兵庫県立柏原病院の魅力。小児科の地域医療を考える。

兵庫県丹波市をご存知でしょうか。

黒豆が有名です。
あとはマツタケや、イノシシ(ぼたん鍋)も有名です。

名産品で分かるように、丹波市は田舎です。
そんな兵庫県丹波市および丹波市周辺の医療を支えるのが、県立柏原病院です。

今日は県立柏原病院の魅力について書きます。
そして小児科の地域医療について考えます。

丹波市・篠山市の小児人口

2017年3月時点での丹波市の人口は65000人です。
人口分布でもっとも多いのは65歳から69歳であり、典型的な釣り鐘型年齢分布を持った、高齢化地域になります。

ですが、こどもが全然いないのかといえば、そんなことはありません。
15歳未満の人口は8500人です。

こちらは丹波市の動画です。
子どもだってちゃんといます。


ちなみに、3:00に一瞬映るのが、兵庫県立柏原病院と、県立柏原病院の小児科を守る会です。

柏原病院小児科は、丹波市の隣の篠山市の小児医療も担っています。
篠山市の人口は2010年のデータで43000人、そのうち15歳未満は5400人です。

つまり、約14000人の子どもを柏原病院小児科は支えていることになります。

兵庫県立柏原病院小児科

2017年現在、小児科の常勤医は私を含めて4人です。
加えて、県立こども病院から若い先生が研修目的に1人来てくれています。
他にもアルバイトの先生などもありますが、基本的にこの人数で約14000人の子どもの二次診療を支えています。

柏原病院小児科の夜間・休日の特徴

丹波市も篠山市も、夜間診療所がありません。
高速道路で片道1時間半の距離にある神戸市か伊丹市の診療所を受診しなければなりません。

休日診療所はありますが、診療時間は日曜祝日の夕方までです。
小児科医が勤務していることはほとんどなく、たとえば2017年4月29日の丹波市休日診療所の先生は耳鼻科ですし、翌日の4月30日は眼科です。

したがって、休日も夜間もすぐに診てくれる小児科の先生がいないのが、この地域の特徴です。

柏原病院小児科に求められているのは、子どもの重症例に対する医療です。
救急車で来るような重症例の処置が主な仕事です。

しかし、軽症例を診てくれる病院が周りにないので、軽症例も診るしかありません。
(軽症例だから診ないと言ってしまえば、その子どもは往復3時間+待ち時間という苦労を余儀なくされてしまいます。申し訳ないと思いつつも、重症例がたてこんでいるときは、軽症例を断る場合もあります)

丹波市・篠山市の子どもの数は合わせても14000人で数自体は決して多くはありません。
ですが、軽症から重症まですべて診なければなりません。

また、柏原病院には産婦人科もあり、年間200人の赤ちゃんが生まれています。
しんどくお生まれになった赤ちゃんの蘇生をし、救急車の対応もし、風邪やインフルエンザ、腸炎などの診療も求められます。

とても働きがいがあるのが、柏原病院の夜間・休日の特徴です。

他の市との比較

私が以前働いていた同じ兵庫県の明石市と比較してみます。

明石市は2015年のデータで人口29万人、15歳未満は約4万人です。
明石市の小児医療の中核は明石医療センター(常勤5人)、明石市民病院(常勤5人)、そして東播磨地域という枠組みで加古川中央市民病院(常勤24人)が担っています。

明石市には夜間休日応急診療所があり、夜の0時まで毎日小児科の先生が対応してくれます。

明石市の子どもの数は丹波市・篠山市の子どもの数のおよそ3倍ですが、夜間でも休日でも診療してくれる小児科施設があり、また重症例を扱う二次病院が3つあるため、うまく連携しあえています。

明石市と丹波市、どちらのほうが小児科医の勤務が過酷か、というのは一概には言えません。
とりあえず言えるのは、丹波市は人口が少ないけれど、フォローしてくれる病院が周りにないので、それなりに忙しいということです。

県立柏原病院の小児科を守る会

働きがいがあると言えるのは、今の常勤医が4人いるからだと思います。

数年前は常勤医は2人しかいませんでした。
小児科医は疲弊していました。

そのとき、地域の人たちが小児科を守ろうと動いてくれました。
それが「県立柏原病院の小児科を守る会」です。

県立柏原病院の小児科を守る会については、NHKの動画がとてもよくできています。
柏原病院の風景もたくさん出てくる、16分の動画です。
なかなか面白いので、ぜひ見てください。

地域医療の魅力

地域医療の魅力の一つは「やりがい」だと思います。

医者がたくさんいる地域では、責任は分散されます。
医者がほとんどいない地域では、いい意味でも悪い意味でも、責任が一人の医者に偏ります。

だから、治療が上手く行ったときはとても感謝されます。

また、この丹波市は小児科を守る会の活動のおかげもあってか、患者さんのマナーがよく、こちらも医療に集中することができます。

小児科を守る会によって守られた小児科です。
子どもを守るという形で、恩を返したいと思います。
それは、昼も夜も必死で働くということも一つです。

加えて、柏原病院を医者にとってもっともっと魅力的な病院にして、柏原で働きたいという医者が増えることも大切だと思います。

実際、柏原病院で働いていて私はとても楽しく、毎日充実感でいっぱいです。
この病院の良さをアピールすることも、大切だと思っています。

最後に、柏原病院のアピール動画です。
最初の30秒の流れは、個人的にあまり好きではありません。
(少し傲慢な印象を受けてしまいます)
あと、選曲も好みではありません。
(私はもう少し穏やかな曲が好きです)


37秒以降は好きです。
一緒に働いてくれる仲間が増えたら、もっと楽しく働けます。

ABOUTこの記事をかいた人

小児科専門医、臨床研修指導医、日本周産期新生児医学会新生児蘇生法インストラクター、アメリカ心臓協会小児二次救命法インストラクター、神戸大学大学院医学研究科内科系講座小児科学分野に入局。現在、おかもと小児科・アレルギー科院長。専門はアレルギー疾患だが、新生児から思春期の心まで幅広く診療している。