その小児科で大丈夫?子どもを受診させる不安と克服法。

今回の記事は、当ブログが一番最初に投稿した「小児科は身近な場所」の続きにあたる記事です。
まだ読んでおられない場合は、併せて読んでくださると嬉しいです。

5歳未満の受診率は大人の2倍以上。小児科は身近な場所。

2017年1月3日
今回の記事では、小児科に対する不安と、その不安を和らげる方法について書きます。

その小児科にわが子をあずげて大丈夫?

お父さん・お母さんにとって、小児科はとても身近な場所です。
ですが、とても身近にあるにも関わらず、わが子を診てもらいながら、その小児科に不安を感じたことはありませんか?

「不安を感じたことなんてありません。うちの近所の小児科の先生は、それは名医です。信頼しています」

そういう人はこの記事を読む必要がありません。
ただ一つだけアドバイスするなら、その小児科の先生は本当に名医です。
これからもかかりつけ医として、その先生と一緒に子どもの未来を支えてあげてください。

この記事は、「この小児科の先生に、本当にわが子を預けてもいいの……?」と不安を感じたことがあるお父さん・お母さんに向けて書きました。
やんちゃで、いたずら好き、だけですごく可愛いわが子が、ある朝ぐったりしていたらすごく心配になりますよね。
いつもの笑顔が消えていて、青白くて覇気のない表情を見ればとても不安になりますよね。
わが子に最良の医療を受けさせたいとあなたは思うはずです。
そのとき、あなたは「いつもの小児科でいいのかな、もっといい先生はいないのかな」と思ったことはありませんか?

私には、この不安がとてもよく分かります。
私は小児科医であるとともに、二児の父親でもあります。
自分自身が病気になって苦しいときは、「苦しいのは自分だけだから、自分さえ我慢すればそれでよい」と思えるのですが、子どもが病気になったときは我慢できません。
苦しんでいるのは自分ではなくて、わが子。
自分のことなら我慢できても、わが子のことになると我慢できないのが親というものだと思います。
それほど愛おしいわが子を預けるのですから、信頼できる小児科医でなければ受診させられません。

小児科医に対してどうして不安になるのか

もし、かかりつけの小児科に不安が感じたことがあるのなら、その理由はなんでしょうか。
たとえば、先生の厳しい口調だったり、聞き取りにくい滑舌だったり、そういうコミュニケーションの問題かもしれません。
診察時間の短さだったり、なかなか採血をしてくれなかったり、そういう診察上の疑問かもしれません。
抗生剤を出してくれなかったり、点滴をしてくれなかったり、そういう治療上の不満かもしれません。
医者の力量を客観的に判断することはとても難しいですから、肩書きで評価するしかない場合もあるでしょう。
大学教授とか医学博士とか専門医とか、そういう立派な肩書きがないから不安になるという親もいるかもしれません。

ですが、私はもっと大きな理由があると思っています。
小児科のことを知らないから、小児科のことが不安になるのではないか、と。
知らないから不安になる、という経験は必ずあるはずです。
見知らぬ土地での新生活、走ったことのない道の運転。
新しい体験はワクワクするというポジティブな人であっても、わずかな不安は抱くはずです。
私はなかなか臆病な性格なので、勤務先が変わるだけでもドキドキします。
新しい職場で、新しい同僚や看護師たちと仲良くやっていけるのだろうか。
自分の能力が役に立つだろうか。
上司や病院長の期待に応えられるだろうか。
その地域の患者さんのニーズに応えられるだろうか。
などなど、転勤するたびに不安になります。
「悩んだって仕方がない。習うより慣れろだ」と度量の大きい人なら前向きに考えるでしょう。
転勤の場合はそれでよいと思います。
ですが、わが子を小児科に連れていくときに、「悩んだって仕方がない。行った先がヤブ医者だったら別の小児科に行くだけだ」という発想では、名医に出会うまで小児科を転々と移動することになってしまいます。
名医に出会うまで、その子どもは継続した治療を受けることができません。
子どもにとって、その発想はあまりよい選択ではないように思います。

小児科医を知ることで不安は和らぐ

小児科医のことがよく分からないから不安になるのですから、不安を和らげる方法は簡単です。
知ればいいのです。
道が分からなくて不安なら、地図を広げればいいのです。
カーナビで目的地設定のボタンを押せばいいのです。
先ほどの転勤でドキドキする私の例では、行く先の病院の評判や同僚の専門領域、どういう患者さんがよく入院しているかをあらかじめリサーチしておけばいいのです(こういう情報は病院のホームページを見ればすぐ分かります)。
知識は不安を和らげます。
私は兵庫県の出身で、初めてのデートはUSJでした。
不安でいっぱいだった私は書店で「よく分かるUSJ」的な本を買って、デートの前に熟読した思い出があります。
まあ私の場合、USJのことを知らないことからくる不安ではなくて、どうやらデートのことを知らないことからくる不安だったようで、その本はあまり役に立ちませんでしたが。
「よく分かる遊園地デート」という本であれば有効だったかもしれません。
余談でした。

私は小児科医として8年仕事をしています。
小児科専門医になったり、臨床研修指導医になったりして、肩書きだけは偉そうになっていきますが、この業界ではまだまだ若手です。
ですが、若いぶんだけまだ手垢にまみれてないかもしれません。
感受性が豊かかもしれません。小児科医にとっては常識だけど、お父さん・お母さんにとっては常識ではないことに気づけるかもしれません。
また前述した通り、私自身5歳の娘と1歳の息子の父親です。
子どもを育てる大変さ、子どもが病気になったときの不安は分かるつもりです。
お父さん・お母さんと共通する感性を持っているかもしれません。
私は小児科医の中でも、お父さん・お母さんにとても近い立場なのかな、と思っています。

お父さん・お母さんが子どもを育てる中で感じる不安を少しでも和らげてあげたい。
そのために、小児科のことをぜひ知ってもらいたい。
そして私は小児科の立場も、お父さん・お母さんの立場も分かる。
それでは、私が小児科のことを分かりやすく説明すれば、きっと上手くいくのではないだろうか。
お父さん・お母さんと小児科を結びつける手伝いがしたくて、このブログを立ち上げました。

次の記事で、小児科医とは何かについて、分かりやすく伝える方法を考えてみます。

小児科は何歳まで?プロフェッショナルな小児科専門医の共通点。

2017年3月3日

ABOUTこの記事をかいた人

小児科専門医、臨床研修指導医、日本周産期新生児医学会新生児蘇生法インストラクター、アメリカ心臓協会小児二次救命法インストラクター、神戸大学大学院医学研究科内科系講座小児科学分野に入局。現在、おかもと小児科・アレルギー科院長。専門はアレルギー疾患だが、新生児から思春期の心まで幅広く診療している。