皆さんは、生後3か月未満の発熱をどうしていますか?
というのも、最近どうも新生児から生後1、2か月の発熱によく遭遇するのです。
保護者目線だと「病院に相談します」という対応で私は良いと思います。
いっぽうで、医療者目線だと「どのような検査プランを立てるか」という難しい判断に迫られます。
今回は、生後3か月未満の発熱における検査プランについて書きます。
このページの目次です。
生後3か月未満の発熱に髄液検査をすべきか
3か月未満の発熱は肺炎、尿路感染症、細菌性髄膜炎のいずれもが鑑別疾患に挙がります。
特に新生児の発熱では細菌性髄膜炎を含めた重篤な細菌感染症のリスクは7%です1)。
細菌性髄膜炎が鑑別に挙がりますので、髄液検査をすべきかどうか悩むことになるでしょう。
髄液検査は侵襲的です。
しなくてもいいのなら、できるだけしたくありません。
髄液検査をすべきなのか、しなくてもよいのかを判断するには、生後3か月未満の発熱を正しく評価するためのツールが必要です。
生後3か月未満の発熱を評価するためのツール
生後3か月未満の重篤な細菌感染症を見抜くために、昔から4つのクライテリアが使用されています。
Diagnosis and Management of Febrile Infants (0–3 Months).に、分かりやすい比較表があります。
要点をまとめます。
ボストン
対象:日齢28-89
検査所見:髄液細胞数<10/μL、白血球<20000/μL、尿中白血球<10/HPF、(胸部X線に浸潤影なし)
ミルウォーキー
対象:日齢28-56
検査所見:髄液細胞数<10/μL、白血球<15000/μL、尿中白血球<5-10/HPF、(胸部X線に浸潤影なし)
フィラデルフィア
対象:日齢29-60
検査所見:髄液細胞数<8/μL、白血球<15000/μL、尿中白血球<10/HPF、尿グラム染色陰性、髄液検査グラム染色陰性、(胸部X線に浸潤影なし)、便潜血陰性、(便中白血球少数以下)、桿状核球比<0.2
ロチェスター
対象:日齢60以下
検査所見:5000<白血球<15000/μL、桿状核球<1500/μL、尿中白血球<10/HPF、(便中白血球<5/HPF)
各クライテリアの注意点
どのクライテリアも、全身状態が比較的良好であることが前提です。
たとえば皮膚色に蒼白、まだら、灰色、チアノーゼの所見があったり、活気がなかったり、多呼吸や陥没呼吸があったり、脱水所見があったり、大泉門の膨隆または陥凹があったりすれば、重症感染症のリスクがあると考えられます。
これらの所見があれば、検査結果によらず「重症な感染症があるかもしれない」と考えるべきでしょう。
髄液検査をするかどうかの判断
ネルソン小児科学では、生後3か月未満の発熱に髄液検査は必須とあります1)。
確かに私が研修医の頃は、生後3か月未満の発熱は全員髄液検査をするように指導を受けました。
ボストン、ミルウォーキー、フィラデルフィアは、髄液検査が項目に入っています。
つまり、ボストンを使用するなら3か月未満の発熱には全例髄液検査をすることになります。
これは私が受けた教育そのものです。
いっぽうで、ロチェスターであれば、白血球検査と尿検査だけで重篤な細菌感染症があるかどうか評価することができます。
ロチェスターの陰性的中率は98.9%です
つまり、ロチェスターが陰性であれば重篤な感染症の確率は1.1%で、陽性であれば12.3%だという結果でした。
白血球検査と尿検査だけでここまでリスクを減らせるのは大きいと感じます。
そのため私は、ロチェスターをもとに髄液検査ををするか考えています。
すなわち、ロチェスターが陽性なら髄液検査を実施しています。
(ただし、私はロチェスターの適応を日齢90まで拡張させています。いっぽうで日齢28以下の新生児は、要注意だと思っているのでロチェスターを適応させていません。この理由はひとえに、陰性的中率98.9%ではまだ不安が残るためです)
これについては、こちらの本に詳しく書きました。
ロチェスターは優秀なクライテリアです。
ですが、陰性的中率98.9%が若干不安です。
もう少し確率を上げられないのでしょうか。
プロカルシトニンを利用したクライテリア
感染症の評価にプロカルシトニンが期待されています。
