2020年春から医師となる人へ。第114回医師国家試験の小児科医視点。

4月になると、1年目の医師となった先生たちが病院にやってきます。
彼らがどのような勉強をしてきたのかを知ることは、彼らを教育する立場からすると重要です。

医師国家試験では、彼らの知識が試されます。
つまり、国家試験の問題をチェックすることで、研修医の先生がどのような知識を持っているのか把握できます。

というわけで今回は、2020年に実施された第114回医師国家試験を小児科医の立場でコメントしていきます。

第114回医師国家試験

114A1

疾患と標準治療の組合せで誤っているのはどれか。
a 蕁麻疹 ——— H1受容体拮抗薬内服
b 食物アレルギー ——— 原因食物除去
c アトピー性皮膚炎 ——— 副腎皮質ステロイド外用
d アナフィラキシー ——— アドレナリン静注
e 気管支喘息発作(急性増悪) ——— β2刺激薬吸入

静注じゃなくて筋注でしょ、というのはもちろんです。
問題自体は易しいです。

ただ、この問題で考えて欲しいのは、次の4つ。

  • アナフィラキシーだからって全例アドレナリン筋注だとは思ってませんか?
  • そもそもアナフィラキシーの診断はできますか?
  • アナフィラキシーのグレード2とグレード3を確実に見分けられますか?
  • グレード3のアナフィラキシーには迷わずアドレナリン筋注できますか? ステロイドや抗ヒスタミン薬で様子を見ようとしませんか?

アナフィラキシーには、日本アレルギー学会が作ったアナフィラキシーガイドラインがあります。
この4つの質問には即答できるようにしましょう。

ちょっと昔の話ですが、ハチに刺されてアナフィラキシーショックになっているのに、ステロイドと抗ヒスタミン薬だけ投与されてICU管理されてる症例を経験しました。
そんな不毛で無用なギャンブルはしなくていいです。

ちなみに、細かいところは覚えていなくて大丈夫。
多くの病院が、診療中にスマートフォンで調べ物をすることに寛大です。
少なくても私は歓迎します。

どうしても「スマホはダメだ、紙の本にして」という施設であるなら、この本をポケットに入れておいてください。

どうせ小児科研修は必修なんですから、最初から持っておいてもいいかなって思います。

WEB版小児科ファーストタッチもあります。
リンクが充実しているので、こちらもお勧めです。

解答: d

114A2

慢性咳嗽の原因疾患とその特徴の組合せで誤っているのはどれか。
a COPD ——— 喫煙歴
b 咳喘息 ——— 季節性
c アトピー咳嗽 ——— 咽喉頭掻痒感
d 胃食道逆流症 ——— 後鼻漏
e 副鼻腔気管支症候群 ——— 膿性痰

小児科外来でも、長引く咳を主訴に受診される患者さんはとても多いです。
保護者は子どもの咳に敏感です。

咳にだってガイドラインはあります。
日本呼吸器学会の咳嗽に関するガイドラインです。

3週間未満の急性咳嗽、3週間以上8週間未満の遷延性咳嗽、8週間以上の慢性咳嗽。
おのおのの鑑別疾患、検査、治療などを詳しく書いています。
小児についての記載もあります。

そのため、100ページオーバーの大作です。
それでも、一通り読むことをお勧めします。

どうしても読み切れない、小児の大事なところだけでも、というのなら、初期研修医・総合診療医のための 小児科ファーストタッチにも書いてます。
それでも14ページありますが。

解答: d

114A3

NICUに入院している日齢2(在胎30週2日)の新生児。血小板数の確認のため末梢血血液検査をすることとなった。検体提出のために必要な物品の写真を別に示す。

正しいのはどれか。

画像は載せませんが、採取した血液を適切なボトルに注入する作業は、医師になった最初の日ですら行う可能性のある初歩の仕事です。

初歩の仕事ですが、注意してください。
いつか誰かが絶対にミスをします。

  • 入れるべきスピッツを間違えた。
  • 蓋を間違えた。
  • 量を間違えた。足りない、または多すぎる。
  • 他の患者さんの検体と混ざって、どれか分からなくなった。
  • 他の患者さんのラベルを張ってしまった。
  • 氷冷してすぐに出さないといけないのに、遅くなってしまった。
  • 途中でこぼした。
  • 外注検査の提出期限に間に合わなかった。

本当に、いろんなミスが起きます。
緑の蓋のスピッツといっても、何種類かあるのが一般的です。

蓋を間違えたくらいとか思うかもしれませんが、蓋にEDTAがついていて、それが検体に付着してしまったなら、正しく検査できません。

凝固系検査はスピッツの中にクエン酸ナトリウムが入っています。
クエン酸ナトリウムと血液量は1:9と決まっています。
凝固系だけは、血液量は多くても少なくてもダメです。

他の患者さんと……系は重大なミスです。
必ず患者さん自身とダブルチェックを。

「検体不良だったから、もう1回検査させてね?」とどれだけ可愛く言ったって、子どもは許してくれませんよ。
子どもは注射が大嫌いですから!

114A11

挙児希望のある関節リウマチの女性に対して、妊娠前にあらかじめ中止すべき治療薬はどれか。
a タクロリムス
b インドメタシン
c エタネルセプト
d メトトレキサート
e サラゾスルファピリジン

実際の医療現場で、どうやって調べますか?
添付文書ですか?
添付文書はほとんどすべての薬で「妊婦、授乳婦への安全性は確立していない」って書かれてますよ。

妊婦さんへ使える薬は、私はDailyMedを使っています。

Methotrexate has been reported to cause fetal death and/or congenital anomalies. Therefore, it is not recommended for women of childbearing potential unless there is clear medical evidence that the benefits can be expected to outweigh the considered risks.  Pregnant women with psoriasis or rheumatoid arthritis should not receive methotrexate.

ただ、小児科医的に多いのは、授乳しているお母さんから「この薬飲んでもいいですか?」と相談されるケースです。
この場合は、LactMedがお勧めです。

詳しくはこちらの記事に書きました。

授乳中や妊娠中に使える薬のアドバイス。

2017年9月23日

解答: d

114A12

小児急性中耳炎の難治化に関連しないのはどれか。
a 年齢6歳以上
b 免疫能の低下
c 鼻副鼻腔炎の合併
d 集団保育所への通所
e 薬剤耐性菌の耳漏内検出

小児科医がもっとも使うアイテムは聴診器だと思いますが、2番目は耳鏡だと思うんです。
いや、本当は舌圧子とかアルコール綿とかかもしれませんが。

ぜひとも小児科研修中に耳鏡は使えるようになってほしいです。
重症度評価に鼓膜所見はどうしても必要になるので。

中耳炎の重症度スコアには、鼓膜所見以外のものもあります。
たとえば発熱37.5℃で1点、38.5℃で2点とか。
不機嫌があれば1点とか。
24か月未満もその1つで、なんと3点もあります。

低年齢は重症化、難治化の要因です。
ぜひ、スコアシートと一緒に覚えてください。
簡略版でいいなら、初期研修医・総合診療医のための 小児科ファーストタッチもあります。

解答: a

114A17

2か月の乳児。新生児聴覚スクリーニングで精密検査が必要となり、両親とともに来院した。家族の呼びかけや周囲の音への反応はほとんどない。身長・体重は月齢相当である。外耳道と鼓膜とに異常を認めない。側頭骨CTでは中耳・内耳に異常を認めない。聴性脳幹反応〈ABR〉は両耳とも無反応である。耳音響放射〈OAE〉では、両耳で低中音部に残存聴力が確認された。

医師から両親への説明として適切なのはどれか。
a 「機能性難聴です」
b 「補聴器装用を開始しましょう」
c 「副腎皮質ステロイドで治療します」
d 「人工内耳埋込み術をすぐに予定します」
e 「1歳6か月児健康診査まで様子をみてください」

先天性難聴。
個人的に興味が強いのが、サイトメガロウイルス感染症です。
神戸大学で研修していた時、先天性サイトメガロウイルス感染症に対するバルガンシクロビルの研究に触れたためです。

現在は保険適用ではなく、あくまで研究目的です。
ですが、生後3週間未満の新生児であれば、尿検査によるサイトメガロウイルス核酸検査で診断できます。
この検査は保険適用があります。

興味がある方は、このあたりの論文からどうぞ。

Congenital Cytomegalovirus infection: advances and challenges in diagnosis, prevention and treatment. Ital J Pediatr. 2017; 43: 38.

