お日様の光で新生児黄疸を治療できますか?ナイジェリアの報告。

寒い日が続き、お日様の光がありがたい!と思う毎日です。
このお日様の光が、「新生児黄疸」の治療法確立のきっかけになりました。

黄疸の治療については、以前にも書きました。

生まれてすぐに赤ちゃんが黄色くなった!新生児黄疸の治療。

2017年1月30日

今日は新生児黄疸と、太陽光のお話をしてみます。

光線療法の起源

新生児黄疸の治療である「光線療法」は、1958年にイギリスのCremer医師によって発見されました。

Cremer医師は、窓際に寝かせた赤ちゃんの黄疸が軽減していることに気づき、日光や蛍光灯の光が血中ビリルビン濃度を低下させることを発見しました。

つまり、窓際の日向ぼっこが、黄疸治療の起源です。

太陽光による黄疸治療

現在の光線療法は、主に青色LEDを使っています。
ですが、資源がない国、エネルギーを供給できない地域では、この治療が利用できない可能性があります。

太陽光による治療は無料です。
光線治療をより安価に提供できるかもしれません。

そこで、今回読んだ論文はこれです。
Filtered sunlight versus intensive electric powered phototherapy in moderate-to-severe neonatal hyperbilirubinaemia: a randomised controlled non-inferiority trial. Lancet Glob Health. 2018; 6: e1122-e1131.

ナイジェリアの論文です。
オグボモショ市は人口86万人の都市です。

在胎35週以上で、血清総ビリルビン値が高い日齢14以下の児を、「紫外線カットした太陽光療法群79人」または「通常の光線療法群83人」に無作為に振り分けました。

太陽光療法は、照度は時刻によって変化しました。
8時から15時くらいまでは、40μW/cm2/nm前後の照度がありました。
曇りの日でも、20μW/cm2/nm以上の照度がありました。

通常の光線療法群では、50μW/cm2/nmの照度がありました。

日中のビリルビンの減少速度は、太陽光と通常の光線とで差はありませんでした。

感想

太陽光療法のほうが体温が少し上昇していましたが、許容内でした。
紫外線カットしたことで、日焼けのリスクはなくなり、治療の安全性を高めています。

確かに、太陽光療法は安価で安全な治療といえそうです。

ちなみに、当院で使っているネオブルーという機械は、LOW設定で20μW/cm2/nm、HIGH設定で60μW/cm2/nmです。
https://www.draeger.com/Library/Content/Specialist-in-NICU-vol6-BiliLux-ja-jp.pdf

ほとんどの新生児黄疸がLOW設定で問題なく治療できますので、ナイジェリアの太陽光療法の照度は十分だと思いました。

まあ、日本で同じ照度が保てるわけではないでしょうから、あくまで赤道付近の国では、という限定です。
また、夜間は治療できないので、溶血性黄疸への対応は難しそうです。

それでも、60年以上前にCremer医師が太陽光で発見した光線療法が、また太陽光に戻ってくるなんて、面白いなあと思いました。

ABOUTこの記事をかいた人

小児科専門医、臨床研修指導医、日本周産期新生児医学会新生児蘇生法インストラクター、アメリカ心臓協会小児二次救命法インストラクター、神戸大学大学院医学研究科内科系講座小児科学分野に入局。現在、おかもと小児科・アレルギー科院長。専門はアレルギー疾患だが、新生児から思春期の心まで幅広く診療している。