小児の経口補水療法のやり方、作り方。

だんだんと寒くなってきました。
もうすぐノロウイルス、ロタウイルスの時期です。

胃腸炎が流行する前に、兵庫県立柏原病院は経口補水療法の方法を見直しました。
嘔吐や下痢で当院を訪れた患者さんに、経口補水療法の方法を書いたリーフレットをお渡しするようにしました。

今回は、当院で指導している小児の経口補水療法のやり方、作り方について書きます。

経口補水療法の歴史

l  経口補水療法は1968年に誕生した治療です1)

l  コレラ感染の死亡率を30%から3.6%に改善させ1)、世界保健機関(WHO)の統計によると年間100万人の子どもの命を救っています。

経口補水療法の効果

l  嘔吐を繰り返したり、何度も下痢したりして、脱水が心配なお子さんに対して、経口補水療法は有効です。

l  経口補水療法は、点滴と同じ効果があります1)

飲ませるもの

l  OS-1やアクアライトが望ましいです。手に入らないときはポカリスエットやアクエリアス、2倍に薄めたりんごジュースでも構いません2)。水1Lに食塩2gと砂糖35gを加えれば、アクアライトと同じ成分の飲み物になります。

l  母乳や粉ミルクを飲んでいるお子さんはそのまま続けましょう(薄める必要はありません)。

2倍に薄めたりんごジュースに関する論文は軽症の脱水でその有用性が認められています。
しかし中等症以上の脱水ではその効果はまだ明らかではありません。

こちらの記事に詳しく書きました。

経口補水療法。子どもの下痢・嘔吐にいい飲み物は何ですか?

2017年5月22日

飲ませかた

l  時間をかけて少しずつ飲ませましょう。

l  一例として、次のような飲ませ方があります。これは米国疾病管理予防センター(CDC)の推奨に準じています3)

□ 体重が10kg未満

最初は5分おきに5mLずつ飲ませましょう。

吐かなければ、5分おきに10mLずつまで増やしましょう。

3時間かけて約300mlの水分を摂りましょう。

もし吐いてしまったり下痢したりした場合は、そのたびに30分以上かけて約60mlの水分を追加してください。

□ 体重が10kg以上

最初は5分おきに5mlずつ飲ませましょう。

吐かなければ、5分おきに10mlずつ、15mlずつ、20mlずつまで徐々に増やしましょう。

3時間かけて約600mlの水分を摂りましょう。

もし吐いてしまったり下痢したりした場合は、そのたびに30分以上かけて約120mlの水分を追加してください。

食事の再開(母乳や粉ミルクを卒業しているお子さん向け)

l  長時間の絶食は、小腸の機能を悪化させるため、水分を十分に摂取した後は食事を再開したほうが良いです。

l  経口補水を開始して6時間後から、炭水化物と塩分と水分が多めの食事を再開しましょう。

再診の目安

l  嘔吐を繰り返し、水分を摂取できない場合。

l  ぐったりしてきた場合や、顔色が悪くなってきた場合。

参考文献

1) 乳幼児の経口補水療法 (小児科臨床 2016)

2) Effect of Dilute Apple Juice and Preferred Fluids vs Electrolyte Maintenance Solution on Treatment Failure Among Children With Mild Gastroenteritis (JAMA 2016)

3) Managing Acute Gastroenteritis Among Children (CDC 2003)

ABOUTこの記事をかいた人

小児科専門医、臨床研修指導医、日本周産期新生児医学会新生児蘇生法インストラクター、アメリカ心臓協会小児二次救命法インストラクター、神戸大学大学院医学研究科内科系講座小児科学分野に入局。現在、おかもと小児科・アレルギー科院長。専門はアレルギー疾患だが、新生児から思春期の心まで幅広く診療している。