  • 症候性先天性CMV児へのガンシクロビル療法は有効である。6ヶ月で聴力が改善または保護された率:GCV84% vs 非治療群59%(p = 0.06)。聴力低下した率:GCV0% vs 非治療群41%(p <0.01)。1年後の聴力悪化率:GCV21% vs 非治療群68%(p = 0.002)。いずれも症候性の児のみが対象。
  • 副作用である好中球減少は、内服製剤によって緩和された。6週間での好中球減少率は経口VGCV19% vs 静脈内GCV63%だった。

Serological screening of immunoglobulin M and immunoglobulin G during pregnancy for predicting congenital cytomegalovirus infection. BMC Pregnancy Childbirth. 2019; 19: 205.

  • 名古屋大学の論文。
  • 妊婦11753人中、先天性CMV児は11人。
  • 先天性CMV児は11人中、妊娠中の初感染は3人、既感染からの再活性型は8人。
  • 妊娠中の初感染13人中、3人(23.1%)が先天性CMVになった。既感染からの再活性型500人中8人(1.6%)が先天性CMVになった。
  • 既感染からの再活性型ではCMV-IgM 7.28をカットオフとすると、感度62.5%、特異度96.5%だった。

今後も、新たなエビデンスが生まれるだろう分野です。

解答: b

114A28

3歳1か月の男児。3歳児健康診査で低身長を指摘され両親に連れられて受診した。在胎35週3日、母体妊娠高血圧症候群のため緊急帝王切開で出生した。出生体重2,160g(>10パーセンタイル)、身長44.0cm(>10パーセンタイル)。早産と低出生体重児のため2週間NICUに入院した。NICU入院後2日間は哺乳不良を認めた。1歳6か月児健康診査で歩行可能であり、「ママ」などの有意語は数語認められた。低身長、低体重のため6か月ごとの受診を指示されていたが受診していなかった。偏食はなく保育園で他の同年齢の子どもと比較して食事量は変わらない。自分の年齢、氏名を答えることができる。心音と呼吸音とに異常を認めない。腹部は平坦、軟で、肝、脾を触知しない。外性器異常は認めない。父の身長は175cm、母の身長は160cm。患児の成長曲線を別に示す。

可能性が高い疾患はどれか。

a クレチン症
b Cushing症候群
c Prader-Willi症候群
d 成長ホルモン分泌不全性低身長症
e SGA性低身長〈small-for-gestational-age〉

低身長の相談は、小児科外来では多いです。
-2SD、つまり2.3%ile、つまり100人中前から2番目か3番目の生徒が低身長です。

まずはとにかく成長曲線を書きましょう!

これは低身長に限ったものではありません。
肥満でも、思春期早発でも、思春期遅発でも、まずは成長曲線からです!

母子手帳や保育園、学校の記録を見ながら、正確な成長曲線を書きましょう!

大事なことなので、ビックリマークを3回も使ってしまいました。

解答: d

114A31

A 26-year-old woman presented to the emergency room with palpitations and shortness of breath that started suddenly while she was eating breakfast. Although the health-screening examination performed three weeks ago showed delta waves in her ECG, echocardiography taken at a nearby hospital showed no abnormal findings. At presentation, she was slightly hypotensive with a blood pressure of 96/68mmHg. Her ECG on admission showed a narrow QRS-complex tachycardia at a rate of 180/min. Neither ST elevation nor T wave abnormality was present.

What is the most probable diagnosis of the arrhythmia?
a Sinus tachycardia
b Sick sinus syndrome
c Ventricular tachycardia
d Supraventricular tachycardia
e Complete atrioventricular block

この問題もそうですし、114D63、114E35、114F22もそうですね。
英語問題。

学生のうちから、論文を読む習慣を持っておきましょうねってことなんでしょう。

ただ、「知識欲を満たしたい」って理由で論文を読める人はそれほど多くないと思うのですよね。
だからといって、「目の前の問題を解決したい」という動機は学生のうちは持てないと思います。

医師になったら自然と論文を読むはずです。
解決しなければならない問題が目の前にいっぱいありますから。
便利だなと思うツールやサイトは大抵英語です。
そこから英語に慣れても遅くないのかなって個人的には思います。

余談ですが、当院のノエル医師も日本の医師免許をとるために国家試験を受けていました。
全部英語の問題でいいのに、と言ってました。

解答: d

114A36

4歳の男児。体幹の白斑を主訴に父親に連れられて来院した。生後5か月で体幹に白斑があるのを父親が発見した。その後、増数してきたため受診した。1歳時にけいれんの既往がある。受診時、臀部と大腿部を中心に大小の白斑を認める。顔面では鼻部中心に丘疹が散在している。大腿部の写真を別に示す。

この患児で思春期以降に出現する可能性が高いのはどれか。

a 脂腺母斑
b 神経線維腫
c 爪囲線維腫
d 聴神経腫瘍
e 単純性血管腫

母斑の相談も多いですね。
色素性母斑、扁平母斑あたりは初期研修医・総合診療医のための 小児科ファーストタッチにも書いてます。

でも、白斑と結節性硬化症は載せてません。
載せるべきでしょうか。
ちょっと悩みます。

解答: c

114A56

日齢6の新生児。NICUに入院中である。常位胎盤早期剥離のため緊急帝王切開で出生した。在胎26週4日、出生体重750gであった。出生6分で気管挿管が行われ、10分後には開眼した。その後NICU入院となり、呼吸管理を受けている。入院後、経口胃管を挿入し、日齢1から少量のミルクを開始した。本日、ミルク注入前に胃内にミルクが残っており、腹部が軽度膨満していた。体温36.7℃。心拍数124/分、整。血圧52/24mmHg。呼吸数48/分。SpO2 99%(FIO2 0.25)。大泉門は平坦で、心音と呼吸音とに異常を認めない。腹部は軽度膨満があり、腸雑音は減弱している。四肢の運動があり、筋緊張に異常を認めない。胸腹部エックス線写真(臥位正面および左側臥位正面像)(A、B)を別に示す。

考えられる疾患はどれか。

a 気胸
b 肝腫瘍
c 消化管穿孔
d 消化管閉鎖
e 横隔膜ヘルニア

側臥位の画像が、どっちが頭側か最初分からず、「こっちが頭側なら、横隔膜ヘルニアなんだろうか」と思ってしまいました。

消化管穿孔。
全身状態は比較的よさそうですが、やはり緊急手術です。
新生児壊死性腸炎からでしょうか。
動脈管やインドメタシンの使用の有無、栄養の進め方など、いろいろ考えてしまいます。

この子が無事に生還しているか、またその後の成長発達がどうなっているのか。
問題文とは関係ないところに思いを馳せてしまいました。

解答: c

114A57

1歳6か月の男児。出生時に外陰部の異常を指摘されていたが転居を契機に紹介され受診した。在胎39週、出生体重3,180g、Apgarスコア8点(1分)、10点(5分)で出生した。体重10kg、体温36.5℃。脈拍92/分、整。SpO2 97%(room air)。心音と呼吸音とに異常を認めない。腹部は平坦、軟で、肝・脾を触知しない。亀頭の一部は包皮から露出し、外尿道口は陰茎と陰嚢の移行部に確認できる。外陰部の写真(A、B)を別に示す。

この患児にみられるのはどれか。

a 血尿
b 尿閉
c 水腎症
d 陰茎の屈曲
e 真性尿失禁

尿道下裂。
泌尿器科の疾患ですが、最初に相談にくるのは小児科です。
予防接種や風邪診療のついでに、そういえばみたいな感じで相談されることも多いです。

すごくレアというわけではありませんが、小児科疾患ではないので、すぐには即答できないかもしれません。
尿道口の位置で手術をするかしないかが決定され、手術の時期は米国小児科学会では生後6カ月から1歳が推奨されています。

こういうことを覚えておく必要はありません。
up to dateを契約している病院なら、どこでもスマホで利用できます。
尿道下裂と日本語で検索すれば、「Hypospadias: Management and outcome」という項目がすぐに見つかります。

日本語で調べたいなら、医中誌Webが便利です。
病院の図書室や、上司、同僚がどのような本を購読しているのかチェックしておきましょう。
私の場合は、病院が小児科診療を購読しており、部長が小児内科を購読しているので、医中誌で「尿道下裂 小児科診療」または「尿道下裂 小児内科」と調べます。

