小児科医におすすめの教科書3冊と研修医に薦めたい3冊。

フェイスブックで情報を交換している小児科の中村先生から、おすすめの教科書について考える機会を頂きました。

「私を信じて、この本は買ってください!」と自信を持って言える本はなかなかありません。
というのは、興味を持っている分野、得意・不得意な分野、基本を知りたいのか高度な専門知識を知りたいのか、今までの経験、文字が好きか絵が好きか、エビデンス重視か有名な先生の自経験が好きかなどで、変わってくるからです。

私の好きな教科書について、他の人にも勧められるかどうか批判的に吟味すると、結局のところ「本って好き好きあるからね」という結論になってしまいます。

では、教科書を勧めることはできないのかというと、そうではありません。
「好き好きある」ということを理解しつつ、好きな音楽、好きな小説、好きな漫画のように、「あなたが気に入るかどうかは保証できないけれど、少なくて私は好きです」という感覚で勧めることならできます。

今回は「おすすめの小児科の教科書」について書きます。

おすすめの小児科の教科書

「この本は買ってよかったなあ」と著者の方々に最大限の感謝と賛辞を送れるような教科書。
暇さえあれば、いつも読んでいるような教科書を紹介します。

候補はいくつかありますが、あまりたくさん紹介するとおすすめ感が薄れるので、熟慮した上で3つにしぼりました。

実践小児脳波入門―日常診療に役立つ脳波アトラス

2017年6月時点で、amazonでの小児科学教科書売れ筋ランキング43位です。

小児神経の専門医でなくても、小児科医にとって脳波検査の機会は多いでしょう。
熱性けいれんを繰り返す年長児や、熱がないのにけいれんをする子どもを診療する場合、脳波検査は必要です。

脳波は痛みを伴わない検査です。
気軽に検査することができます。

ですが、脳波の結果を読むことができなければ無意味です。

脳波所見のほとんどが「正常脳波」です。
ですので、脳波の勉強の基礎は「正常脳波」を読むことだと思います。

この本は、正常脳波を読むために必要な知識が具体的に書かれています。
正常脳波を知ることで「この脳波は正常じゃない気がする」という視点が生まれます。
良書です。

症例を通して学ぶ年代別食物アレルギーのすべて

2017年6月時点で、amazonでのアレルギー内科学教科書売れ筋ランキング25位です。

日本アレルギー学会の学術大会で出張販売していた本屋さんで立ち読みして、ひとめぼれし買った本です。

消化管アレルギーから始まり、食物アレルギーの関与する乳児アトピー、そして典型的な即時型アレルギーなど、これ1冊で食物アレルギーのすべてを具体例を通して知ることができます。

「近医による間違ったアレルギー診療を受けた症例」など、なかなか示唆に富んだ症例提示も含みます。

アレルギー専門医でなくても、ぜひ読んで欲しい本です。
この本を読めば、プリックテストや経口負荷試験をしたくなると思います。
(ただ、経口負荷試験はアレルギー専門医もしくはそれを目指す医師に任せてもよいと、アレルギー専門医を目指す者として一言付け加えておきます)

もし食物アレルギーに興味が湧くのであれば、「食物アレルギー診療ガイドライン 2016」も併せて読むことをすすめます。
最近流行のMindsを踏襲していないガイドラインではありますが、なかなか読みやすく、内容も面白く、そしてガイドラインにふさわしく実践的です。

ネルソン小児科学

小児科医のバイブルです。

「私の治療は、本当に正しいのか」

治療が上手く行かないとき、経過が思わしくないとき、私はいつも不安になります。
そんな私の不安を救ってくれるのがネルソンです。

「大丈夫、ネルソンにはこう書いてあるんだから」

その記述の権威と、信頼性の高さから、私は自信をもって患者さんの前に行くことができます。

これは持論ですが、大学病院やこども病院のように規模の大きな三次病院の先生には、すでに権威が備わっていると思うんです。
「大学病院の先生が言うんだから、間違いない」という権威です。

ですが、私の務める田舎の二次病院では権威がありません。
権威がない医者が、自信がない医療を提供すると、患者さんにもその不安が伝わります。

治療の経過がよくない場合、こう切り出されることでしょう。
「もっと大きな病院に紹介してもらえませんか?」と。

医者には謙虚さも必要ですが、それと同じくらいに自信も必要です。
ネルソン小児学は、自分の診療に自信を与えてくれる良書です。

私のブログにもたびたび登場します。
私は医局でもネルソンをよく読んでますし、場合によっては病棟や外来にも持っていきますから、同僚によく笑われます。
(すごく大きくて重い教科書なので、持ち歩くとすごく目立つのです)

