12歳未満の気管支喘息に対する「生物学的製剤」デュピルマブの有効性。

気管支喘息では、しんどくなったとき(急性増悪時)の治療は重要ですが、「しんどくならないための」治療はさらに重要です。
喘息でしんどくならないために、喘息を上手にコントロールするためのプランを「長期管理」ともいいます。

喘息の長期管理では、吸入ステロイド(フルタイドやパルミコートなど)や、ロイコトリエン受容体拮抗薬(モンテルカストなど)が重要です。
これらの薬を使ってもしんどくなってしまう、重症な喘息の人には、「生物学的製剤」という薬が使われる場合があります。

今回は、子どもの気管支喘息に対する「生物学的製剤」デュピルマブの有効性について書きます。

子どもの気管支喘息に使える生物学的製剤

2022年現在、子どもの気管支喘息に使える生物学的製剤はオマリズマブ(ゾレア)、メポリズマブ(ヌーカラ)、デュピルマブ(デュピクセント)の3つです。
対象年齢と適用に関する注意点について以下にまとめました。

オマリズマブ(ゾレア) メポリズマブ(ヌーカラ) デュピルマブ(デュピクセント)
作用 抗IgE抗体 抗IL-5抗体 抗IL-4/IL-13抗体
対象年齢 6歳以上 6歳以上 12歳以上
適用に関する注意点 総IgEが30-1500IU/mLの範囲内でのみ投与可能 第II-III相試験では、好酸球数が試験開始時に150/μL以上または過去12ヵ月間に300/μL以上を対象 第III相試験では、好酸球数1500/μL以上は除外。好中球150/μL以上、FeNO 25ppb以上で有効性を確認

デュピルマブだけ、対象年齢が12歳以上です。

12歳未満の気管支喘息に対するデュピルマブの有効性

2021年末に、12歳未満の気管支喘息に対するデュピルマブの有効性についてのデータがでましたので、紹介します。

Dupilumab in Children with Uncontrolled Moderate-to-Severe Asthma. Engl J Med. 2021; 385 :2230-2240.

中等度から重度の気管支喘息があり、表現型が2型炎症性(好酸球数が150/μL以上、または呼気中NOが20ppb以上)である6歳から11歳の小児408人が対象です。
2週間ごとにデュピルマブ(体重30kg未満は100mg、30kg超は200mg)またはプラセボの皮下注射をします。

重度の急性増悪の頻度は、デュピルマブ投与群では年間0.31回に対し、プラセボでは年間0.75回で、有意差がありました。
1秒量(1秒間で吐き出せる空気の量)は、デュピルマブ投与群で10.5%改善し、プラセボでは5.3%改善し、有意差がありました。
有害事象の発生率は両群で差がありませんでした。

デュピルマブは6-11歳の子どもの喘息にも有効と考えられます。

今後の展望

今回の治験結果から、そう遠くないうちにデュピルマブの適応年齢は6歳以上に引き下げられると思います。

6歳以上で使える生物学的製剤が3つ並ぶことになります。
そのため、今後は「生物学的製剤をどう使い分けるか」が今よりさらに考慮されるようになるでしょう。

特にメポリズマブとデュピルマブは使い分けに悩みそうです。
作用機序を考えると、デュピルマブはアトピー性皮膚炎合併例により使いたくなります。
他にも薬価や投与間隔、デバイス(自己注射できるか)なども考慮の材料になりそうです。

いずれにせよ、治療選択肢が増えるというのは喜ばしいことです。
今後もより良い気管支喘息コントロールができるように、勉強していきたいと思いました。

ABOUTこの記事をかいた人

小児科専門医、臨床研修指導医、日本周産期新生児医学会新生児蘇生法インストラクター、アメリカ心臓協会小児二次救命法インストラクター、神戸大学大学院医学研究科内科系講座小児科学分野に入局。現在、おかもと小児科・アレルギー科院長。専門はアレルギー疾患だが、新生児から思春期の心まで幅広く診療している。