あとでネルソン小児科学を開いたりもしますが、これは趣味みたいな感じですね。

解答: d

114B5

虐待が疑われる小児を診察した際の対応として適切なのはどれか。
a 学校に連絡する。
b 警察へ通報する。
c 虐待の事実を立証する。
d 児童相談所に通告する。
e 親に事実関係を確認する。

虐待については、こちらに書きました。

致死率5%、重症化率25%!恐るべき小児科疾患である児童虐待。

2017年2月23日

親に事実関係を確認する必要はありません。

ですが、子どもに事実関係を確認するときにも注意が必要です。
いつ、どこで、何度されたかなどは聞かないほうがよいとされます。
子どもの記憶は不明瞭であることが多く、たくさん聞きすぎても、あとで情報が食い違うことがあります。
不要な情報に振り回される結果になります。

子どもが直面している状況を確認するために、「誰が、何をしたか」という情報だけを簡潔に聞きます。

子どもが話したことは、そのままオウム返しに繰り返すのがよいようです。
例えば子どもが「お父さんは悪くないの。お酒の勢いだったんだから」と言えば、「そうなのか、お酒の勢いでしたことだから、お父さんは悪くないと、あなたは思っているんだね」と答えます。
「いくらお酒を飲んでも、お父さんがしたことは犯罪だね」と言うと、子どもは父親をかばおうとして、これ以上何も言わなくなります。

また「私が悪かったから叩かれたの」と言う子どもには「自分が悪いからこんなことになったと思っているんだね」と繰り返すだけにするのがよいようです。
「あなたは何も悪くないんだよ」と答えると、子どもは「自分が悪い」と思いこむことで、理不尽な状況を合理化していますので、「自分が悪い」という部分を否定されると、うまく合理化できなくなって、心がストレスに押しつぶされる可能性があるようです。

他にも、不適切な言葉を書きます。

  • 「よく話してくれたね、ありがとう」→褒められたという利益供与で、嘘をつくようになる。
  • 「そんなひどいことされたの、かわいそうに」→もっとひどいことをされたのに、序盤でこんなに驚かれると、これ以上話せなくなる。
  • 「そんなことするなんて、ひどいお父さんだね」→父親をかばって何も言わなくなる。
  • 「誰にも言わないから、安心してお話してね」→児童相談所に通告できなくなる。子どもに黙って通告したら、もう二度と信頼されなくなる。
  • 「どうして、誰にも言わないで欲しいの?」「どうして、お父さんに言われると心配なの?」→虐待された子どもに「どうして」は禁句。虐待された子どもは、家庭で「どうして、あなたはできないの?」と言われ続けている。

とてもテクニックが必要です。

114F57も虐待の問題ですね。
関心の高さが試験にも反映されているということは、とても良いことです。

解答: d

114B6

救急外来で小児を診察した研修医から指導医への報告を以下に示す。

研修医:「8か月の男児です。2日前から38℃台の発熱、咳嗽、鼻汁が続くため来院しました。保育所で同じような症状のお子さんがいるようです。4種混合ワクチンは2回接種されています。眼球結膜の充血はありません。軽度の喘鳴を認めました。鼻汁がひどくSpO2がルームエアーで94%であり、入院も考慮する必要があると思います」

指導医:「患児の外観はどうですか」

研修医:「少しぐったり感があり、機嫌が悪いです」

指導医:「呼吸状態はどうですか」

研修医:「軽度の陥没呼吸がみられます」

指導医:「皮膚色はどうですか」

研修医:「チアノーゼはなく、毛細血管再充満時間は2秒未満でした」

指導医:「発疹はありますか」

研修医:「ありません」

指導医:「鑑別診断のため患児に必要な検査は何ですか」

これに続く研修医の返答として最も適切なのはどれか。
a 「咽頭溶連菌迅速検査を行います」
b 「鼻腔RSウイルス迅速検査を行います」
c 「尿中肺炎球菌抗原迅速検査を行います」
d 「咽頭アデノウイルス迅速検査を行います」
e 「咽頭マイコプラズマ迅速検査を行います」

指導医の質問はPATを意識したものです。

PATとは、pediatric assessment triangleのことです。
triangleと言うくらいなので、3つの要素が重要です。
つまり、外観から判断する意識状態、呼吸様式、皮膚の循環の3つを評価します。
ぼんやりしていたり、逆に興奮していたりすれば、意識に問題があります。
呼吸が速かったり、首振り呼吸をしていたり、明らかな喘鳴が聞こえれば、呼吸に問題があります。
皮膚が蒼白だったり、まだら模様だったりすれば、循環に問題があります。

こうした評価をパッとするのがPATです。

ただ、ちょっと注文をつけるなら、もう診察を終えてしまった時点でPATを確認するのは意味があるのかな、と。
PATは診察を開始する前に、3秒くらいで判断するものですから。
この症例でも、「皮膚色はどうですか」という質問に対し、毛細血管再充満時間を答えています。
毛細血管再充満時間は、指や足底を圧迫したあと、手を離して、色が戻るまでの時間です。
2秒以上はショックの徴候といえます。
ですが、これは診察所見であり、PATとはいえないです。

PATじゃなくて、ABCDEの確認がいいのかなと思います。
またはSAMPLEとか。
このあたりは、ぜひPALS(小児二次救命法)の講習会を受けてください。

さらに言うなら、本症例の場合、RSウイルスが陽性であっても陰性であっても、その後することは全く変わりません。
RSウイルスが陰性ならライノウイルスかなと思うだけです。
「陽性であっても陰性であってもすることが変わらないなら、検査する意味があるの?」って、私は研修医1年目のときに岩田健太郎先生に怒られたことがあります。

私はむしろ、この児に対して胸部X線を撮影したいです。
もし肺炎像があれば、血液検査を施行した上で、抗菌薬を投与するか考えたいです。
RSウイルスかどうか分かっても患者さんは治りませんが、細菌性肺炎は抗菌薬で予後が変わるからです。
このあたりの診断治療アルゴリズムは、初期研修医・総合診療医のための 小児科ファーストタッチに書きました。

ちなみに、1歳未満やパリビズマブ注射中の児、入院症例であればRSウイルス迅速検査は保険適用がありますが、それ以外のケースでは迅速検査の適用はありません。
つまり、本症例が1歳2か月だったなら、この「鼻腔RSウイルス迅速検査を行います」は正答とは思えません。
結局のところ、その程度の検査です。

と強気で書きましたけど、私はこの症例にRSウイルス検査をしますよ。
その子自身にはメリットはありませんが、地域の流行を知ることで、翌年からのパリビズマブ開始時期の検討など、予防の意味を持ちますので。

解答: b

114B17

胎児付属物について正しいのはどれか。
a 羊水は弱酸性である。
b 臍帯動脈は1本である。
c 臍帯表面は絨毛膜で覆われる。
d 羊膜はWharton膠質からなる。
e 臍帯静脈の血液は胎児側に向かって流れる。

私たちはへその緒から動脈カテーテルや静脈カテーテルを留置してますからね。

小児科の必修期間は4週間ですが、可能であれば一般小児科4週間と、NICU4週間の合計8週間以上を研修して欲しいなって思います。
どちらも楽しいですよ。

解答: e

114B19

溶血性貧血でみられるのはどれか。
a 黄疸
b 徐脈
c 匙状爪
d 眼球突出
e 拡張期心雑音

NICUがあってもなくても、産婦人科が分娩をしている病院であれば、小児科は新生児管理をしているはずです。

そして新生児の入院理由は、呼吸障害や哺乳障害や感染モニタリング目的やいろいろありますけれど、もっとも多いのが新生児黄疸だと思います。

黄疸の鑑別ってシンプルですけれど、これができるとできないとでは小児科カンファレンスでのカッコよさが違いますよ。
「先生、しっかりしてるね!」って言ってほしかったら、まずは新生児黄疸の鑑別から始めましょう。

解答: a

114B26

24歳の男性。調理中に包丁で右母指を切ったという。現場で創部をガーゼで圧迫し来院した。脈拍72/分、整。血圧110/60mmHg。呼吸数18/分。SpO2 98%(room air)。ガーゼによる圧迫を解除して創部を観察し止血されているのを確認したが、この際に創部を見た患者が気分不快を訴えた。顔面は蒼白で多量の発汗を認める。

直ちに行うべき対応はどれか。
a 仰臥位にする。
b AEDを装着する。
c アドレナリンを筋注する。
d 深呼吸するように指導する。
e 創部を強くガーゼで圧迫する。