小児科学の売れ筋ランキング

個人的におすすめの教科書を3つ紹介しましたが、これではあまりに主観的です。

主観的な意見ばかりをネットに書くのはどうかと思うので、「amazon売れ筋ランキング」というデータをくっつけて、ちょっとだけ客観性を持たせることにします。

amazonの小児科学売れ筋ランキングを見てみましょう。
100位以内の売れている小児科の本が出てきます。

2017年6月11日現在で、このランキングに載っている本のうち購入したまたは読破した本は以下です。

  • 日本版救急蘇生ガイドライン2015に基づく 新生児蘇生法テキスト
  • 専門医をめざす! 小児科試験問題集(改訂第2版)
  • 乳幼児の発達障害診療マニュアル – 健診の診かた・発達の促しかた
  • 新 小児薬用量 改訂第7版
  • 新生児学入門 第4版
  • 夜尿症診療ガイドライン2016
  • 小児心身医学会ガイドライン集―日常診療に活かす5つのガイドライン
  • 小児科当直医マニュアル 改訂第14版
  • 小児肥満症診療ガイドライン2017
  • 実践小児脳波入門―日常診療に役立つ脳波アトラス
  • 小児科レジデントマニュアル 第3版
  • 食物アレルギーの基礎知識―保護者と学校の先生に伝えたい
  • 熱性けいれん診療ガイドライン2015
  • 小児臨床検査ガイド 第2版
  • NICUマニュアル(第5版)
  • 時間経過で診るNICUマニュアル第4版
  • 日本版救急蘇生ガイドライン2015に基づく 新生児蘇生法インストラクターマニュアル

ランキング100位以内のうち、17冊が購入済みまたは借りて読破していました。
上記の中には良書と思う本もありますし、買って損したと思う本もあります。
(この17冊以外にもランキング外で買った本はたくさんありますが、不思議なことにランキング外で購入した本はいずれも良書ばかりです。おそらく実際に中身を吟味して買ったからだと思います。逆に、ランキングが高い本は、ろくに吟味をせず、でもランキングが高いからいい本なんだと思って買ってしまって、その結果自分に合わなかったんだと思います)

amazonで購入する場合、指標となるのは売れ筋ランキングと購入者のコメントです。
それを参考にした上で買うわけですが、やはり自分には合わないと思える本を買ってしまいます。

買ったものの実臨床に生かせないのであれば、財布にダメージを与えただけです。
どうすれば自分に合った教科書を買えるのでしょうか。

自分に合った教科書を買うための方法

「この本は買って損したなあ」と思う本の多くが中身を確認せずに買った通信販売です。

ネットの売り文句を見て、なんとなくよさそうに思って買った場合、もちろん良書であることもあるのですが、自分に合わない本も多く買ってしまいます。

それを避けるためには、本屋さんで手に取って、実際に中身を確認して、買うべきです。

カラーイラストの量、索引の使いやすさ、文字の大きさ、紙の質感など細かいところで個人の好き好きが表れます。
amazonの売れ筋ランキングが高いからと言って、あまり信用できません。

実際に手に取って、開いてみる。
これが良い教科書に出会うためのおすすめの方法です。

小児科医を目指す研修医に適した教科書

研修医の場合は特殊な事情があるので、おすすめする本の傾向が少し変わります。
研修医の特徴としては以下の2点があります。

  • 基本の知識が乏しい。
  • 高い教科書を買うためのお金がない。

基本の知識が乏しいので、高度で専門的な内容の本は避けたほうが無難です。
また、疑問を解決しようと本を読んでも、内容を理解できず、さらなる疑問が沸いてくることがあります。

お金がないため高い本は買えませんし、安い本であっても「この本、買って損したな」と思った時の経済的ダメージが大きいのも研修医の特徴です。

安くて、実践的で、先輩医師はみんな持っているため質問しやすい本。
それが、研修医におすすめの本です。

まずは先輩医師の本棚を見てみましょう。
あまり分厚くない本がいいですね。
分厚い本は通読するのに不向きですし、値段も高いです。
薄くて安そうな本にしましょう。
その中で「○○マニュアル」とか「××ガイドライン」とかがあれば、その先輩医師に使い勝手を聞いてみましょう。
よさそうなら買って読みましょう。
分からないところは、その先輩医師に聞きましょう。

私の本棚にあって、研修医に最初に勧めたい本としては「小児呼吸器感染症診療ガイドライン 2017」と「熱性けいれん診療ガイドライン2015」と「周産期相談318 お母さんへの回答マニュアル 第2版 (周産期医学 2009年 39巻増刊号)」の3つです。
最後の周産期相談はamazonで買うと定価よりも高い可能性がありますので、注意してください。

ちなみに私が研修医のときは「小児科研修の素朴な疑問に答えます」を読みこみました。
小児科研修医が直面するいろいろな場面に、エビデンスで立ち向かえるとても良い本でした。
2008年の本ですので、今後改訂されることがあれば、ぜひ薦めたい本の一つです。

まとめ

小児科医のおすすめの教科書と、小児科を目指す研修医におすすめの教科書について書きました。

実際に手にとって吟味しようと思えば、本屋さんに行くのがよいわけですが、医学書を置いてくれている本屋さんというのは少ないものです。

学会に出張してくれている本屋さんは貴重ですし、場合によっては同僚の本棚に気になった本があった場合は貸してもらうのもいいでしょう。

医学書はどれもそれなりの値段がします。
おおむね3000円から5000円くらいで、場合によれば1万円を超えます。
私の愛読書であるネルソンは4万円ほどします。

「岡本を信じてネルソンを買ったけれど、あまり役に立たなかった。4万円返せ!」

そんなふうにクレームを頂いても、私は責任を取れません。
実際に手に取って、自分に合ったと思った本を買うようにしてください。

研修医が本を買うときも、実際に手に取って、ちょっと立ち読みしたから選ぶという方法をおすすめします。
ですが、小児科のことをほとんど知らない研修医にとって「どの本が自分にとって役に立つか」というは立ち読みしてもなかなか分からないですよね。

研修医の場合は、先輩医師の本棚にあるマニュアル本やガイドラインから始めてみましょう。