今回は、アレルギー専門医になって初めてのアレルギーのお話。
アセトアミノフェンと喘息についてです。
「夜間急病センターで小児の外傷患者を診ました。喘息の投薬を受けているため、アレルギーの心配が少ない痛み止めを投与したいと考えています。先生のご意見をお聞かせください」
夜間急病センターという状況から、おそらく「喘息の既往を持つ子どもにアセトアミノフェンを使っていいのか」という話だと思います。
この質問は、非常に高度な類のものだと感じました。
というのも、喘息既往があっても、または喘息の急性増悪中であっても、発熱している子どもにアセトアミノフェンを差し控えるケースは基本的にないと思っていたからです。
普段意識しないところをあらためて問うという、鋭い質問に感じました。
今回は、喘息にアセトアミノフェンを使っていいのかについて書きます。
このページの目次です。
Acetaminophen use and asthma in children
実は、同様の質問が論文にあります。
全文無料で読めます。
Acetaminophen use and asthma in children(Can Fam Physician. 2017; 63: 211-213)
アセトアミノフェンは喘息発症のリスクとなるか
前半は、アセトアミノフェンによって喘息が発症するかどうかについて書かれています。
これは、今回の質問とは関連しませんが、併せて紹介します。
1歳になるまでにアセトアミノフェンを使用されると、喘息になりやすいか調査しています。
1歳までにアセトアミノフェンを使うと、喘息リスクが1.46倍になったとか、1.77倍になったとか、そういう論文を5つ紹介しています。
いっぽうで、リスク比は1.1倍程度であまり関連しないのではないかという論文も4つ紹介しています。
以上をまとめると、確かにいくつかの論文はアセトアミノフェンの使用が喘息発症の危険因子である可能性を示唆しています。
しかし、調査の方法に制限があります。
つまり、気道感染に伴う発熱に対してアセトアミノフェンは使用されますが、気道感染は喘息発症の交絡因子です。
したがって「大規模な比較試験が実施されるまで、現時点ではアセトアミノフェンを差し控えるべきではありません」と結論付けられています。
アセトアミノフェンは喘息の急性増悪のリスクとなるか
では、論文の後半を読んでいきましょう。
今回の質問である、「喘息の既往を持つ子どもにアセトアミノフェンを使っていいのか」について議論されています。
最初に、アセトアミノフェンとイブプロフェンとで比較する論文を紹介しています。
46週間フォローしましたが、急性増悪の数は同じでした。
気管支拡張薬吸入の頻度や、喘息に対する予定外受診の回数なども有意な差はありませんでした。
ちなみに、この論文はすでにほむほむ先生が紹介くださっています。
https://pediatric-allergy.com/2016/08/25/post-195/
また、イスラエルの論文で、アセトアミノフェン摂取60分後に呼吸機能に変化があるのか調べましたが、変化はありませんでした。
以上から、「喘息の既往を持つ子どもにアセトアミノフェンを使っていいのか」については、使っていいという答えになります。
アスピリン喘息について
最後に、アスピリン喘息の問題に対して触れておきます。
今回紹介した論文には、アスピリン喘息については記載されていません。
アセトアミノフェンは添付文書上「アスピリン喘息(非ステロイド性消炎鎮痛剤による喘息発 作の誘発)又はその既往歴のある患者」は禁忌です。
ただし、小児のアスピリン喘息は少ないので、その既往がなければ投与は問題ないと考えます。
結論
喘息を持つ小児に対して、アセトアミノフェンを差し控える必要はありません。