これ、結構多いんですよ。
血管迷走神経反射です。

思春期の男の子に多いかな、血液検査をしている最中に顔が真っ白になって、冷や汗をかいて。
とにかくベッドに横になってもらって、足を少し挙げておきましょう。
大丈夫、ちょっと休めばよくなります。

解答: a

114B31

55歳の男性。両足の浮腫を主訴に来院した。10日前に両足の浮腫が出現し増悪したため受診した。身長170cm、体重75kg(10日前は65kg)。脈拍100/分、整。血圧92/56mmHg。両下肢に浮腫を認める。尿所見:蛋白3+、潜血(−)。随時尿の尿蛋白/Cr比は8.7g/gCr(基準0.15未満)。血液所見:赤血球485万、Hb 18.1g/dL、Ht 48%、白血球7,800、血小板23万。フィブリノゲン677mg/dL(基準186〜355)、Dダイマー3.1μg/mL(基準1.0以下)。血液生化学所見:総蛋白4.0g/dL、アルブミン1.5g/dL、尿素窒素56mg/dL、クレアチニン1.3mg/dL、血糖84mg/dL、HbA1c 6.0%(基準4.6〜6.2)、総コレステロール310mg/dL、トリグリセリド120mg/dL。腎生検にて微小変化型ネフローゼ症候群と診断された。

この患者において注意すべき合併症はどれか。
a 左室肥大
b 食道静脈瘤
c 視神経乳頭浮腫
d 深部静脈血栓症
e 甲状腺機能亢進症

成人ではネフローゼに対して腎生検しますよね。
小児では腎生検ファーストじゃないんですよ。
びっくりされてしまいますけど。
小児のネフローゼは微小変化型であることがほとんどだからです。

腎生検をするのは、次の場合です。

  1. 1歳未満
  2. 持続的血尿、肉眼的血尿
  3. 高血圧、腎機能障害
  4. 低補体血症
  5. 腎外症状(発疹,紫斑など)を認める
  6. ステロイド抵抗性を示す

詳しくは、小児特発性ネフローゼ症候群診療ガイドラインを参考ください。
神戸大学の飯島先生や、それこそ小児科ファーストタッチの書評を書いてくださった吉川先生らが尽力してできた、良いガイドラインです。

解答: d

114B36

13歳の男子。学校心臓検診で心電図異常を指摘され、父親に連れられて受診した。自覚症状はない。脈拍76/分、不整。血圧110/74mmHg。心エコー検査所見に異常を認めない。心電図を別に示す。この心電図にみられる期外収縮は運動により消失した。Holter心電図検査において期外収縮の連発を認めなかった。

患児および父親への説明として正しいのはどれか。

a 「不整脈の薬を飲みましょう」
b 「心臓カテーテル検査を行います」
c 「体育の実技は見学してください」
d 「心配はないので経過をみていきましょう」
e 「カテーテルアブレーションという治療を行います」

初夏の風物詩。
学校心臓健診での異常指摘です。

5月6月の小児科外来は、これが多いです。

実際の対応は、学校心臓健診の実際に準じますね。
連発のない単原性の心室期外収縮なら、強い運動可で、運動部も可、検診間隔は1-3年、とか。
そういうのが書かれています。
たぶん、これ以外に明確な指標はないんじゃないかな。

小児科は季節を感じる場所です。
1か月しか回らないなんてもったいないです。
できれば季節を変えて、2回きて欲しいです。
たとえば1年目の夏に必修で回り、2年目の冬は選択で回るとか、そういうの素敵です。

解答: d

114C3

乳児の心肺蘇生法で正しいのはどれか。
a 胸骨圧迫の深さは胸の厚さの約1/2である。
b 胸骨圧迫は60〜80回/分の速さで行う。
c 死戦期呼吸を認めたら蘇生行為を開始する。
d 2人の救助者で行う場合の胸骨圧迫と人工呼吸の比は30:2である。
e 脈拍の触知は大腿動脈で行う。

この問題は、BLSの知識だけで解けます。

ですが、できればPALS受けて欲しいですね。
PALSは小児救急の楽しさがぎゅっと詰まっています。
絶対に楽しいです。
楽しいはずです。

ちなみに、初期研修医・総合診療医のための 小児科ファーストタッチには「もしPALSが退屈なものであったとすれば、それはPALSインストラクターの責任である」と書いています。

解答: c

114C12

食中毒について正しいのはどれか。
a 食中毒患者を診断したときは保健所長に届け出る。
b サルモネラ菌による食中毒で発熱を起こすことはない。
c 黄色ブドウ球菌食中毒の予防には食品の食前加熱が有効である。
d カンピロバクターによる食中毒の潜伏期間は2~3週間である。
e 我が国での食中毒による患者数では腸炎ビブリオによるものが最も多い。

食中毒やカンピロバクターについては、こちらに書きました。

食中毒で最多!カンピロバクター腸炎の抗生剤治療と保健所への届出。

2017年2月27日

答えは消去法からaでしょうが、aの選択肢にもちょっとだけツッコミ入れてみます。
「診断したら保健所長に届ける」ではなくて、「疑ったら保健所長に届ける」が正解です。
厚生労働省が出している「食中毒を疑ったときには」医師の方々への届出等のご協力のお願い」を確認ください。

ただ、「疑う」という意味はかなり幅広いんですよね。
下痢で来院した人が、2日前に焼肉屋さんに行っていたくらいなら、「まさか食中毒かな」と疑ったとしても保健所長に届ける医師はいないと思います。
いや、多分ですよ。
少なくても私は届けません。
ただし、焼肉屋さんを訪れた家族全員が2日後に下痢、嘔吐をきたし、他の客にも同様の症状が出ていれば、食中毒をかなり疑います。
これくらい濃厚なら、診断前に保健所長に届けます。

これは、私の感覚という話です。

あと、潜伏期間を知っておくことは、問診で役に立ちますね。
up to dateなら、「Clinical manifestations, diagnosis, and treatment of Campylobacter infection」に潜伏期間は1-7日、平均3日とあります。
潜伏期間は英語でincubation periodです。

おなじみの初期研修医・総合診療医のための 小児科ファーストタッチでは、カンピロバクターの潜伏期間は2-5日と記載しました。

便利なほうを使ってください。

そういえば、114D74も食中毒問題ですね。
あっちはバーベキューの3日後ですが。
バーベキューもエピソードとして多いのでチェックです。

解答: a

114C19

小学校における保健指導により一次予防が期待される疾患はどれか。
a 肥満症
b 低身長症
c 1型糖尿病
d 甲状腺機能亢進症
e 神経性食思〈欲〉不振症

肥満はすぐに症状が出るわけではないので、小児科医は経過観察という名の放置をしがちです。
ですが、早期発見し、介入していかなければなりません。
なぜなら、18歳までに肥満が改善しないと、2型糖尿病のリスクが4.14倍になるからです。

肥満は「18歳までに改善」しないと2型糖尿病リスクが4.14倍。

2018年7月30日

実際に肥満をどのように診断し、どのようにアドバイスをするか。
ガイドラインがあるので大丈夫です。
詳細はこちらに書きました。

小児肥満症診療ガイドライン2017。介入のタイミングと診断基準。

2017年8月5日

解答: a

114C22

2歳0か月時の発達で遅れがあるのはどれか。
a 三輪車をこげない。
b 片足立ちができない。
c 自分の姓名が言えない。
d はさみで紙を切れない。
e 興味のあるものに指さしをしない。

1歳半がイクラちゃん、3歳がタラちゃん。
という覚え方をしてました。
イクラちゃんは欲しいものに「ばぶー」と指差しますね。

健診も小児科研修中に経験できます。
ぜひ1歳半健診を極めて欲しいと思います。
もっともシンプルにいえば、歩けるか、言葉が数語出るか、です。

では、1歳半で歩けなければただちに異常なのか。
言葉が出なければただちに異常なのか。

このあたりも学んで欲しいと思います。
2020年4月に出版予定の本に、そのあたりの想いを書いています。

解答: e

114C24

維持輸液製剤(組成:Na+ 35mEq/L、K+ 20mEq/L、Cl− 35mEq/L、グルコース5.0%)500mL中に含まれるエネルギー量(kcal)に最も近いのはどれか。
a 25
b 50
c 100
d 200
e 400

