、胸部の正面、腹部の側面、骨盤。
正解不明。
Wiskott-Aldrich症候群なのでしょうか。
関節炎や悪性リンパ腫などを注意してレントゲンを見ましたが、どのレントゲンが特徴的なのかさっぱり分かりませんでした。
生後4か月。筋力低下。舌の線維束性収縮あり。CK160。筋電図でgiant spike。親戚に同様の疾患なし。
選択肢は次子再発率は25%である、母が保因者である確率は2/3である、次子が発症した場合の重症度は異なる、母は保因者でない確率が高い、児は突然変異発生である。
正解不明。
脊髄性筋萎縮症1型、いわゆるWerdnig-Hoffmannだと思います。
AR遺伝と言われますが、親戚に同様の疾患がなく、この症例は突然変異発生かもしれません。
そうすると次子再発率は25%は選べません。
母が保因者である確率2/3、はDuchenne型筋ジストロフィーのことでしょうか。
脊髄性筋萎縮症は1型、2型、3型で予後が異なるので、次子が発症した場合の重症度は異なる、を選びましたが自信は全くありませ
結節性硬化症の症状。合併しやすいものはどれか。
正解はけいれん、心横紋筋腫。
けいれんはWest症候群を意識したものだと思います。
生後10か月、好中球450個、生後6か月から感染を繰り返す。頸部膿瘍のCT画像あり。考えられる疾患はどれか。
正解は、自己免疫性好中球減少症(AIN)。
AINは4症例見たことあります。
頸部膿瘍の例はみたことありませんが、頻度的にはAINが一番多いと思います。
日齢2。低血糖が遷延している。GIR18必要。ケトン(-)、遊離脂肪酸(-)。治療法を選べ。
正解は、ジアゾキサイド。
高インスリン性低血糖症です。
ALLの治療中に、肺炎。第三世代セフェムとフルコナゾールで加療したが効果なし。胸部CTでは肺に膿瘍のようなものがある。β-Dグルカン960と上昇。治療を選べ。
選択肢はカルバペネム、バンコマイシン、ST合剤。
正解不明。
ニューモシスチス肺炎の画像ではないのですが、β-Dグルカン上昇がどうしても気になり、ST合剤を選択しました。
14歳女児。部活で「もっと痩せろ」と言われた。以降、食欲なし。検査値で増加しているものを2つ選べ。
選択肢はIGF-1、GH、コルチゾール、エストラジオール、遊離T3。
正解はGH、コルチゾール。
小児科学会が公開している過去問題(学会のサイトにあります)の第1回のA問題に似たものがありました。
5歳。夜中に目を見開いて叫ぶ。発汗している。朝起きると、夜中のことは覚えていない。発達正常。対応として正しいのはどれか。
正解は「そのうち治りますから心配いりません」
夜驚症ですので、予後良好です。
新生児。RDSである。クベース内酸素30%投与で見ていたら、日齢2に呼吸窮迫症状が悪化した。レントゲンは内側気胸である。治療を選べ。
選択肢は胸腔ドレナージ、気管挿管、サーファクタント投与。
正解不明。
胸腔ドレナージを選びましたが、内側気胸でつけるかどうか。
気管挿管でHFO管理するだけでよかったかもしれません。
幼児。2か月で4回喘息発作があった。治療を選べ。
選択肢はβ2刺激薬を発作時に頓用、抗ロイコトリエン薬内服、フルチカゾン吸入。
正解は抗ロイコトリエン薬内服、フルチカゾン吸入。
月に1回以上の喘息発作は、吸入ステロイドの適応があります。
1歳の細気管支炎。原因ウイルスとして多いのを2つ選べ。
正解はRSウイルスとヒトメタニューモウイルス。
hMPVは2013年頃からのトピックです。
腹部腫瘤を触れた幼児。腹部CTでは石灰化を伴う巨大腫瘤が、腹部中央にある。考えられるのを2つ選べ。
選択肢は神経芽腫、後腹膜奇形腫、Wilms腫瘍、肝芽腫。
正解は神経芽腫、後腹膜奇形腫。
石灰化があるのが特徴でしょう。
二次性徴について正しいものを選べ。
選択肢は女児の二次性徴は約11歳で始まる、成長のピークは生理前にくる。
正解は、成長のピークは生理前にくる。
100%小児科的には、女児の思春期は10歳です。
口蓋裂、心雑音、易感染性を認める乳児。正しいのを2つ選べ。
選択肢はTcell異常、Bcell異常、橈骨欠損、血液型裏試験陰性。
正解はTcell異常と、もう一つ不明。
22q11.2欠失症候群なのは分かりますが、もう一つが分かりません。
VACTERL連合もありえるなら、橈骨欠損なのでしょうか。
充血と膝関節の痛みで来院した15歳。見られる検査異常を2つ選べ。
選択肢は白血球減少、抗核抗体、補体低下、MMP上昇、RF上昇。
