上手な小児科医はコンサルトが上手。

小児科医は子どもの総合医であることや、総合医であるためには高い診断能力が必要であることは、こちらの記事に書きました。

小児科専門医は子どもの総合医。小児科医に求められる診断能力。

2017年1月8日
今回は、診断能力以外で小児科医に求められる能力について書きます。

すべての病気を治療できる必要はない

どんな病気であっても、子どものことであれば小児科はぜんぶ診ます。
しかし、それは子どもの疾患すべてを治療できるということを意味するわけではありません。

虫歯であれば歯科を紹介するし、中耳炎であれば耳鼻科を紹介するし、内視鏡が必要なら消化器内科と相談し、ネフローゼ症候群でステロイドを長期に必要とする場合は眼科の先生に定期的に診察をお願いします。

泌尿器科、循環器内科、皮膚科、形成外科、整形外科などいろいろな科と小児科は連携しています。
適切な科を紹介することもまた、小児科医の務めです。

上手な小児科医はコンサルトが上手

下手なコンサルトはいわゆる「丸投げ」というものです。
「もうこちらでは診ませんから、そちらであとは全部よろしくお願いします」という紹介ではあまり上手な紹介ではありません。

私も、後輩が書いた紹介状の内容について、注意したことがあります。
その後輩は「けいれんがありましたので精査をお願いします」と小児神経の専門医に紹介状に書いていました。

確かに、神経は難しい分野です。
私も脳波を詳しく読むことはできません。

ですが、今までやった検査、除外できた疾患、現状でもっとも疑っている疾患など、書くことはいっぱいあるはずです。
これらが抜けた紹介状は「面倒なのであまり診てません。そちらでどうぞお願いします」という丸投げメッセージが見えてしまって、紹介状を受け取った人も機嫌を悪くするかもしれません。

医者だって人間です。
丁寧な紹介状を持ってきた患者さんには丁寧に診てしまうものです。
(雑な紹介状の患者さんを雑に診るわけではありませんが)

小児科医は頼んでばかり

「小児科研修の素朴な疑問に答えます」という本に、面白いコラムがありましたので引用します。

白血病治療中の患児にはさまざまな合併症が起こる。重い急性膵炎を起こしたときは消化器外科医に診てもらい、頭蓋内出血を起こした子は脳外科医に緊急の血腫除去術をしてもらった。その他、治療に対する不安が強い子には精神科医に定期的に診療してもらい、骨髄移植手術後の呼吸困難が出現した場合は呼吸器内科で気管支鏡検査をしてもらい、大腿骨頭壊死では整形外科に人工骨を入れてもらう、というように各科の協力が不可欠である。

(中略)

だんだん「何で小児科医は人に頼んでばかりなんだ」と卑屈な気分になったこともあった。しかし、ある時それを整形外科の先輩に話した際、「おれたちがいくら治しても、結局患者はおまえたち主治医のところに戻っていくんだから、おれたちはいわば下請けなんだぞ」とたしなめられた。その瞬間、小児の主治医はあくまで小児科医なのだ、という気持ちを忘れずに小児科医としての誇りをもってやっていこうと目が覚めたのだった。

真部 淳先生のコラム

私も、娘が中耳炎になったときは耳鼻科に紹介状を書きましたし、やけどしたときや、こけて頭から血が出たときは外科の先生にお世話になりました。

小児科医は頼んでばかりだなあとつくづく思いますが、この他科と連携しつつ、総合的に子どもを診ていく能力こそ、小児科医の神髄なのでしょう。

まとめ

小児科医は、いろいろな科と連携することで、真価を発揮します。
上手なコンサルトは、他科との連携に必要不可欠なものです。

上手なコンサルトとは、他科とも連携しながら小児科も全身を総合的に診るという役割を持って、その子どもとお父さん・お母さんに寄り添い続けることです。

ABOUTこの記事をかいた人

小児科専門医、臨床研修指導医、日本周産期新生児医学会新生児蘇生法インストラクター、アメリカ心臓協会小児二次救命法インストラクター、神戸大学大学院医学研究科内科系講座小児科学分野に入局。現在、おかもと小児科・アレルギー科院長。専門はアレルギー疾患だが、新生児から思春期の心まで幅広く診療している。