輸液って全然カロリーないですよね。
ポカリスエット飲んだ方がましです。

ということに気づかせる問題でしょうか。

解答: c

114C26

別の種類の予防接種を行うまでに、27日間以上の間隔をおくべきなのはどれか。2つ選べ。
a BCG
b 水痘ワクチン
c B型肝炎ワクチン
d 肺炎球菌ワクチン
e ヒトパピローマウイルス〈HPV〉ワクチン

このブログでも、予防接種に関する記事はたくさん書いています。
もっとも読まれたのが、これです。

予防接種後に発熱しやすいワクチンと時期について。

2017年5月20日

予防接種スケジュールは時々変更になるので、つねに知識をアップデートさせなければなりません。
また、発熱後だったり、けいれん後だったり、ガンマグロブリン投与後だったり、ステロイド投与中だったり、免疫不全があったり、こういうときに予防接種をどうするのかも知っておかなければなりません。

予防接種のガイドラインはもちろんありますし、CDCやredbookも参考になります。
2020年4月に出版予定の本に、簡単にまとめています。

解答: a,b

114C35

3歳の女児。右肘を動かさないことを心配した祖父に連れられて来院した。自宅で遊んでいた際、8歳の兄から右手を引っ張られた直後から右肘を動かさなくなった。右肘関節の橈骨頭周囲に圧痛を認める。同部に腫脹、熱感および発赤はない。肩関節と手関節とに異常を認めない。右肘関節エックス線写真で骨折を認めない。

適切な治療はどれか。
a NSAID
b 徒手整復
c シーネ固定
d 肘関節包切開
e 肘関節可動域訓練

この記事を書く2日前、私の子どもが肘内症になりました。
はい、それだけです。

解答: b

114C37

1歳の女児。咳嗽を主訴に受診した。数日前から咳嗽と鼻汁があり、夜間咳嗽が増強したため両親に連れられて救急外来を受診した。オットセイが吠えるような咳だという。身長80.0cm、体重10.0kg。体温38.2℃。心拍数120/分、整。血圧90/58mmHg。呼吸数28/分。SpO2 96%(room air)。胸骨上窩、鎖骨上窩に陥没呼吸を認める。両側胸部に軽度の吸気性喘嗚を認める。アドレナリンの吸入を行ったが症状が改善しない。

次に必要な対応はどれか。
a 気管挿管
b 吸入β2刺激薬投与
c 呼吸リハビリテーション
d マクロライド系抗菌薬投与
e 副腎皮質ステロイド全身投与

アドレナリン吸入が効かなかったので、喉頭蓋炎を疑って気管挿管を選んだ学生さんも多かったのでは。
ミスリードなので、ちょっとかわいそうだなと思います。

喉頭蓋炎にしてはバイタルサインが安定していますね。
喉頭蓋炎は咳は出ない、というか出せないことがあります。
唾液を飲みこめないので、口から溢れます。
顎を上げ、口を開けます。
声は弱々しいか、出ないことがあります。
本症例は、喉頭蓋炎らしさがありません。

クループにステロイドを出す。
これはとても簡単です。

では、さらに一歩踏み込んで。

  • この児の重症度はどうですか?
  • 入院が必要ですか? 帰宅できますか?

これに答えるには、ウエストレースコアが便利です。
問題文からすべては評価できませんが、おそらく意識清明0点、チアノーゼなし0点、吸気性喘鳴は安静時聴診器で聞こえる2点、呼吸音の減弱なし0点、陥没呼吸中等度2点で、合計4点と思います。
4点は中等度です。

中等度はアドレナリン吸入で軽度にまで改善しない場合は入院を勧めます。
この症例は、デキサメタゾン0.15mg/kg内服を処方した上で、入院をお勧めします。
もちろん、本当に入院となるかどうかは、きょうだいの有無、親が共働きか、親の心配度、育児を手伝ってくれる祖父母の有無などいろいろな要素が加わりますけれど。

でも、ベースとなる基準は持っておくべきです。
検査の基準、入院の基準、帰宅の基準など、初期研修医・総合診療医のための 小児科ファーストタッチは便利です。

解答: e

114C44

2歳の男児。生来健康であったが、発熱を主訴に母親に連れられて来院した。診察時に母親が離れても啼泣しない。体温38.2℃。心拍数110/分、整。血圧98/62mmHg。呼吸数30/分。SpO2 98%(room air)。毛細血管再充満時間は2秒以内。自発的に開眼しており光をまぶしがるが、視線が合わず追視をしない。

この患児に疑われるのはどれか。
a 頻拍
b 低血圧
c 意識障害
d 呼吸不全
e 末梢循環障害

意識レベルはGCSとJCSがあります。
看護師や救命士と情報を共有しようと思うと、JCSの方が普及しやすいように感じます。

保護者と視線が合わないのはJCS3の所見です。
初期研修医・総合診療医のための 小児科ファーストタッチにも記載しています。

そしてJCS3以上は、きわめて重要な所見です。
明確な意識障害があると認識しましょう。
たとえば、けいれん後にJCS3以上が1時間続く場合は、脳炎・脳症を疑って頭部CT、髄液検査を行うように上記に記載しました。

解答: c

114D9

ヘルパンギーナにおいて小水疱が好発する部位はどれか。
a 咽頭
b 手掌
c 足底
d 体幹
e 外陰部

ヘルパンギーナもcommon diseaseです。
詳しくはこちらに。

ヘルパンギーナの症状・治療・潜伏期間・登園の目安。

2017年6月30日

夏の小児科は、ヘルパンギーナと熱性けいれんでいっぱいです。
熱性けいれんを管理できると、小児救急に自信が持てるので、併せてチェックしておいてください。
(覚えろという意味ではなく、必要なときに必要な情報が参照できるようにしておいてください)

解答: a

114D11

溶連菌感染症との鑑別で伝染性単核球症を最も強く示唆するのはどれか。
a 頭痛
b 発熱
c 咽頭発赤
d 乾性咳嗽
e 後頸部リンパ節腫脹

溶連菌の診断って意外と奥深いのですよ。
検査して陽性なら溶連菌感染症というわけではないのです。
なぜなら、元気な子どもの12-20%は溶連菌を保菌しているから。

皮膚にブドウ球菌がいるからといって、感染症とはいえないでしょう。
喉に溶連菌がいるからといって、感染症ではありません。

保菌問題は、こちらに詳しく書きました。

溶連菌の保菌とは何ですか?治療すべきですか?

2018年7月7日

さて、話を戻しましょう。
溶連菌はペニシリンで治療しますが、伝染性単核球症にペニシリンは効かないどころか、発疹のリスクとなります。
伝染性単核球症、すなわちEBウイルス感染症との鑑別は大切です。

溶連菌を疑う基準に、centor criteriaがあります。
これは小児でも使えるのでしょうか。

Centor criteriaは小児の溶連菌診療に有用ですか?

2019年6月27日

5歳未満にcentor criteriaはなんと逆相関しました。
これは、溶連菌らしさを示すはずのcentor criteriaが、むしろEBウイルスらしさを示すという衝撃的な結果です。

溶連菌なのか、伝染性単核球症なのか。
臨床でも迷わせるこの問題を感じさせる、とてもいい問題ですね。

解答: e

114D23

2歳の男児。腹痛のため母親に連れられて来院した。今朝から間欠的に腹痛を訴えている。排便はあったが、血便ではなかったという。診察時はおとなしくしている。身長86cm、体重11.5kg。意識は清明。体温36.8℃。脈拍100/分、整。血圧96/60mmHg。呼吸数24/分。心音と呼吸音とに異常を認めない。腹部はやや膨満しているが軟らかい。臍上部の圧痛を認める。腸雑音はやや亢進している。腹部超音波像を別に示す。

考えられる疾患はどれか。

a 便秘症
b 腸重積症
c 急性虫垂炎
d 十二指腸潰瘍
e 腸回転異常症

「相談です。救急外来に1歳の嘔吐症が来院しまして」

「特徴を詳しく教えて?」

「間欠的啼泣があるんです」

「腸重積だね。すぐわかったよ。それは腸重積」

「でもちょっとわからないんです。私も腸重積と思ったんですけど、エコーでターゲットサインがないんです」

「それは腸重積じゃないね。腸重積ならターゲットサインは絶対だよ。ターゲットサインがないなら他の鑑別を考えるべきだ」

「はい、私もそう思ったのですが、やっぱりわからないんです」

「何がわからないの?」

「私、腸重積のターゲットサインを実際に診たことがなくて」

「すぐ行く」

というやりとりを夜1時くらいにしてました。
私も夜中に指導医によく相談していたので、若手のバックアップをするようになってから、いっそう当時の指導医に感謝の気持ちがわきました。

