全身の発疹で来院した患者。
風疹・麻疹・その他の中毒疹の鑑別で迷いました。
良い鑑別方法があれば教えてください。
今日のお便りはこちらです。
小児の発疹って難しいですよね。
今日は、小児の発疹にどう向き合うかという、心構え的なお話をします。
いつの間にか僕は、死んだ魚のような目をしていた。
ウイルス性中毒疹、という言葉に違和感を覚えなくなったのは。
いつからだろう。
診断をあきらめてしまったのは。
いつの間にか。
僕は死んだ魚のような目で「中毒疹です」と棒読みしていた。
SiriよりもAlexaよりも機械的で、温かみのない声で。
文学的な文章で始まってしまいました。
確かに、診断がつかない発疹は多いです。
いつも診断がつかないでいると、心が折れます。
そして、そのうち診断しようとしなくなってしまう気持ちは分からないわけではありません。
でも!
難しくても、無理でも、折れちゃだめ。
折れてる炭治郎じゃだめなんです。
でも、結局は折れるしかない。
小児感染症のトリセツREMAKEにも、発疹について細かい解説があります。
ピコルナウイルス? ポリオのこと?
アルボウイルス? カメムシで伝播ってホント?
かなりマニアックです。
ですが、最終的にこんな優しい言葉が。
臨床経過と合わせて、これは!と言えるのは突発性発疹、水痘(ただしワクチン接種患者のbreakthrough varicellaは激ムズ)、伝染性単核球症、手足口病、伝染性紅斑、麻疹(こちらもワクチン接種者の修飾麻疹など、激ムズ)、風疹、伝染性膿痂疹、SSSSくらい。
小児感染症のトリセツREMAKE Reference p99
これだけ分かれば十分だと思います。
私は、伝染性単核球症は肝腫大か扁桃白苔がしっかり確認できないと、発疹だけでは診断難しいって思います。
風疹も耳介後部のリンパ節腫脹は特徴的ですが、結局は検査診断してます私は。
写真を撮って、カルテに残しておくのは良い手法ですよね。
そのとき診断がつかなくても、経過がヒントになるかもしれません。
写真を撮っておけば、いつでも発疹を見返せます。
それでもやはり小児の発疹で診断がつくのはレアケースで、結局のところ小児の発疹はどこかで折れることになります。
「ウイルス性中毒疹」という言葉を使わずに小児診療を続けていくことは不可能です。
折れるにしても、すぐに折れてはいけないということ。
結局折れるんです。
それでも「折れるわ折れる折れる折れる折れる。ここで折れなくても結局折れるわ俺」と思ってはいけない気がします。
折れるにしても、すぐに折れてはいけないんです。
そんな心意気で診療すると、冒頭の質問にはこんな模範解答ができます。
麻疹、風疹の診断は、接触歴や渡航歴、予防接種歴が重要です。接触歴がない、または予防接種歴があるならば、その他の中毒疹と考えるのが現実的です。
現実的です、という便利な言葉。
これは、折れていることをかっこよく表現しただけです。
折れちゃだめだと言いつつも、どこかで折れるしかないのが現実です。
「折れてる炭治郎も凄いんだ」と言えるためには、すぐに折れてはいけないということ。
すぐに折れていては、折れてて凄いってことにはならないと思います。
結局は心意気の問題なんでしょうけどね。
ときどき診断つきますし。
診断ついたほうが、やっぱり予後とか経過とか具体的な話ができるので、保護者も主治医も安心できますし。
要するに、中毒疹と診断するにしても、診断努力を怠ってはいけませんっていう普通の話。
そんな心意気で、今回の発疹の話は終わります。