身長が-2SD未満であることを「低身長」といいます。
-2SDとは同じ年齢、同じ性別の人を100人集めたときに、前から2番目か3番目くらいになる身長のことを指します。
低身長の子どものうちの5-10%は「成長ホルモン分泌不全性低身長」と診断されます。
成長ホルモン分泌不全性低身長は、成長ホルモン治療を受けることができます。
成長ホルモンの量は0.175mg/kg/週を週6回か7回かに分けて投与するように決まっています。
週6回と7回、どちらが効くのでしょうか。
今回は成長ホルモンの注射回数と背の伸びについて考えてみます。
成長ホルモンは毎日注射したほうが背が伸びる
見出しでネタバレしてしまっていますが、気にせずにいきましょう。
今回紹介する論文はこれです。
望月貴博ら. 成長ホルモン治療の週6回注射と週7回注射における治療効果についての検討. 日本小児科学会雑誌. 2010; 114: 88-90.
日本語です。
面白いところピックアップします。
10歳未満の「成長ホルモン分泌不全性低身長」54人が対象です。
週6回投与する22人と、週7回投与する32人とに分けて、2年間身長をフォローしました。
最初の1年で、週6回群は7.93cm、週7回群は9.03cm、背が伸びました。
次の1年で週6回群は6.70cm、週7回群は6.91cm、背が伸びました。
2年間で1.3cmの差がつき、成長ホルモンは「毎日注射したほうが背が伸びる」という結論になっています。
週に1回、治療をお休みできるというメリットはあるが
今回紹介した論文は2年間しかフォローしていませんが、普通に考えて3年目以降に週6回群が追いついてくるとは考えられません。
将来身長に、1.3cm以上の差が生じると考えられます。
週6回注射というのは、週に1回治療をお休みできるということです。
それはメリットに見えます。
ですが、将来身長に与える影響は大きく、少なくても治療1年目は毎日注射するメリットが高いと私は思います。
私は成長ホルモン治療をしている患者さんを10人程度フォローしているだけではありますが、この10人の経験上、寝る前の注射は習慣の一部になっています。
歯を磨くように、成長ホルモンを注射しています。
週に1回お休みできる、というメリットは、注射が習慣になっている子どもにはあまり大きなメリットではないかもしれません。
ただ、人はそれぞれなので、少しでも注射をお休みしたい人はいると思います。
その場合は、2年目以降に、注射回数を減らすというのが良いように思いました。
まとめ
- 成長ホルモンは、毎日注射したほうが背が伸びる。
- 週6回と週7回とでは、2年間で1.3cmの差がつく。
- 週6回にするなら、2年目以降に。
ちなみに私は注射と言う言葉があまり好きではないので、「パワー注入!」と言っています。
なお、低身長外来の詳細については、こちらに書きました。
今では、80人くらい見ていると思います。