2017年4月28日追記。
エムラクリームについて追記しました。
子どもは2歳までに何回の予防注射をすると思いますか?
Hib4回、肺炎球菌4回、B型肝炎3回、四種混合4回、BCG1回、麻疹風疹1回。
水ぼうそう2回と、おたふくかぜ1回もぜひおすすめします。
ロタウイルスワクチンは飲み薬なので除外するとしても、20回もの予防接種をすることになります。
予防接種は子どもにとって嫌なできごとです。
できるだけストレスを感じないように、小児科医が実践していることをお伝えします。
そして最後に、お父さん・お母さんにもぜひして欲しいことを紹介します。
このページの目次です。
2歳までの予防接種
2歳まではとにかく厳しい接種スケジュールです。
このストレスフルな注射期間を一番なんとかしてあげたいものですが、2歳までの予防接種を泣かさずに終えることはまず無理です。
私はできるだけ注射する直前までお母さんに抱っこしてもらっておいて、いざ注射するときはお母さんにぎゅっと抱きしめてもらった上で、手早く手技を終えて、はやくお母さんにあやしてもらえるようにしています。
3歳からの予防接種
子どもが転んだとき、泣くときもあれば、我慢できることもありますよね。
子どもの性格もよりますが、子どもの転んだときの痛みというのは、我慢できるかできないかのちょうどボーダーラインなのでしょう。
予防注射の痛みは、転んだときの痛みに比べれば、ずいぶん痛くありません。
26Gというとても細い針は、ほとんど痛みを感じません。
注射液を入れるときが若干痛みを伴いますが、ゆっくり入れることでだいぶ痛みは軽減します。
ですが、泣いてしまう子どもが多いという現実。
転んでもなかない子どもすら泣いてしまうのはなぜでしょうか。
注射で子どもが泣く理由
子どもが注射で泣くのは、痛いからという気持ちもありますが、怖いからという気持ちもあります。
針で刺される恐怖、大人に押さえつけられる恐怖、それらが怖くて子どもは泣いています。
したがって、小児科医は「予防注射を痛くしないワザ」に加え、「予防接種を怖くしないワザ」が求められています。
予防接種を痛くしない5つのワザ
- 細い針を使う。
- ゆっくりと薬液を入れる。
- 冷たい薬液を使わない。
- エムラクリームやリドカインテープ(痛み止め)を使う。
- 注射する前に、接種部位を1分ほど親指で強く圧迫する。
4について、エムラクリームはこの記事に書きました。
ただし、薬液を入れるときは痛みがあります。
また、クリームを塗ってから60分以上待たないと効果が出ないので、予防接種の待ち時間が大幅に長くなってしまい、お母さんも子どももへとへとになってしまいます。
小児科外来のあらゆる場面でエムラクリームを導入するにはまだ困難がありますが、場合によっては有用な印象を持ちました。
5について、アメリカ小児科学会のred bookにも記載されていますが、注射する場所をあらかじめぐっと押さえておくと、痛覚が鈍くなって、針を刺した時の痛みが減ります。
薬液を注入しているときの痛みはあまり変わっていない印象ですが、子どもが一番怖がるのは針を刺す瞬間なので、そのときの痛みが軽減されるのは大きなメリットです。
エムラクリームは60分かかるのに対し、圧迫だけなら1分でできるので気軽に行えるのもいいです。
ですが逆に言うと、このワザは押さえるのに1分かかるので、予防注射の時間が1分余計にかかります。
子どもが恐怖で泣き叫んでいるときは、1分押さえて余計に泣かせてはかわいそうです。
すぐ注射して、すぐ解放してあげることも一考の余地があります。
予防接種を怖くしない4つのワザ
- 人形を使ってデモンストレーションをする。
- 小児科医の腕を差し出し「まず○○ちゃんがぼくに注射して」と注射ごっこする。
- 「象さん用の注射器」と「アリさん用の注射器」どっちがいい?と聞く。
- お兄ちゃんのかっこいいところ見せて!ときょうだいの前で言う。
3歳になると、子どもは言葉を理解できるようになります。
ですので、小児科医がうまく誘導することで、子どもの恐怖を和らげることができます。
デモンストレーションはなかなか有効です。
子どもが怖いのは、注射がどれくらい時間がかかって、どうなったら終わりになるのか分からなくて怖いという面もあるのでしょう。
ぬいぐるみ相手に「まずはふきふきして、それから注射。ちくっとするけれど、5秒だったらもうおしまい。あとはお母さんに抱っこしてお外で待ってようね」と言うだけで、「5秒だけなら頑張れるかな」と思う子どもが多いです。
なお、私は痛くないようにゆっくり注射液を入れるので、実際は10秒くらいかかっています。
でも、10秒と言うと子どもは「長い!」と思ってしまうようで、私は5秒と言いながらやっています。
自分の腕を差し出して注射ごっこをすると、子どもは結構喜んで遊んでくれます。
もちろん、怖くてそれどころじゃない子どももいますが、一部の子どもにはとても有効です。
「象さん用とアリさん用」は本当に効果あります。
子どもは「アリさんで」と言います。
「分かった、じゃあ特別にアリさん用でやるね。看護師さーん!アリさんの注射器でー!」と言うようにしています。
お父さん・お母さんにできること
泣いたときも、泣かなかったときも「よく頑張ったね!」と褒めてあげてください。
そして抱きしめてください。
優しさで包み込んであげると、子どもは痛みのストレスを乗り越えるようになります。
まとめ
痛くない注射のために小児科医が実践している9つのワザを紹介しました。
このワザはすべてが使われるわけではありません。
私は接種時の痛みを和らげるよりも、恐怖を和らげるほうが大事だと考えていますので、リドカインテープまでは使いません。
接種部位の圧迫も15秒くらいです。
代わりにぬいぐるみを使ったデモンストレーションには時間をかけます。
いろんな小児科施設があって、忙しいところもあれば、時間がゆっくり取れるところもあります。
忙しい病院でゆっくりデモンストレーションをしていたら、他の患者さんの待ち時間が長くなってしまって、そうなると子どものストレスも増えてしまいます。
ですので、すべての小児科医は9つのワザを知った上で、状況に合わせてワザを取捨選択をしています。
泣かさない注射には、痛くしないワザと怖くしないワザの両方が不可欠です。
ただ、いろんなワザを持っても泣いてしまう子どもさんには、いたずらに注射時間を増やさずに、とにかく速やかに注射を終わらせてあげます。
そして最後にとっておきのワザ。
ご褒美シールです。
次回の注射でも「頑張ったらシールあげるね!」と言うと、恐怖を乗り越えられることがあります。