「小児科ファーストタッチ」の使い方と目次。


本記事は、初期研修医・総合診療医のための 小児科ファーストタッチの使い方と目次です。

小児科ファーストタッチの使い方

①小児科研修の予習に

小児科を研修する前または研修中に、遭遇する頻度が高い症候・疾患(目次の★4つ以上が目安)をあらかじめ学習すると良いでしょう。
63項目全部読もうとすると大変ですが、★4つ以上だけに絞って読めば26項目だけです。
効率よく予習することができます。

★★★★★ 週に1回は経験できる
★★★★ 1か月に1回は経験できる
★★★ 3か月に1回は経験できる
★★ 3か月のカンファレンスで経験できる
研修中に経験できると幸運

上記の疾患頻度は、小規模な二次病院(小児科医3-5人程度)を想定し、私の独断で定めています。
季節によって変動する疾患(たとえば細気管支炎)はピーク時の判定から星を一つ減らしています。

②外来のお供に

主訴が発熱、咳嗽の児を診る場合、診察前に総論の「発熱」と「咳嗽」のページを読んでから診察を開始します。
診察後「上気道炎」「クループ」「下気道炎」が鑑別疾患に加われば、その項目を読んでから検査オーダーを出しましょう。

③熟達度に合わせて

小児科研修の序盤では、鑑別疾患の見落としがないように総論のページを見ながらしっかりと鑑別疾患を立てましょう。
小児科研修に慣れてきたら、ある程度自分で鑑別疾患を立てておき、各論のページを見ながら検査や治療方針を決めましょう。

④さらなる知識への入り口として

本書の記載は主にネルソン小児科学、コクランレビュー、NICEガイドライン、AAPガイドライン、わが国のガイドラインを参照しています。
そして参考文献はできるだけ明確に記しています。
ぜひ元文献をたどり、さらに知識を深化させてください。
本書はその入り口として役立つはずです。

⑤フィードバックに

小児科研修中に経験できた症候、疾患について、本書の目次のページに印をつけると良いでしょう。
研修終了時に指導医とともに目次を見返し、小児科研修を振り返りながらフィードバックしてもらいましょう。

⑥メモであなただけのファーストタッチに

本書はポケットサイズです。
いつでもどこでも持ち歩けます。
研修中に指導医に教わったことは、その場ですぐに本書の該当ページにメモしましょう。
(あとでメモすると忘れます。必ずその場でメモしてください)

書き込みが増えれば、あなただけの小児科ファーストタッチが完成します。

小児科ファーストタッチの目次

①総論

1. 発熱 ★★★★★
2. 咳嗽・鼻汁・喘鳴 ★★★★★
3. 腹痛 ★★★★
4. 嘔吐・下痢 ★★★★
5. 血便 ★★
6. 頭痛 ★★★
7. 胸痛 ★★
8. 発疹 ★★★★★
9. けいれん ★★★★★

②呼吸器

10. 上気道炎 ★★★★★
11. 気管支炎・肺炎 ★★★★★
12. 細気管支炎 ★★★
13. クループ ★★★★

③感染症

14. 溶連菌感染症 ★★★★
15. アデノウイルス感染症 ★★★★
16. インフルエンザ ★★★★
17. RSウイルス感染症 ★★★★
18. ヒトメタニューモウイルス感染症 ★★★★
19. 手足口病・ヘルパンギーナ ★★★★
20. ノロウイルス・ロタウイルス胃腸炎 ★★★★
21. 突発性発疹 ★★★
22. 伝染性単核球症 ★★★
23. マイコプラズマ感染症 ★★★
24. 単純ヘルペスウイルス感染症 ★★★
25. 流行性耳下腺炎(おたふくかぜ) ★★
26. 水痘 ★★
27. 百日咳
28. 中耳炎 ★★★★★
29. 伝染性膿痂疹(とびひ) ★★★★
30. 肛門周囲膿瘍 ★★
31. 化膿性リンパ節炎 ★★★

④消化器

32. ウイルス性胃腸炎 ★★★★★
33. 細菌性腸炎 ★★
34. 腸重積症
35. 過敏性腸症候群 ★★
36. 便秘症 ★★★★

⑤神経

37. 無菌性髄膜炎 ★★★
38. 細菌性髄膜炎
39. 熱性けいれん ★★★★★
40. けいれん重積 ★★
41. 胃腸炎関連けいれん
42. 無熱性けいれん
43. 起立性調節障害 ★★★
44. 片頭痛・緊張型頭痛 ★★

⑥腎・尿路系

45. 尿路感染症 ★★★★
46. 急性腎炎
47. ネフローゼ

⑦アレルギー

48. アナフィラキシー ★★★★
49. 食物アレルギー ★★★★★
50. 気管支喘息発作・喘息性気管支炎 ★★★★★
51. アトピー性皮膚炎・乳児脂漏性皮膚炎 ★★★
52. 多形滲出性紅斑
53. 蕁麻疹 ★★

⑧外因

54. 熱傷 ★★
55. 頭部打撲 ★★★
56. 異物誤飲 ★★★

⑨その他

57.川崎病 ★★★★
58.熱源不明熱 ★★
59.特発性血小板減少性紫斑病(ITP) ★★
60.IgA血管炎 ★★
61.糖尿病性ケトアシドーシス
62.心筋炎
63.小児二次救命処置(PALS)

小児科ファーストタッチを極める

子どもを診るとき、いつもポケットに入れておいてください。
経験した疾患のページには、その症例数を「正」の字で記してください。
指導医に教わったことはどんどん書き込んで、この本をボールペンで汚してください。

この本がボロボロになる頃には、あなたは自信を持って子どもを診ることができるようになっているはずです。

ABOUTこの記事をかいた人

小児科専門医、臨床研修指導医、日本周産期新生児医学会新生児蘇生法インストラクター、アメリカ心臓協会小児二次救命法インストラクター、神戸大学大学院医学研究科内科系講座小児科学分野に入局。現在、おかもと小児科・アレルギー科院長。専門はアレルギー疾患だが、新生児から思春期の心まで幅広く診療している。