ロタウイルスは3月から5月くらいに流行します。
5歳未満の子どもにおいて、年間1億1100万例以上の下痢を起こします。
嘔吐から脱水になって、年間約50万人の子どもが亡くなっているとネルソン小児科学には書かれています。
過去に書いたロタウイルスについての記事は、こちらです。
ロタウイルスを予防する有効な方法がワクチンです。
ロタリックスが2011年11月に、ロタテックが2012年7月に発売され、約5年経ちました。
第一三共のMRさんの話では、ロタウイルスワクチンの接種率は50-60%です。
接種する人はずいぶん増えましたが、まだ足りないという印象です。
接種率を低下させる原因は2つあります。
- ロタウイルスワクチンは非常に高価。
- 副作用として腸重積。
ロタウイルスワクチンは合計で28000~30000円くらいかかってしまいます。
腸重積は見逃されると腸穿孔を起こして致死的な経過をたどります。
「ロタウイルスワクチンって本当にしたほうがいいの?」と思われるお母さんは多いのではないでしょうか。
2017年1月23日に「ロタウイルスワクチンを勧める際に知っておきたい有効性と安全性」という演題で、川崎医科大学の尾内先生の講演がありましたので、拝聴いたしました。
講演を聞いて、「なるほど、ロタウイルスワクチンは勧める価値のある薬だ」と思いましたので、そのポイントをここに書きます。
このページの目次です。
ロタウイルスは伝染力が高い
同じ胃腸炎として有名なノロウイルスがあります。
ノロウイルスは1人の患者さんに感染すると、3から4人に伝染するそうです。
一方、ロタウイルスは1人の患者さんに感染すると、28から100人以上に伝染するようです。
ロタウイルスが保育園などで猛威を振るうのは、この伝染力の高さが原因なのでしょう。
衛生環境が比較的整っている日本においても、5歳までにすべての子どもがロタウイルスに感染するとされます。
そして、年間37~80万人が外来を受診します。
年間26000~78000人が入院します。
そして、年間5人未満ですが、死亡する子どももいます。
ロタウイルスは伝染力が高く、手洗いだけでは防ぎきれません。
ロタウイルスによる脳症は予後が悪い
脳症を起こす原因として有名なのはインフルエンザです。
脳症の原因の25%がインフルエンザだと言われています。
いっぽう、ロタウイルスが原因となる脳症は、脳症全体の4%です。
割合はすごく小さいのですが、予後が悪いという性質があります。
インフルエンザ脳症はステロイドパルスやガンマグロブリン治療によって後遺症なく治るケースも多いですが、ロタウイルス脳症はなんらかの後遺症を残したり、死亡したりする割合が多いようです。
高い有効率
ロタウイルスワクチンは高い有効率を持っています。
先進国では90%以上で有効だったとのことです。
インフルエンザワクチンの有効率が33%と報告されていますので、ロタウイルスワクチンはとても高い有効率だといえるでしょう。
接種率が6割を超えると流行を抑えられる
オーストリアでは2007年からロタウイルスワクチンの定期接種が始まっており、8割以上の子どもがロタウイルスワクチンを接種しています。
その結果、オーストリアではロタウイルスの流行が抑えられています。
日本での接種率は5-6割です。
ロタウイルス患者は減ってはいますが、まだ流行を抑えられているという状況ではありません。
それでも、旭川厚生病院小児科は、予防接種が始まった2012年までのロタウイルス腸炎の子どもの数は、2011年までと比べて46%減少したと報告しています。
また、気仙沼市は2012年からロタウイルスワクチンを無料で接種できるようにし、ロタウイルス腸炎の子どもは82%減少しました。
もう少し接種率が上がると、日本全体でもロタウイルスは流行しなくなるかもしれません。
WHOも勧めている
2013年に世界保健機関(WHO)は、すべての国の定期接種プログラムにロタウイルスワクチンが導入されるべきであると報告しており、すでに世界130ヵ国以上の国々で承認され 、その有効性が示されています。
そして、2017年2月時点で、81か国以上が定期接種、すなわち無料でロタウイルスワクチンを接種できます。
日本も、早く定期接種化することを私は望みます。
(費用と、腸重積のリスクの面で、2017年2月現在、定期接種化の方向性は定まっていません)
腸重積の副作用は10万人に1人
生後15週以降に接種すると、接種後7日以内の腸重積が増えます。
といっても、腸重積の発症は10万人1人程度ととても低いです。
発症しても12時間以内に高圧浣腸をすれば98%が手術しないで治ります。
腸重積の症状は不機嫌、ぐったり、嘔吐、血便です。
ロタウイルスワクチンを受けて1週間以内は、この症状に注意です。
まとめ
以前の記事で、私はロタウイルスワクチンをこのような場合に勧めていました。
- 共働きである。
- きょうだいがいる。
- 2歳までに保育園に入れる予定がある。
- 子どもにとってのおじいちゃん・おばあちゃんの家が遠くて、万が一子どもが入院になったときにサポートが得にくい。
どれかが当てはまるときは、接種を勧めていました。
しかし、高い有効性と安全性を知りましたので、もう少し積極的にロタウイルスワクチンを接種していきたいと思います。
一人がロタウイルスにかかってしまうと、周りのお友達にもうつしてしまいますから。
みんなが接種して、みんなで守る。
集団接種効果で、自分の子どもも、周りの子どももみんなハッピーになれることを望みます。