解答: b

114D24

3歳の女児。発熱と全身の皮疹を主訴に祖母に連れられて来院した。2日前から38℃台の発熱と顔面の紅斑が出現し、紅斑は昨日から全身に拡大したという。薬剤内服歴はない。体温38.1℃。脈拍132/分、整。血圧96/58mmHg。呼吸数30/分。SpO2 98%(room air)。口囲と鼻周囲の紅斑とともに鱗屑、黄色痂皮を認める。びまん性紅斑は頸部、腋窩、腹部および鼠径部に高度である。患児は接触痛を訴え、元気がなく不機嫌である。頸部の紅斑には小水疱と小膿疱を伴う。眼粘膜と口腔粘膜とに異常を認めない。血液所見:赤血球434万、Hb 12.1g/dL、Ht 35%、白血球12,300、血小板33万。免疫血清学所見:CRP 0.8mg/dL、ASO 230単位(基準250以下)。顔面から胸部にかけての写真を別に示す。

最も考えられるのはどれか。

a 風疹
b 麻疹
c 伝染性紅斑
d Stevens-Johnson症候群
e ブドウ球菌性熱傷様皮膚症候群

SSSSの写真なら、初期研修医・総合診療医のための 小児科ファーストタッチにもあります。

皮膚疾患は見た目一発というところがありますから。
研修中は、皮膚科の先生と仲良くなっておくといいかも。
よく分からない発疹を見たら、皮膚科の先生に教えてもらいましょう。

分からないで済ますと、分からないままです。

解答: e

114D29

6歳の女児。発熱と発疹を主訴に祖父に連れられて来院した。3日前に発熱と咳嗽が出現した。一旦解熱したが、本日から再度発熱し体幹に発疹が出現したため来院した。1週前に家族で麻疹流行地を旅行していたという。

鑑別のために最も重要な所見を呈する部位はどれか。
a 口唇
b 頬粘膜
c 眼球結膜
d 頸部リンパ節
e BCGの接種部位

コプリック斑って、再発熱・発疹出現時期にも見られましたっけ。
と思って、up to dateの「Measles: Clinical manifestations, diagnosis, treatment, and prevention」を見ました。

Enanthem – Approximately 48 hours prior to onset of the exanthem, patients may develop an enanthem characterized by Koplik spots; these are 1 to 3 mm whitish, grayish, or bluish elevations with an erythematous base, typically seen on the buccal mucosa opposite the molar teeth, though they can spread to cover the buccal and labial mucosa as well as the hard and soft palate. They have been described as “grains of salt on a red background”. Koplik spots may coalesce and generally last 12 to 72 hours. Koplik spots often begin to slough when the exanthem appears.

It is important to search carefully for Koplik spots in patients with suspected measles, since they can improve the accuracy of clinical diagnosis. However, this enanthem does not appear in all patients with measles.

発疹が出る48時間前にコプリック斑は出て、コプリック斑は12-72時間続くようです。
ということは、発疹期にコプリック斑が残っていることはありえます。

up to dateって便利ですね!

解答: b

114D39

1歳の男児。発熱と皮疹を主訴に母親に連れられて来院した。4日前から38〜39℃の発熱が続き、今朝、母親が皮疹に気付いたという。体温39.3℃。脈拍140/分、整。受診時の患児の背部の写真を別に示す。両側眼球結膜に充血を認める。口唇に発赤を認める。両側頸部に径2cmのリンパ節を数個ずつ触知する。四肢末端に紅斑と浮腫を認める。心音と呼吸音とに異常を認めない。血液所見:赤血球410万、Hb 11.7g/dL、Ht 36%、白血球13,600(桿状核好中球6%、分葉核好中球61%、単球4%、リンパ球29%)、血小板41万、フィブリノゲン860mg/dL(基準186〜355)。血液生化学所見:総蛋白6.0g/dL、アルブミン3.0g/dL、AST 240U/L、ALT 195U/L。CRP 4.2mg/dL。心エコー検査で異常所見を認めない。入院の上、標準的治療を行うこととした。

治療効果判定に使用する所見はどれか。

a 発熱
b 体幹の皮疹
c 眼球結膜充血
d 頸部リンパ節腫脹
e 四肢末端の紅斑・浮腫

川崎病にガンマグロブリンいきますよね。

効かなかったら2回目を投与しますよね。

効かなかったら、というのは何で判定するか、という問題です。

私は群馬スタディから一時ステロイド併用をしていました。
でも、ステロイドを使うと、熱は下がっているのにどうも川崎病の勢いが止まっていないというか、児は元気にならないし本当に治療は奏功したのか、という感想を持ったことがあります。

もちろんステロイド併用を否定するつもりはありません。
ただ、川崎病の治療効果判定に有効だった「解熱」という所見の信頼性が揺らいだように感じました。

ガンマグロブリンが効かなかったらどうするか、という問いに対して、今も様々な研究がなされています。
川崎病は小児科医の科学者としてのマインドをかきたてますね。

解答: a

114D44

20歳の女性。右胸痛を主訴に来院した。昨日夕方、急に右胸痛と呼吸困難を自覚し本日増悪したため受診した。呼吸数22/分。SpO2 95%(room air)。右胸部の呼吸音が対側と比べ減弱している。胸部エックス線写真を別に示す。

次に行うべき検査はどれか。

a 胸部CT
b 喀痰細胞診
c 負荷心電図
d 気管支鏡検査
e 呼吸機能検査

20歳女性が心筋梗塞とは思わないでしょう。

実は、小児科外来を胸痛で受診する患者さんはそこそこいます。
特に11-14歳に多いです。

彼らにどのようなアプローチをするのか。
シンプルです。

詳しくは初期研修医・総合診療医のための 小児科ファーストタッチに。

解答: a

114D55

日齢0の新生児。妊娠31週から胎児発育不全を指摘されていた。在胎38週に体重1,890gで出生した。低出生体重児のためNICUに入院した。啼泣は弱かったが多呼吸のため保育器内に収容して酸素を投与した。眼裂狭小、小さな口、小下顎などの特徴的顔貌を認めた。また、手指の重合と屈曲拘縮、ゆり椅子状の足底を認めた。全身の筋緊張は亢進していた。

この患児にあてはまるのはどれか。
a 生命予後は良い。
b 発達遅滞をきたす。
c 心疾患は合併しにくい。
d 急性白血病を合併しやすい。
e 甲高い泣き声が特徴的である。

この問題で伝えるべきことは、果たしてbなんでしょうか。
私は違うと思います。
18トリソミーで考えるべきことは、これではない。

私には18トリソミーに思うことがあります。
でも、ここには書けません。

新生児の先生にもきっとあると思います。

もしあなたがNICUを回ってくれたら、そのとき話してくれると思います。

解答: b

114D58

日齢0の新生児。Basedow病に罹患している母親から出生した。母親は抗甲状腺薬を服用しており、抗甲状腺抗体は陽性である。

新生児期に最も留意すべきなのはどれか。
a 血圧
b 尿量
c 呼吸数
d 心拍数
e 動脈血酸素飽和度

母体がメルカゾールやチウラジールを内服していて、さらにTRAb陽性な場合。

非常に複雑な内分泌トレーニングです!
児への薬剤移行影響は5日以内におさまるでしょうが、その後は移行したTRAbで新生児バセドウ病となり、さらにその後は中枢性甲状腺機能低下症になります。

難しいです。
でも、時々経験します。

解答: d

114D68

日齢3の男児。在胎38週2日、2,648gで分娩遷延のため吸引分娩で出生した。Apgarスコアは9点(1分)であった。出生直後に頭部の腫瘤を認めていた。活気不良と頭部の腫瘤増大、全身蒼白のためNICUに搬入された。意識は清明。身長48.5cm、体重2,648g。体温36.2℃。心拍数148/分、整。血圧48/20mmHg。呼吸数58/分。SpO2 96%(room air)。両側の頭頂側頭部に径4cmの柔らかい腫瘤を触知する。心音と呼吸音とに異常を認めない。腹部は平坦、軟で、肝・脾を触知しない。血液所見:赤血球180万、Hb 6.8g/dL、Ht 18%、白血球28,000、血小板20万、出血時間正常、PT-INR 1.1(基準0.9〜1.1)、APTT 122秒(基準27〜40)、フィブリノゲン262mg/dL(基準130〜380)。頭部CT冠状断像を別に示す。

この患者で活性が低下する可能性があるのはどれか。2つ選べ。

a 第VII因子
b 第VIII因子
c 第IX因子
d 第X因子
e 第XIII因子

産瘤なのか、頭血腫なのか、帽状腱膜下血腫なのか。
これもよく遭遇しますね。
ああ、帽状腱膜下血腫は稀ですけど。
それでもDICになるので注意です。

解答: b,c

114D70

7歳の男児。体幹の皮疹を主訴に祖母に連れられて来院した。昨日、体幹に数個の皮疹が出現し、皮疹が増加したため受診した。体温36.5℃。脈拍80/分、整。呼吸数20/分。体幹に水疱を主体とした皮疹を認める。眼瞼結膜と眼球結膜とに異常を認めない。咽頭に発赤を認めない。頸部リンパ節を触知しない。心音と呼吸音とに異常を認めない。腹部は平坦、軟で、肝・脾を触知しない。体幹の写真を別に示す。

医療面接上、重要な項目はどれか。2つ選べ。

a 出生時の状況
b 成長・発達の状況
c 排尿・排便の状況
d 予防接種の接種状況
e 周囲の感染症の流行状況

水痘は空気感染ですからね!

