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マイコプラズマ肺炎の症例提示
7歳のだいき君は小学校の2年生です。
3年前に肺炎で入院したことがありますが、すぐに元気になりました。
もうすぐサッカーの試合があるので、だいき君はそれに出場するのを楽しみにしています。
しつこい咳
ある朝、起きてきただいき君は咳をしています。
咳といっても、まだ軽い咳です。
鼻水はありません。
だいき君のお母さんは、そう思っただけでした。
熱もなく、元気そうだったので、だいき君は学校に行きました。
夕方帰ってきただいき君。
相変わらず咳が強いです。
そして、少ししんどそうな顔をしています。
熱を測ってみると38.0℃でした。
だいき君とお母さんは、近くの小児科に行きました。
最初の受診
小児科の先生を聴診器で胸の音を聞き、口の中を丁寧に診ました。
そう言うと、先生はアスベリン(咳止めの薬)と、ホクナリンテープ(気道を拡張して咳をしずめる薬)を処方しました。
お母さんは、3年前にだいき君が入院した時のことを思い出しました。
あのときも最初は「かぜ」と言われて、なかなか治らず、肺炎になりました。
お母さんは素直に自分の気持ちを先生に伝えました。
先生はそう言って、メイアクトという抗生剤を処方してくれました。
初日の夜
アスベリンとメイアクトを飲ませて、ホクナリンテープを胸に貼って、だいき君は寝ました。
しかし、夜の間ずっと、だいき君は強い咳をしていました。
咳が強くて何度も起きているようです。
咳は朝方まで続きました。
翌日の受診
咳が出て2日目です。
だいき君の熱は38.3℃です。
相変わらず強い咳をしていますが、比較的食欲はあり、水分は摂れます。
あまりに咳が強いので、お母さんは心配です。
小児科の先生には「2日後に」と言われていましたが、今日も受診することにしました。
受診すると、小児科の先生は胸の音を聴診しました。
レントゲンで肺炎像を指摘
レントゲンを撮ると、だいき君の右の肺の下の方が白くなっていました。
先生はそう言うと、白い綿棒でだいき君ののどを綿棒でこすって、検査に出しました。
マイコプラズマ抗原陽性
20分ほどして、検査結果が出ました。
先生の言葉に、お母さんは「診断が分かってよかった」という気持ちと「肺炎だなんて大丈夫なんだろうか、入院したほうがいいのではないか」という不安が入り混じりました。
マイコプラズマ肺炎の治療
先生の説明に、お母さんは不安になりました。
50%の確率で効かない薬を飲まされるなんて。
100%効くお薬を出して欲しい。
そう言った後、先生は優しくこう続けました。
先生の説明に、お母さんはようやく安心できました。
マクロライドのお薬として、クラリスという名前の薬をもらいました。
先生は薬の飲み方についてもアドバイスしてくれました。
薬の味や飲ませ方についてはこの記事も参考になります。
その後
クラリスを内服しただいき君。
意外と薬はそのまま飲めたので、アイスと混ぜなくても大丈夫でした。
クラリスを飲んで48時間たった頃、だいき君の熱はすっかり下がりました。
まだ咳は続いていますが、最初の頃よりも頻度は減っています。
解熱してから小児科を受診しました。
先生と相談し、お母さんはレントゲンを撮らないことに決めました。
お母さんは頷きました。
だいき君も嬉しそうです。
症例のまとめ
- しつこい咳と発熱で発症した7歳の子どもである。
- 胸の音はきれいである。
- 一般的な抗生剤はマイコプラズマには効かない。
- 第一選択はマクロライド(クラリスやジスロマックのこと)。ただし耐性菌が増えており、日本では50%で効かない。
- マクロライドが効かない時は、オゼックスかミノマイシンに切り替える。
補足
この症例ではレントゲンを撮って肺炎と診断していますが、レントゲンは必須ではありません。
しつこい咳と年齢だけでマイコプラズマを疑うことができます。
マイコプラズマの抗原検査も必須ではありません。
この検査は「感度」という病気をひっかけられる確率が低く、あまり有効ではないと考える先生もいます。
疑わしいときはマクロライドを投与するという考え方と、これ以上マクロライド耐性マイコプラズマを増やさないためにもしっかり診断してからマクロライドを開始するという考え方の2通りがあります。