アモキシシリン。
小児科では非常にポピュラーな抗菌薬です。
溶連菌性咽頭炎、中耳炎、副鼻腔炎、肺炎などで使用されます。
このアモキシシリンの1日最大量について、悩んだことはありませんか?
今回は、アモキシシリンの1日最大量について書きます。
このページの目次です。
アモキシシリンの添付文書
まずは薬の基本、添付文書を見てみましょう。
成人
アモキシシリン水和物として、通常1回250mg(力価)を1日3〜4回経口投与する。
なお、年齢、症状により適宜増減する。ヘリコバクター・ピロリ感染症に対しては、通常、成人にはアモキシシリン水和物として1回750mg(力価)、クラリスロマイシンとして1回200mg(力価)及びプロトンポンプインヒビターの3剤を同時に1日2回、7日間経口投与する。
小児
アモキシシリン水和物として、通常1日20〜40mg(力価)/kgを3〜4回に分割経口投与する。
なお、年齢、症状により適宜増減するが、1日量として最大90mg(力価)/kgを超えないこと。
成人では1日750-1000mgとなります。
ヘリコバクター・ピロリに対しては1日1500mgになります。
小児では最大90mg(力価)/kgとはありますが、最大量については特に記載されていません。
たとえば、13歳で体重60kgの中学生が小児科外来に来たとき、アモキシシリン5400mgを処方していいのでしょうか。
それとも、成人量である1日1000mgまたは1500mgを上限とするべきでしょうか。
クラバモックスの添付文書
アモキシシリンが含まれる製剤として有名なクラバモックスの添付文書はどうでしょうか。
通常、小児には、クラバモックスとして1日量96.4mg(力価)/kg(クラブラン酸カリウムとして6.4mg(力価)/kg、アモキシシリン水和物として90mg(力価)/kg)を2回に分けて12時間ごとに食直前に経口投与する。
体重37〜39kgの児には1日6.06g(アモキシシリン水和物として3600mg)を2回に分けて投与する。
体重40kg以上の小児への推奨用量は確立していない。
クラバモックスでは、アモキシシリンの最大量は1日3600mgになっています。
ということは、アモキシシリンの1日最大量は3600mgなのでしょうか。
UpToDate
海外では、アモキシリリンについてどう書いてあるでしょうか。
UpToDateのAmoxicillin: Pediatric drug informationを読んでみましょう。
米国小児科学会の「急性中耳炎の診断と管理のためのガイドライン2013] には最大用量は示されていない。
しかし、高用量のアモキシシリン療法では最大1日量を4000mg/日としている専門家がいる(Bradley 2015)。生後3カ月以上に市中肺炎には、アモキシシリン90mg/kg/日を12時間ごとに分割投与する。1日の最大投与量は4000mgである(Bradley 2011)。
肺炎や中耳炎には、アモキシシリンの1日最大量は4000mgとありますね。
今日の治療薬
最後に、今日の治療薬を読んでみましょう。
古いものから順に読んで、記載の変遷を追いかけてみます。
今日の治療薬2018
1日20-40mg/kg、3-4回分服。
最大1日90mg/kgまで添付文書外
耐性肺炎球菌:1日90mg/kgまで、2回分服。
今日の治療薬2019-2020
1日20-40mg/kg、3-4回分服。
最大1日90mg/kgまで添付文書外
耐性肺炎球菌:1日90mg/kgまで、2-3回分服。
1日最大2-3g(一部の専門家の意見では4g)
今日の治療薬2021-2022
1日20-40mg/kg、3-4回分服。
最大1日90mg/kgまで添付文書外
ペニシリン耐性肺炎球菌:1日90mg/kgまで、12時間ごと。
1日最大4g
変遷まとめ
2019年から「1日最大2-3g(一部の専門家の意見では4g)」、2021年から「1日最大4g」という記載が登場しました。
4gというのは、4000mgのことです。
UpToDateの記載と同じですね。
閑話休題:アモキシシリンは量が多い
錠剤は1錠250mgですので、4000mgとは16錠になります。
1日3回で飲むとして、1回当たり5錠か6錠を飲むことになります。
これならまだなんとか飲めそうな気もします。
ですが、たとえば5歳、体重17kgの子どもに1日1500mg処方するとなると大変です。
5歳は通常、粉薬で処方することになりますが、わが国でよく使われるアモキシシリンは10%製剤です。
つまり1500mgを処方した場合、1日に15gも飲まなければなりません。
1袋にパンパンにつめて、5g入ります。
これを1日3回飲むのは結構大変です。
体重が40kgあって、でも錠剤が苦手という人は、1日に3600mg飲みます。
10%製剤だと36gです。
1日3回に分けて飲んでも、1回12gです。
かなり大変です。
ワイドシリンだと20%製剤ですので、上手く使って内服量を減らしたいところです。
クラバモックスだと約60%製剤ですので、こちらだとかなり飲む量が減ります。
UpToDateでは、中耳炎や副鼻腔炎にはクラバモックスを推奨していますね。
まとめ
アモキシシリンの最大投与量については、記載の変遷がありました。
現在のアモキシシリンの最大量は1日4000mgと考えてよいでしょう。