マイコプラズマ肺炎の抗菌薬不応例にステロイド投与するとき、抗菌薬は中止しますか?

今回はこんなご質問です。

マイコプラズマ抗原陽性の4歳男児。クラリスロマイシン3日間投与で解熱せず、トスフロキサシン3日間投与でも発熱持続。
ステロイド投与を検討しています。
抗菌薬はどうすればいいですか?

難しい質問を頂きました。
高サイトカイン血症に至ったマイコプラズマ肺炎ですね。

今回は、マイコプラズマ肺炎の抗菌薬不応例にステロイド投与するとき、抗菌薬は中止するかどうかについて考えます。

マイコプラズマによる高サイトカイン血症

マイコプラズマ肺炎に抗菌薬が反応しないケースは少なからず経験します。

ミノサイクリンやトスフロキサシンに変更後48時間においても発熱が続く場合は、LDH480IU/L以上を目安にステロイド治療を行ってもよいとガイドラインに書かれています。(小児呼吸器感染症診療ガイドライン 2017 p74-77)

高サイトカイン状態を知るにはLDHの他に、AST、フェリチン、尿β2-MGも参考になると個人的には思いますが、明確なカットオフは存在しません。

ステロイド投与後も抗菌薬を続けるか

高サイトカイン血症を疑ったときは、ステロイド治療が選択肢となります。
このとき、抗菌薬はどうしたらいいでしょうか。

マウスの実験ではありますが、マイコプラズマ肺炎に対してステロイドのみを投与すると、全身の臓器から肺炎マイコプラズマが検出される可能性が上がります。(日胸疾会誌. 1994; 32: 42-7)
また、ケースシリーズですが、マイコプラズマ肺炎に抗菌薬を投与せずにステロイド単独で治療すると、心筋炎になったという論文を9年ほど前に読んだ記憶があります。(参考文献を探しているのですが、いくら探しても見つかりません。知っている人がいましたら、ぜひ教えてください)

もちろん、ステロイドを療法を始めるときにはマクロライドを2日間、ミノサイクリンかトスフロキサシンを2日間、合計4日間以上は抗菌薬療法をしています。
ですので、マイコプラズマ肺炎に対してステロイドのみで治療して重症化したという報告は、参考にならないかもしれません。

ですが、ステロイド投与時に抗菌薬を終了するという選択肢は、やはり取れないと私は思います。
重症化に至らなかったとしても、不完全な抗菌薬療法では周囲の感染が抑えられないかもしれません。

小児呼吸器感染症ガイドライン2017では、クラリスロマイシンは10日間、トスフロキサシンは7-14日間の投与が推奨されています。
冒頭のご質問のケースでは、クラリスロマイシンに戻すという選択肢もありますが、私はトスフロキサシンのまま合計7日以上投与を継続します。

ABOUTこの記事をかいた人

小児科専門医、臨床研修指導医、日本周産期新生児医学会新生児蘇生法インストラクター、アメリカ心臓協会小児二次救命法インストラクター、神戸大学大学院医学研究科内科系講座小児科学分野に入局。現在、おかもと小児科・アレルギー科院長。専門はアレルギー疾患だが、新生児から思春期の心まで幅広く診療している。