プロカルシトニンが本当に有用なのかどうかは現在も検討中であり、またCRPが160円であるのに対しプロカルシトニンは3100円もするので、コストとメリットのバランスも難しいです。
ただ、髄液検査を回避できるというメリットはかなり大きいですので、もしプロカルシトニンが有用なら積極的に使いたいです。
小児臨床検査ガイド第2版によると、プロカルシトニンは感染発症後2-3時間で上昇し、6-12時間でピークに達し、半減期は20-24時間です。
CRPが感染発症後5-8時間で上昇し、48-72時間でピークに達し、半減期は24時間であることを考えると、プロカルシトニンは鋭敏です。
プロカルシトニンは正常新生児では出生時0.55μg/L、生後24時間18.7μg/L、生後80時間1.8μg/Lという推移をします。
小児臨床検査ガイド第2版は分かりやすく、おすすめの本です。
そんなプロカルシトニンを使用した評価ツールを2つ紹介します。
Step by Step
プロカルシトニンを利用したクライテリアとしては、Step by Step Approachがあります。
Validation of the “Step-by-Step” Approach in the Management of Young Febrile Infants.Pediatrics 2016, VOLUME 138 / ISSUE 2
Step by Stepの対象は日齢90以下の児です。
次の所見が全てあれば、低リスクとされます。
- PAT(意識、呼吸、循環で評価するトリアージ)に異常なし
- 日齢21以上
- 尿中白血球陰性
- プロカルシトニン0.5μg/L未満
- CRP2mg/dL未満
- 好中球10000/μL未満
Step by Stepの感度92.0%、陰性的中率99.3%でした。
同じ集団でロチェスターを使ってみると、感度81.6%、陰性的中率98.3%でした。
プロカルシトニンとCRPを組み合わせたStep by Stepはロチェスターより感度がいいことが分かりました。
PECARN
2019年にはPECARNの基準が登場しました。
A Clinical Prediction Rule to Identify Febrile Infants 60 Days and Younger at Low Risk for Serious Bacterial Infections.(JAMA Pediatr. 2019 Apr 1; 173: 342-351)
PECARNの対象は日齢60以下です。
次の所見をすべて認めれば、低リスクとされます。
- 尿中白血球陰性
- 好中球4090/μL未満
- プロカルシトニン1.71μg/L未満
感度97.7%、特異度60.0%、陰性的中率99.6%、陰性尤度比0.04という結果でした。
この論文はさらに読み込んでみる価値がありますので、後日再度紹介します。
まとめと感想
髄液検査前のスクリーニングとして、できるだけ感度の高い評価ツールが必要です。
今まではロチェスターしかありませんでしたが、プロカルシトニンを利用したクライテリアもいくつか報告されるようになってきました。
今回紹介したStep by StepもPECARNもプロカルシトニンを利用しています。
ある半年の期間で、当院の生後60日未満の発熱は9人いましたが、そのうち4例が好中球4090/μLで引っかかりました。
そのうちの2例は尿路感染でしたので、陽性的中率は50%でした。
いっぽうで、陰性的中率は100%でした。
印象として好中球4090/μLはかなり厳しいカットオフではないかと感じていましたが、実際に運用してみると意外と絶妙なカットオフなのかもしれないと、印象が少し変わってきています。
ただ、やはり本当に新生児にも適応してもいいのかなど、さらなる吟味も必要に感じます。
これから妥当性が評価され、また修正も加えられ、生後3か月未満の発熱の管理がさらに安全になることを願っています。
1) ネルソン小児科学 第19版 p1044-1047
2) Febrile Infants at Low Risk for Serious Bacterial Infection—An Appraisal of the Rochester Criteria and Implications for Management. Pediatrics 1994; 94 p390-396