正解不明。
そもそも診断名も不明です。
SLEなら白血球減少、抗核抗体、補体低下の3つが正答になってしまうので、SLEではないのでしょうね。
15歳男児。右下腹部痛と肛門病変。血便なし。治療を2つ選べ。
選択肢は低残差食、ステロイド、サラゾピリン。
正解不明。
サラゾピリンは小腸病変には効きにくいかもしれません。
低残差食、ステロイドを選びました。
頻回再発ネフローゼの経過中にけいれんした。BP170/110。頭部MRIで後頭葉障害を認める。この児が合併する症状は何か。
記銘力低下、失語、視覚異常。
正解は視覚異常。
在胎35週、3500gで出生。臍ヘルニアと巨舌あり。もっとも考えられる疾患はどれか。
正解はBeckwith-Wiedemann症候群。
選択肢にクレチン症もあり、ひっかけだと思われます。
生後10か月。お座りまでは順調。はいはいとつかまり立ちができない。座ったままで移動する。精神発達は良好である。
正解は、シャフリングベビー。
正常の発達パターンと言われるものです。
反射に関するイラスト。一生残る反射を選べ。
吸啜、バビンスキー、把握、モロー、パラシュート。
正解はパラシュート反射。
8歳男児が路上で倒れたところ目撃した。心肺停止である。周りに誰もいない。
すべきことを2つ選べ。
選択肢は大声で人を呼ぶ、胸骨圧迫、携帯で救急車を呼ぶ、AEDを取りにいく、脈を測る。
正解は不明。
BLSの通りならば、救急対応システムに通報後、C→A→Bの順でCPRします。
つまり携帯で救急車を呼ぶ、胸骨圧迫となりますが……。
私は、大声で人を呼んだ上で、かけつけてくれた人に救急車要請してもらったほうがいいのでは、と思って、大声で人を呼ぶ、胸骨圧迫を選択しました。
しかし、救急対応システムに通報という意味では「携帯で救急車を呼ぶ」が正解だったのかもしれません。
なお、2010年から、反応と手短な呼吸確認のみで心停止と判断してよく、脈をとる必要はなくなっています。
「見て、聞いて、感じて」も不要です。
添付文書に「小児での安全性は確立されていない」と書かれている薬を、同意書とらずに使ったところ、副作用が出現した。誤っているものを選べ。
選択肢は主治医の責任が問われる、保険機関から支払いを拒否される、医薬品被害救済制度の適応になる、厚生労働省から、医療費を自主返還するように指導される。
誤っているのは、医薬品被害救済制度の適応になる。
同制度は、医薬品を不適正に使用した場合は対象になりません。
10歳男児が気分不良。心電図データが2つある。普段の心電図ではWPW症候群である。現在の心電図では発作性上室性頻拍である。治療を2つ選べ。
選択肢は眼球圧迫、ATP、息こらえによるvalsalva法。
正解はATP、息こらえによるvalsalva法。
眼球冷却ならともかく、圧迫は網膜剥離をきたすので不適切でしょう。
小児科試験問題集(増補版であればP293)に同様の問題がありました。
生後2か月女児。哺乳は良好、成長も良好であった。突如けいれんし、救急車搬送された。便が白色である。行うべき検査はどれか。
選択肢は脳波、ロタウイルス抗原検査、頭部CT。
正解は頭部CT。
胆道閉鎖でビタミンK不足となり、頭蓋内出血を起こしたのだと思います。
ロタウイルスによる胃腸炎けいれんや脳症と考えるには、少し無理があると設定でした。
7歳男児。アレルギー疾患の児。主治医からエピペンを持たされている。学校でアナフィラキシーショックを起こした。教員が行うべき対応はどれか。
選択肢は教員がエピペンをうつ、救急車を呼ぶ、母親に連絡する。
正解は、教員がエピペンをうつ。
呼吸器感染を繰り返す幼児。胸部CTで左下肺野に嚢胞あり。考えられる疾患を2つ選べ。
選択肢は肺分画症、気管支拡張症、先天性肺嚢胞。
正解は肺分画症、気管支拡張症。
肺葉内分画症は肺炎の原因になりえます。
性染色体はXYの児。性器は女性型で、MRIにて精巣を認めない。男性ホルモンは高値である。診断はどれか。
選択肢は、無精巣症、アンドロゲン不応症。
正解はアンドロゲン不応症。
O脚を認める幼児。低Ca、低P血症。intact PTHは異常高値、活性型ビタミンDは正常値である。診断はどれか。
選択肢はビタミンD欠乏、ビタミンD抵抗性くる病、原発性副甲状腺機能低下症。
正解はおそらくビタミンD抵抗性くる病。
ビタミンD抵抗性くる病は低リン血症がその病態の中心です。。
活性型ビタミンDは欠乏していないことも特徴です。