インフルエンザに効く5つの治療薬とその特徴。

この記事は下記の3点を修正しました。

修正①:タミフルが1歳未満に適用拡大した。
修正②:タミフルが10歳台に使用可能となった。
修正③:ゾフルーザが追加された。

5種類のインフルエンザ治療薬

タミフル、リレンザ、イナビル、ラピアクタ、ゾフルーザの5種類のインフルエンザ治療薬があります。
それぞれに特徴があります。

タミフル

飲む薬であるというのが、タミフルの特徴です。
ドライシロップという粉薬タイプか、カプセルがあります。

1歳未満に対しても使用できますが、用量が異なることに注意が必要です。
1歳未満に対するタミフル使用については、こちらの記事も参考にしてください。

タミフルが1歳未満で使用可能に!臨床現場で何が変わる?

2017年1月19日

2018年まで、10~19歳に対しては異常行動との関連が明らかではない理由で使用しないように勧告されていました。
タミフルと異常行動については、「インフルエンザ様疾患罹患時の異常行動に関する研究」が興味深い報告をしています。

2010年~2014年に国内すべての内科・小児科で重度の異常行動を認めた患者の使用薬剤をまとめると、インフルエンザで異常行動を起こした207人のうち、もっとも異常行動を起こしたのは「抗インフルエンザ薬を何も飲んでいない人」という結果でした。

つまり、インフルエンザ事態が異常行動を誘発するのであり、タミフルは関連がない可能性があります。

そのため、2018年からは、10歳台へのタミフル制限は解除されています。
詳しくはこちらに書きました。

タミフル10代解禁。使用制限中に私が困っていたこと2点。

2018年5月20日

リレンザ

吸い込むタイプの薬です。
1日2回吸入し、5日間継続します。
上手に吸い込むことができないと、効果が出ません。
そのため4歳以下の子どもには適しません。
5歳以上で、吸入ができそうであれば考慮されます。
10-19歳ではタミフルが使えませんので、リレンザか、次のイナビルが第一選択となります。
気管支攣縮の副作用が言われているため、ぜんそくのある子どもには慎重な投与が必要です。

イナビル

こちらもリレンザと同じ吸入薬です。
1回吸うだけで効果があります。
1回だけなのでリレンザより手軽です。
いっぽうでその1回の吸入がうまくできていないと効果が全くないというリスクもあります。
また、リレンザと同じでこちらもぜんそくに対しては注意が必要です。

ラピアクタ

唯一の点滴薬です。
しんどくて薬も飲めないような子どもにも使えます。
タミフルと同様に、1歳未満でも使えます。
「4歳から12歳までの日本人インフルエンザA型小児患者を対象としたノイラミニダーゼ阻害薬の臨床効果とウイルス学的効果の比較検証」では、ラピアクタはタミフルよりもはやくウイルスを消失させるというデータが出ています。
いっぽうで、解熱させる速さには差がなかったようです。
欠点は、点滴ルートを取らないといけないところです。
口から飲める子どもに対しては、点滴で痛い思いをするよりも、タミフルを飲んだほうがいいでしょう。

ゾフルーザ

ゾフルーザは2018年から使用可能になった新規の抗インフルエンザ薬です。
これについては、こちらに詳しく書きました。

小児科医から見たゾフルーザの注意点。

2020年3月29日

結論だけ書きますと、小児にゾフルーザは推奨しません。

抗インフルエンザ薬は使用すべきか

4種類の抗インフルエンザ薬を紹介しました。

ここで根本的な疑問として、「そもそも抗インフルエンザ薬を使ったほうがいいのか」というものが挙げられます。

実は、「もともと健康な子どもがインフルエンザになった場合、軽症であれば、抗インフルエンザ薬は必須としない」と日本小児科学会は述べています。
これは、2014年4月にもっとも高いエビデンスとして知られるコクランレビューに沿った内容です。

いっぽうで、重症化している場合や、重症化のリスク(基礎疾患や幼少)がある場合は、小児呼吸器感染症診療ガイドライン2017では抗インフルエンザ薬を強く推奨しています。

このあたりのコクランレビューの解釈や、日本の小児医療の意図については、こちらの記事を参考にしてください。

タミフルに効果はあるのか?コクランレビューvs日本の小児医療。

2017年3月12日

インフルエンザの薬は熱が出てから48時間以内に開始しないとあまり効果がありません。
また、普段は元気なお子さんであれば、多くは自然に治ってしまいますから、必ずしもインフルエンザの薬が必要というわけでもありません。
状況によっては、薬を飲まずに治すという選択肢もあります。
またインフルエンザ治療薬にどうしても恐怖感がある場合には、麻黄湯という漢方薬が有効である可能性が示唆されています。

まとめ

  • 9歳までは基本的にはタミフル内服が推奨される。
  • 5歳からはリレンザやイナビルが可能である子どももいる。
  • 10歳からはリレンザやイナビルが推奨される。
  • 薬を飲めない子どもはラピアクタが推奨される。
  • 小児にゾフルーザは推奨しない。
  • 軽症インフルエンザの治療は必須ではないが、重症インフルエンザや重症化リスク児には投与を強く推奨される。

インフルエンザの治療といっても、いろいろな選択肢があります。
方針に対して質問・疑問がある場合は、気軽に主治医に尋ねるとよいでしょう。

ABOUTこの記事をかいた人

小児科専門医、臨床研修指導医、日本周産期新生児医学会新生児蘇生法インストラクター、アメリカ心臓協会小児二次救命法インストラクター、神戸大学大学院医学研究科内科系講座小児科学分野に入局。現在、おかもと小児科・アレルギー科院長。専門はアレルギー疾患だが、新生児から思春期の心まで幅広く診療している。