小児科クリニック「開業1年」で気づいたX線装置の必要性。

あっという間の1年でした。
というには、いろんなことがありすぎまして。
正直なところ「え、これだけやってようやく1年なの?」という気持ちです。

「これから開業する人のために役立てば」と思い、備忘録を残しておきます。
今回は、X線装置について書きます。

一般的な開業ポイント

勤務医から開業医になるとき、何がポイントなるでしょうか。

  • 立地(勤務していた病院の近く、競合が少ない地域、地元などが候補)
  • 資金(融資・自己資金、どの規模の診療所を目指すのか、新規か承継か)
  • 工務店・ハウスメーカー選び
  • 診療器材(X線装置、エコー、院内血液検査)
  • 電子カルテ
  • 予約システム
  • 問診システム
  • 会計システム(自動精算機、クレジットカード)
  • オンライン診療
  • スタッフ
  • 診療日・診療時間

ざっと思いつくだけでもこんな感じです。

この中で、X線装置は診療器材でありつつも、間取りに影響を与え、かつ費用もかかる「取り返しのつかない要素」です。
X線装置を置くか置かないか、悩んだ先生もいると思います。

小児科でX線検査をするタイミング

X線装置は、放射線管理が可能なX線室も必要になりますので、後付けできる装置ではありません。
間取りを考える時点で、X線装置が必要かどうかは必ず決定しなければなりません。

小児科では、あまりX線装置が重要になる機会がありません。
肺炎、異物誤飲などの評価に使えることがあります。
便秘症の評価には適していないと私は考えています。

異物誤飲はそれほど頻度の高い疾患ではありません。
肺炎も、聴診器や酸素飽和度、CRPを参考に疑えば二次病院に紹介するというスタンスも可能です。

そのため、「小児科診療所においてX線装置は必ずしも必要ない」というのが私の認識でした。

いっぽうで、三田市は高齢化がゆっくりと進行しており、将来的に内科の需要が高まります。
父も「X線は絶対にあったほうがいい」と強く勧めてきたこともあって、悩みに悩んで結局X線装置を導入しました。

1年使ってみた感想

1年使ってみた感想としては、「あってよかったな」という感じです。

実はつい最近まで「なくてもよかったかな」だったのです。
ですが、ここ最近はリンヴォックなど投与前に結核の評価が必要な症例が多くなりました。
結核の評価には、X線による画像評価が必須です。

アトピー性皮膚炎の治療でX線装置を使うことになるとは、正直想定していませんでした。
おかげで、X線装置があってよかったと思うようになりました。

他にも、「職員の健康診断にも使える」というのも地味ですが大事です。
スタッフの健康診断は、事業主の義務ですし、自院で健康診断できるのはメリットだと感じています。

当院のX線装置

当院では、診断用X線装置 X’sy Anesis™ Sパック(スタンドタイプ)を使用しています。
立位でのみ撮影できれば十分なので、これにしました。

まとめ

先輩が「開業時はX線装置を設置したけど、年2回しか撮影しなかったから、今は事務長室になってる」という話を聞きました。
私もつい最近まで「なくてもよかったかな」でした。

ただ、自身の診療スタイルによっては、必要な場面があらわれます。
私の場合は、免疫抑制剤使用時の結核評価がポイントになりました。

X線装置を置くかどうか、参考になると幸いです。

ABOUTこの記事をかいた人

小児科専門医、臨床研修指導医、日本周産期新生児医学会新生児蘇生法インストラクター、アメリカ心臓協会小児二次救命法インストラクター、神戸大学大学院医学研究科内科系講座小児科学分野に入局。現在、おかもと小児科・アレルギー科院長。専門はアレルギー疾患だが、新生児から思春期の心まで幅広く診療している。