小児科専門医試験の傾向と対策。モチベーションを高める5つの勉強法。

2017年7月17日追記。
専門医をめざす! 小児科試験問題集(改訂第2版) が出版されましたので、記事でに追加しました。

小児科専門医試験は、筆記試験と、症例要約と、面接で合否が決まります。
どれが一番大事かと言えば、筆記試験です。
症例要約と面接で落ちることはありません。(わずかにはいますが)
これは、2014年の日本小児科学会学術集会で関西医科大学の金子先生もおっしゃってました。

  • 筆記試験の合格率:81.46%
  • 面接試験の合格率:99.60%
  • 症例要約の合格率:97.17%

もし症例要約について自信がないのであれば、こちらの記事を参考にしてください。

小児科専門医試験の症例要約。確実に合格する3つの注意点。

2017年2月2日
今回は、小児科専門医試験でもっとも大切な要素である、筆記試験の傾向と対策についてお伝えします。

小児科専門医試験の傾向

傾向!と大見得を切ってしまいましたが、私は2014年の小児科専門医試験を受けただけです。
専門医試験を2回も3回も受けた猛者もいるでしょうから、彼らから情報を集めるのが一番分かりやすいかもしれません。
まあ、その猛者が本当に小児科専門医試験の傾向を理解できているのであれば、そもそも試験に落ちることはないのでしょうが。
パラドックスですね。

とにかく、周りにそういう猛者がいない人にとっては、私の経験も役に立つかもしれないので、ここに書いておきます。

問題数と制限時間

一般問題が80問で90分間です。
臨床問題が40問で90分間です。
1問が何点かということは明示されていませんが、医師国家試験を想定した内容でしたので、一般問題が1問1点、臨床問題が1問3点で、合計200点満点という可能性は十分あると思います。

2014年度は一般問題の最後の8問が、10択問題でした。
選択肢が10個あって、選ぶという形式です。
10択問題は、意外と時間がかかりますので、ここに時間を十分残せるかが重要だと思います。

合格点

おそらく6割なのではないかと思います。
問題が持ち帰れないので、自己採点はできない上に、合格しても得点などは教えてもらえませんでした。
覚えている範囲内で試験問題を復元し、自己採点しましたが、正答率は約65%で合格でしたので、おそらく6割が合格点だと思います。

専門医試験の問題点

大学も卒業して5年以上もたって、試験勉強だなんて。
仕事も忙しいのに、とてもじゃないけれど勉強時間を確保できない。

これが、専門医試験の一番大きな問題点です。
要するに、試験勉強のためのやる気が出ない。

なんとかしてモチベーションを高められないでしょうか。

モチベーションを高める5つの方法

私はこれをやって合格しました。

  • 専門医をめざす!小児科試験問題集 増補版
  • 小児科(国試マニュアル100%)
  • チャート医師国家試験対策〈10〉小児科
  • NCPRとPALSのガイドライン
  • 過去問

どれも趣きが異なるので、やっていて面白かったです。
そして、この5つはどれもモチベーションの向上につながります。
それぞれにいいところがありますので、できれば全て勉強することをお勧めします。

専門医をめざす!小児科試験問題集 増補版

かなりマニアックな問題が多く、すらすら解けるものではないです。
この本のいいところは、自分の知識に絶望できるという点です。
「このままではダメだ!」と危機感を訴えてくるのがこの本の最大の長所です。
この本がなければ「専門医試験なんて、普通に臨床研修受けてれば、普通に合格できるんでしょ?」とタカをくくってしまったかもしれません。
この本のおかげで、最後まで緊張感をもって試験勉強ができました。
まさに、モチベーションアップの参考書です。

2014年に関してはこの本から2問同じ問題、3問の類似問題が出ました。
合計5問も出たのであれば、予想問題集としての価値も十分です。

私が購入したのは「増補版」でしたが、2017年4月に「専門医をめざす! 小児科試験問題集(改訂第2版)が出版されましたので、紹介します。

小児科(国試マニュアル100%)

