鼻吸引は喘鳴・咳・鼻閉に有効ですか?鼻汁吸引のエビデンス。

私の外来を受診したことがある患者さんは知っている思うのですが、私は「鼻汁吸引」について積極的に指導しています。
私がクマのぬいぐるみを使って鼻汁吸引の方法を指導する姿を目撃した人はたくさんいることでしょう。

私が鼻汁吸引を大切だと考えていることは、この本からも分かると思います。

レビューにも頂いた通り、私は上記の本文中に鼻汁吸引について繰り返し記載しました。

さて、私が重要だと認識している鼻汁吸引ですが、本当に有効でなのでしょうか?
前回の記事で調べた論文では、鼻汁吸引の有用性は今一つ明らかにできませんでした。

RSウイルスに鼻水吸引が有効かどうか真剣に考えてみる。

2018.02.08

今回は、鼻汁吸引が有効である根拠となる論文を新しく発見したので、紹介します。

喘鳴を起こしやすい子どもにおける、自動鼻吸引機が上気道および下気道症状に与える影響

The impact of nasal aspiration with an automatic device on upper and lower respiratory symptoms in wheezing children: a pilot case-control study(Ital J Pediatr. 2018; 44: 68.)

素敵なことに、全文無料で読めます。
さっそく読んでみましょう。

背景

上気道炎・下気道炎・喘鳴は、2歳までの子どもが病院を受診する理由の1位です。
世界レベルで、その社会的および経済的負担は膨大です。

ほとんどの父親・母親が、子どもの風邪に対して上手く治療できません。
そのため、必要がない受診を繰り返しています。

目的

この研究は、喘鳴を起こしやすい子どもを対象に、自動鼻吸引機で鼻腔を適切に洗浄することにより、風邪に関連する症状が緩和され、薬物の使用が減少するという仮説を検証することを目的としています。

方法

喘鳴の病歴を有する就学前の小児を2つの群に分けます。
鼻吸引と鼻噴霧の両方をする群と、鼻噴霧のみを受ける群に分けます。
サルブタモールの使用および、日々の症状をモニターしました。
モニター期間は3か月間です。

鼻吸引と鼻噴霧を同時に行えるデバイスとして、オムロン製の「DuoBaby」を用いました。

鼻吸引と鼻噴霧の両方をする群はDuoBabyを通常通り使用します。
鼻噴霧のみを受ける群はDuoBabyの鼻吸引アタッチメントを取り外して使用します。

評価項目

プライマリーアウトカムは鼻吸引の使用により喘鳴が予防できるかどうかです。

セカンダリーアウトカムは家族のQOLの向上、投薬の使用の減少です。

結果

43人の子どもが鼻吸引と鼻噴霧の両方をする群に、46人の子どもが鼻噴霧のみを受ける群になりました。

横軸のcasesは鼻吸引と鼻噴霧の両方をする群です。
controlsは鼻噴霧のみを受ける群です。

縦軸は90日間のうち、喘鳴があった日数をパーセンテージで表したものです。

鼻吸引と鼻噴霧の両方をする群のほうが、鼻噴霧だけの群よりも喘鳴が少ないという結果でした。

また、鼻の症状や咳の症状も、鼻吸引と鼻噴霧の両方をする群のほうが軽いという結果でした。
さらに、上気道症状の期間も、鼻吸引と鼻噴霧の両方をする群のほうが短くなるという結果でした。

結論

鼻腔吸引は、呼吸器症状の改善につながる最も重要な要素である可能性が高いでしょう。

感想

鼻吸引をする群としない群で分けるのではなく、鼻吸引+鼻噴霧の両方する群と鼻噴霧だけをする群とに分けるあたりが、人を対象とした倫理的な研究であるように感じます。
両群ともにメリットを持たせると、研究参加者が増え、脱落者が減り、研究の質が上がります。

本論文では、鼻噴霧の有用性は分かりません。
両群ともに鼻噴霧を行っているからです。
生理食塩水吸入や、高張食塩水吸入など、鼻噴霧についての論文もたくさんありますが、その効果は不明です。
私は鼻噴霧については否定的ではありませんが、現時点では積極的に勧めているわけではありません。
(部屋の加湿は勧めますが)

少なくても、本論文はpilot studyとはいえ、鼻吸引の重要性を報告した貴重な論文だと感じます。
特に、鼻吸引が単なる上気道障害にとどまらず、下気道の症状を緩和させる可能性まで感じさせました。

私は細気管支炎の治療の根幹は「鼻汁吸引」にあると臨床的に感じていましたが、今回の論文でさらに自説の正しさを感じました。

ABOUTこの記事をかいた人

小児科専門医、臨床研修指導医、日本周産期新生児医学会新生児蘇生法インストラクター、アメリカ心臓協会小児二次救命法インストラクター、アメリカ心臓協会PEARSインストラクター。神戸大学大学院医学研究科内科系講座小児科学分野に入局。現在、兵庫県立柏原病院小児科医長。専門はアレルギー疾患だが、新生児から思春期の心まで幅広く診療している。