どこで診察するかは、常に注意を払いましょう。
外来の看護師さんに素直に聞いた方がいいと思いますよ。
こういうのは看護師さんのほうが慣れています。
すくなくても医師になったばかりのあなたよりも!

水痘の診断ポイントは新旧混在の水疱もそうですが、頭皮にもあるか、でしょうね。
頭皮に発疹ができる疾患は水痘しかありません。

解答: d,e

114E11

触診による腹膜刺激徴候の確認で誤っているのはどれか。
a 患者の表情に注意する。
b 自発痛がない部位から始める。
c 打診で痛みを訴える部位には慎重に行う。
d 腹膜刺激が顕著な部位の触診は必要最小限にする。
e 反跳痛〈rebound tenderness〉は手掌全体で押さえて確認する。

腹部を触るときは、患者さんの表情に注意しましょう!
痛いと言えない小さな子どもでも、痛い場所の評価はできます。

子どもは素直です。
嘘をついたり我慢したりできる大人とは違います。
苦手意識を持たずに小児診察を行ってください。

解答: e

114E12

抗菌薬の使用で正しいのはどれか。
a 解熱後はすぐに抗菌薬を中止する。
b 発熱のある患者には抗菌薬を投与する。
c 細菌検査の検体を採取後に抗菌薬を投与する。
d 感受性検査の結果によらず広域抗菌薬を継続する。
e 解熱薬を併用することで抗菌薬の効果判定が容易になる。

安易な抗菌薬投与によって、わが国の小児の市中発症大腸菌感染はABPC耐性株やESBL産生株がここ10年で増加しています。
(参考:衣斐恭介 北澤克彦 荒川真梨子ら 小児市中発症大腸菌菌血症の臨床的特徴 小児科学会雑誌 2019 123巻 12号 p1780-1787)

耐性菌は未来の問題ではなく、もうすでに渦中であることを肝に銘じましょう。

ただ、若い先生は抗菌薬に対してむしろとても慎重なので、「抗菌薬の適正使用を!」という必要はないように感じています。
むしろ、抗菌薬が必要な症例に対して、使わないという方向の失敗をしないかどうか。

解答: c

114E15

多職種でのチーム医療を妨げる要因はどれか。
a 職種独自の略語を使用する。
b 患者の家族の希望を傾聴する。
c 他職種からの意見を尊重する。
d 各職種の専門性が確立している。
e 他職種の役割や機能を理解する。

コメディカルスタッフに敬意を払うように。

もう、何度でもいいます。

コメディカルスタッフには敬意を!
看護師や薬剤師や放射線技師に対して、高圧的な医師が多いこと。
あなたはそんなに偉いのか、と思います。

彼らがあなたの失敗に気づいたとき、あなたをフォローしてくれるかどうかは、あなた次第です。
あなたが相互尊重を忘れたとき、あなたは建設的介入を受けられなくなることを覚えておきましょう。

私は「ありがとう!」と意識的に言うようにしています。
あと、カルテはどんな職種でも、また他科の医師であっても分かるように、略語は使わず、分かりやすいカルテを書くようにしています。

解答: a

114E17

ランダム化比較試験〈RCT〉について正しいのはどれか。
a 二重盲検は必須である。
b プラセボは現在では使用が禁止されている。
c ランダム割付は症例数を少なくするために行われる。
d 症例数の設定のためには治療効果の推定が必要である。
e Intention to treat〈ITT〉による解析は実際に行った治療に基づいて行われる。

私はRCTの論文を読むのが好きです。
どのように仮説を立てたのか、どうやってサンプルサイズを決めたのか。
結果で仮説が証明できたとき、「よかったねー!」と会ったこともないファーストオーサーに勝手に祝辞の言葉を送ってしまいます。

こういうのは、一度自分でRCTのプロトコールを書いてみるといいと思います。
論文の読み方が変わりますよ。
仕事が楽しくなりますよ。

解答: d

114E21

健常成人の血中濃度で食事により値が低下するのはどれか。
a GH
b インスリン
c グルコース
d トリグリセリド
e 遊離サイロキシン〈FT4〉

成長ホルモン分泌刺激試験の時、朝食絶食にしますよね。

しますよねって言われても、知らないですよね。
朝ご飯食べちゃダメなんですよ。
ご飯食べたらGH下がってしまうので。

成長ホルモン分泌刺激試験は2泊3日だったり3泊4日だったりするので、当院では夏休みとか春休みとかに多いですね。

解答: a

114E27

日齢0の新生児。在胎39週5日、経腟分娩で出生した。啼泣が弱く、保温および口腔内の羊水の吸引と皮膚への刺激を行った。出生後30秒の時点で自発呼吸を認めず、心拍数110/分であった。

まず行うべき対応はどれか。
a 気管挿管
b 胸骨圧迫
c 生理食塩液の静脈内投与
d アドレナリンの静脈内投与
e バッグバルブマスクによる人工呼吸

新生児蘇生法、NCPRですね。
私はNCPRインストラクターをこの5年で17回(そのうち12回は主催者)しています。

新生児仮死の90%はバギングで救えます。
バギング大事、とにかくバギング、やばいと思ったらまずバギング。

当院の研修医はNCPRも受講してます。
自宅分娩で搬送された赤ちゃんを内科の先生が診てくれたケースもありました。
あなたはいつかどこかで赤ちゃんを救うかもしれません。

解答: e

114E33

23歳の女性。発熱と頭痛を主訴に来院した。昨日から38℃の発熱、頭痛および頻回の嘔吐があり受診した。鼻汁、咽頭痛、咳嗽および排尿時痛はいずれも認めない。意識は清明。身長155cm、体重48kg。体温39.6℃。脈拍104/分、整。血圧108/50mmHg。呼吸数22/分。SpO2 99%(room air)。頸部リンパ節腫脹を認めない。心音と呼吸音とに異常を認めない。腹部は平坦、軟で、肝・脾を触知しない。背部に叩打痛を認めない。項部硬直とKernig徴候を認めないがjolt accentuationを認める。尿所見:蛋白(−)、糖(−)、ケトン体(−)、潜血(−)、白血球(−)。血液所見:赤血球440万、Hb 13.0g/dL、Ht 44%、白血球3,600(桿状核好中球9%、分葉核好中球55%、好酸球3%、好塩基球2%、単球4%、リンパ球27%)、血小板14万。血液生化学所見:尿素窒素26mg/dL、クレアチニン1.1mg/dL、Na 135mEq/L、K 4.1mEq/L、Cl 93mEq/L。CRP 0.3mg/dL。血液培養の検体を採取し、抗菌薬治療を開始した。

次に行うべきなのはどれか。
a 尿培養
b 便培養
c 咽頭培養
d 喀痰培養
e 腰椎穿刺

多分、無菌性髄膜炎ですよね、これ。
抗菌薬についてどう考えるのがスタンダードなんでしょうか。

「細菌性髄膜炎が否定できないので、抗菌薬を使っておきました」というのが理由として正当化されるのか。
感染症の先生に聞いてみたいです。

解答: e

114E46

研修医が平日に救急外来で勤務していたところ、54歳の男性が自転車の転倒による挫創のため来院した。初診患者でこの病院に受診歴はない。この研修医が創部の縫合処置を行っている最中、誤って縫合針を自分の指に刺した。研修医は創部から血を絞り出し流水で十分に洗浄すると同時に、直ちに研修医自身と患者の血液検査を行った。

外傷患者の血液検査結果が陽性だった場合、できるだけ早期に研修医に対する内服予防投与の開始が必要なのはどれか。
a HIV
b HBV
c HCV
d 梅毒
e HTLV-1

針刺し事故は研修医につきものです。
絶対に隠さないように!
必ず申告するように!