国家試験のためのコンパクトな参考書です。
この本のいいところは、余白が多いところです。
たくさん書き込みができます。

正直、100%だけでは専門医試験には太刀打ちできません。
ですが、100%に書いてある事がらについて、もっと掘り下げた内容を余白に書きこんでいくことで、自分だけのオリジナル参考書になります。
私は赤いボールペンで書き込みをしてましたので、だんだん100%が真っ赤になっていくのがモチベーションアップにつながりました。

試験で得点をとる、という課題において、こういう地道な作業がよいように思います。

チャート医師国家試験対策〈10〉小児科

10年以上前の参考書ですので、現在は手に入れにくいかもしれません。
良書でしたので、ぜひリバイスしてほしいです。

100%と同じように、国家試験のための参考書なのですが、チェックリストとして○×問題がところどころに挟まっているところが好印象でした。
○×ってクイズみたいで、妙にモチベーションを上げるのは私だけでしょうか。

社会人となって、試験から遠ざかってしまった人が、数年ぶりに試験を受けるのが専門医試験です。
「問題を解く」という単純な感覚が、失われているかもしれません。
チャート医師国家試験対策の○×問題は、問題を解くための実践的な感覚を思い出させてくれます。

NCPRとPALSのガイドライン

必ず1問ずつ出ます。
小児科専門医となるのですから、NCPRもPALSも、プロバイダーコースくらいは受けておいてください。
小児科医なのに、子どもの蘇生ができないなんて恥ずかしいじゃないですか。

モチベーション云々というより、これくらいはやってください。

過去問

ここまでいろいろ書きましたが、結局大事なのは過去問です。
過去問から類似問題はたくさん出ました。

小児科学会のホームページにも一部の過去問が置いてあります。
(注意:学会の過去問は学会員でないと見ることができません)
過去問を見ると、結構難しくて絶望します。
この感覚がモチベーションにつながるように思えます。

なお、2013年専門医試験過去問は、以下のブログがお薦めです。
http://gootarao.blog29.fc2.com/blog-entry-1200.html

私も2014年の過去問を再現していますので、よろしければ参考にしてください。

まとめ

学問に王道なし、と言います。
これさえすれば絶対合格!なんていう勉強法が通じるのならば、それはすでに学問ではないように思います。

この記事の目的は、楽して小児科専門医になれる秘訣を教えることではありません。
ただ、何をすればいいのか漠然としていて、結局何もできなかった、というのでは、よい小児科医になれないと思うのです。
ですから、せめてこういうことをしてみましょうという目安を提示しました。
あなたのモチベーションにつながれば幸いです。

小児科専門医試験の目的は、6年目の小児科医があらためてもう一度勉強しなおす機会を与えることだと思います。
この勉強というのは、臨床現場にすぐに生かせるような実践的な知識とは少し違います。
真面目に初期研修と後期研修を頑張ってきたとしても、小児科専門医試験に必要とされる知識は、研修で求められた臨床能力とは異なるものです。
低出生体重児の割合は何%かなんて、いくら低出生体重児の赤ちゃんを見てきた新生児科医であっても、知らなければ答えられないでしょう?

結局、教科書的な知識が必要です。
それは実践的な知識ではありませんが、回り回って臨床の現場で役に立つときが絶対に来ます。

専門医試験を無意味なことと捉えず、今まで5年間学んできたことを、整理整頓する機会ととらえるとよいと思います。
そうやってモチベ―ションを保つことが、小児科専門医試験を合格するためにもっとも必要な要素かもしれません。

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    小児科専門医、臨床研修指導医、日本周産期新生児医学会新生児蘇生法インストラクター、アメリカ心臓協会小児二次救命法インストラクター、神戸大学大学院医学研究科内科系講座小児科学分野に入局。現在、おかもと小児科・アレルギー科院長。専門はアレルギー疾患だが、新生児から思春期の心まで幅広く診療している。