シミュレーション教育にはリアリティが必要です。
これについては、以前こんな記事を書きました。
上記の記事では、受講生がある程度慣れてきたら、リアリティの高いシミュレーションを行ったほうが、現場で実践できる知識・技術を習得しやすいのではないかと書きました。
今回は、新生児蘇生講習会で臨場感を高めるデバイスを体験しましたので、その感想を書きます。
このページの目次です。
心音が聞こえる新生児人形
今回ご紹介するのは、こちら!
と、なんだか通信販売のようなフレーズで始まってしまいました。
この人形は、タブレットと連動しています。
遠隔操作で心音、呼吸音、泣き声を再現することができます。
人形に聴診器を当てると、心臓の鼓動する音が聞こえてくるんです。
どんなものなのか、さっそく試してみたくなります。
試してみた
というわけで、さっそく試してみました。
聴診器で心音を聞いてみると、トン、トン、トンと音が聞こえます。
聴診器を当てている人にしか、この音は聞こえません。
現場でも、赤ちゃんの心拍数が分かるのは、聴診器を持っている人だけです。
赤ちゃんの蘇生は2-3人のスタッフで対応しますが、聴診器を持つのは1人だけです。
この「聴診器を持っているスタッフだけに心音が分かる」という状況は、本当に現場の臨場感を味わえます。
「心拍数は80です!」と宣言する声が、シミュレーションでも緊張して震えてしまいそうです。
タブレットは遠隔操作に使うだけではなく、簡易のモニターにもなります。
ただ、このモニターはかなり簡易です。
心電図モニターは静止画です。
SpO2も5-10%きざみです(後述します)。
SpO2はトレンドが大事であることは、新生児蘇生法講習会の講義でも強調されています。
SpO2 80%であっても、76,77,78,79,80……と増えているのか、84,83,82,81,80……と減っているのかで解釈が変わります。
5%刻みだと、トレンドを表現するのが難しいと感じました。
タブレットです。
このタブレット1枚で遠隔操作とモニター表示とを両方行います。
前述した通り、表示できるSpO2が雑です。
SpO2 0%とか20%とか30%とか40%とか要らないんですよ。
(50%も使わないと思います)
それよりも、SpO2 60-80%の10%刻みをもう少し細かく設定できてほしかったです。
(理想を言えば、1%刻みで表示できるカーソルキーが欲しいです)
また、両者を1枚のタブレットで行うのは無理があります。
表示モニターは別に用意してもらって、モニターも遠隔操作できたほうがいいと感じました。
電池は単3が4本です。
丸見えの基盤がゲームボーイ世代にはたまりませんね。
(昔、ゲームボーイブロス・スケルトンという、透明のプラスティックで作られ基盤が透けて見えるゲーム機があったんです)
まとめ
心音が聞こえる新生児蘇生人形を試してみました。
利点
- 聴診器を持った人間にしか心音が分からない状況は、現場の臨場感・緊張感を大きく上げる。
惜しい点
- タブレットのモニター表示が簡素すぎる。
- 特にSpO2 60-80%が10%刻みでしか表示できないのがつらい。
- モニター表示用のタブレットがもう一つ欲しい。
- 高い(あえて正確な値段を書きませんが、30万円以上はします)。