解答: a

114F30

高濃度酸素が誘因となる早産児の合併症はどれか。2つ選べ。
a 壊死性腸炎
b 頭蓋内出血
c 慢性肺疾患
d 未熟児貧血
e 未熟児網膜症

新生児蘇生法、NCPRを受講すれば強調されるバギング。

35週以上では空気でバギングします。
35週未満であれば、21-30%程度とされます。

空気または低濃度酸素のほうが自発呼吸の再開率が高いという理由です。
また、過剰な酸素から目や肺を守るためでもあります。

生後1分でSpO2 60%、3分で70%、5分で80%、10分で90%という目安はあるので、そこに到達しない場合は酸素も併用します。
SpO2 95%以上はやはり目や肺を守るために、酸素を下げる必要があります。

酸素を下げなければ、というのはPALSでの心肺蘇生後でも同じですね。

解答: c,e

114F38

5歳の男児。夜尿を主訴に父親に連れられて来院した。毎晩夜尿があり、これまでに夜間おむつがとれたことがない。日中の尿失禁はないという。尿所見:比重1.030、蛋白(−)、糖(−)、潜血(−)、沈渣は赤血球0〜1/HPF、白血球1〜4/HPF。腹部超音波検査で両側の腎と膀胱とに異常を認めない。

父親への説明として適切でないのはどれか。
a 「就寝前に完全に排尿させましょう」
b 「睡眠中の冷えから身体を守りましょう」
c 「水分は昼過ぎまでに多めに摂らせましょう」
d 「おねしょをしても叱らないようにしましょう」
e 「夜間の決めた時間に起こして排尿させましょう」

5歳のおねしょは放置しないマインドを!

というキャッチフレーズで、2020年出版予定の本を書いています。
キリンとかコトリとか登場する読みやすい本になっているはずです。

解答: e

114F40

14歳の女子。低身長を主訴に母親とともに来院した。身長132cm(−2.0SD以下)。翼状頸と外反肘を認める。

基礎疾患を診断するために行うべき検査はどれか。
a GH測定
b 遺伝子検査
c 染色体検査
d 手根骨エックス線撮影
e 血中エストラジオール測定

学生のうちはターナー症候群まででいいですが、医師になるのだからヌーナン症候群も併せて知っておきましょう。

解答: c

114F44

10歳の女児。起立時の気分不良を主訴に母親に連れられて来院した。朝はなかなか起きられず、起立時に気分不良があり、時に目の前が暗くなりふらふらすることがある。午前中は特に調子が悪い。頭痛、腹痛が続き、食欲は不良である。乗物酔いを起こしやすいという。意識は清明。顔面はやや蒼白である。神経診察で異常を認めない。尿所見、血液所見および血液生化学所見に異常を認めない。

診断に最も有用な検査はどれか。
a 起立試験
b 視野検査
c 脳波検査
d 温度眼振検査
e 重心動揺検査

起立性調節障害はcommon diseaseです。
その割に、理解が進んでいません。

誰も理解してくれない!起立性調節障害に潜む4つの闇。

2017年2月9日

初期研修医・総合診療医のための 小児科ファーストタッチにも起立性調節障害は書いています。
ポケットサイズのあんちょこ本で、起立性調節障害にまで触れているのは小児科ファーストタッチだけではないでしょうか。

解答: a

114F51

28歳の初妊婦(1妊0産)。妊娠12週に妊婦健康診査のため来院した。妊娠8週に妊娠のため受診し、妊娠初期血液検査を受けた。以後、悪阻や性器出血等の症状はない。生来健康である。母がB型肝炎ウイルスのキャリアであるという。身長156cm、体重55kg。尿所見:蛋白(−)、糖(−)。腹部超音波検査で胎児に異常を認めない。4週前の血液検査でHBs抗原陽性、HBe抗原陽性が判明した。

適切な説明はどれか。
a 「人工妊娠中絶が必要です」
b 「母乳栄養は避けましょう」
c 「今すぐB型肝炎ワクチンを接種しましょう」
d 「妊娠中に赤ちゃんにウイルスが感染する可能性が高いです」
e 「出産後、赤ちゃんに抗HBsヒト免疫グロブリンを接種しましょう」

2016年から定期接種化したB型肝炎ワクチン。
5歳未満で感染がキャリア化のリスクであり、それを予防することを期待されています。

「B型肝炎母体から出生した児」というのは小児科でしばしば経験され、生まれた日に抗体注射、ワクチン接種をします。
定期接種の成果として、今後「B型肝炎母体から出生した児」というのが減ることを楽しみにしています。

解答: e

114F53

日齢2の新生児。黄疸のため救急車で搬入された。在胎40週3日、出生体重3,126g、Apgarスコア7点(1分)、9点(5分)であった。生後6時間から完全母乳栄養を開始した。生後24時間から黄疸を認めたため1面で光線療法を開始したが生後48時間でのビリルビン値が30mg/dLのため救急車を要請し、NICUに入院となった。傾眠傾向である。体温37.3℃。心拍数140/分、整。呼吸数40/分。大泉門は陥没し、心音と呼吸音とに異常を認めない。腹部は平坦、軟で、肝・脾を触知しない。吸啜反射、Moro反射は減弱し、四肢の筋緊張はやや低下している。血液所見:赤血球380万、Hb 12.0g/dL、Ht 30%、網赤血球5%、血小板40万。血液生化学所見:総蛋白7.0g/dL、アルブミン3.5g/dL、総ビリルビン29.5mg/dL、直接ビリルビン1.5mg/dL、AST 12U/L、ALT 15U/L、LD 990U/L(基準値311〜737)。母親の血液型はO型RhD(+)、児A型RhD(+)。

適切な対応はどれか。
a 血漿交換
b 交換輸血
c アルブミン投与
d 多面照射光線療法
e ガンマグロブリン投与

ABO不適合に対する交換輸血。
何型の赤血球製剤と血漿製剤を用意すればいいか、知ってますか?

「赤ちゃんがA型だから、A型赤血球じゃないの?」

違います。
お母さんの抗A抗体が赤ちゃんに移行して、赤ちゃんの赤血球が破壊されているんです。
赤ちゃんに入れるべき赤血球はO型です。

ちなみに、血漿はAB型を入れるのがベストです。

本症例は、核黄疸を防ぐために、一刻の猶予もない状況です。
輸血オーダー失敗して、交換輸血が遅れるなんて、絶対にあってはいけません。

解答: b

114F54

日齢3の新生児。在胎39週、出生体重2,950gで出生した。瞼裂斜上、内眼角贅皮、鼻根部平坦および巨舌を認める。心音と呼吸音とに異常を認めない。筋緊張が低下している。心エコー検査で異常を認めない。

この児の長期管理上、注意すべきなのはどれか。
a 大動脈解離
b 潰瘍性大腸炎
c 環軸椎亜脱臼
d 神経芽細胞腫
e 副甲状腺機能亢進症

3歳くらい、しっかり歩けるようになったら、頸椎側面X線を撮影しましょう。
ダウン症の検査スケジュールはある程度決まっていますので、小児内科とか小児科診療とか見ながら、最初にしっかりと計画を立てておきましょう。

解答: c

第114回医師国家試験総評

小児科の問題に関しては、易しい問題が多かったと思いました。
この問題を入り口にして、きっかけにして、さらなる臨床の奥深さを感じて欲しいと思います。

そのせいか、今回は問題に対していろいろコメントが書けました。
ここまで読んでくださった方、ありがとうございます。

小児科研修が、楽しくて役に立つことを期待しています。

ABOUTこの記事をかいた人

小児科専門医、臨床研修指導医、日本周産期新生児医学会新生児蘇生法インストラクター、アメリカ心臓協会小児二次救命法インストラクター、神戸大学大学院医学研究科内科系講座小児科学分野に入局。現在、おかもと小児科・アレルギー科院長。専門はアレルギー疾患だが、新生児から思春期の心まで幅広く診療している。