アレルギー専門医試験を振り返る:⑤免疫に関する知識。

2020年のアレルギー専門医試験を振り返るコーナー。
第5回にして、ついに最終回です。

今回は、免疫に関する知識ついてです。

副腎皮質ホルモン

  • 生理的な副腎ホルモン産生量はプレドニゾロン(PSL)3-5mg相当。
  • PSL 5mgとメチルプレドニゾロン4mgは同等の力価。
  • PSL 5mg/m2/dayで成長障害をきたす。
  • PSL 5mg内服で副腎皮質抑制が生じる。外用なら成人Ⅲ群20g毎日使用で副腎皮質抑制が生じる。
  • PSL 15mg/day 3週間以上で、中止後6か月も副腎皮質抑制が生じる。ACTHも下がる。
  • ステロイド離脱時期ではACTH上昇がコルチゾール上昇に先立つ。
  • 原発性副腎皮質機能低下(アジソン病)と続発性副腎皮質機能低下(下垂体性)、視床下部性副腎皮質機能低下を見分けるには、迅速ACTH負荷試験が有用。副腎皮質予備機能が評価できる。ACTH検査ではただちに氷水冷却する。
  • CRF負荷試験でACTHが上がる場合、原発性か視床下部性。続発性副腎皮質機能低下(下垂体性)ではCRFで反応低値を示す。
  • 副腎皮質機能低下では尿中遊離コルチゾール25μg/day未満に下がる。
  • コルチゾールは副腎皮質束状層で合成される(球状層からアルドステロン、網状層からアンドロゲン)。
  • デキサメサゾンはコルチゾール測定キットと交差しない。ヒドロコルチゾンは交差する(PSL投与すると見かけ上コルチゾール高値になる)。
  • コルチゾールは拍動分泌するが、ACTHは拍動分泌しない。
  • コルチゾールのサーカディアンリズムは新生児期にもある。
  • ACTHは朝高く、夜低い。
  • デキサメタゾン抑制試験:クッシング症候群が疑われる場合に行う試験。デキサメタゾン服用後、血中コルチゾール濃度を翌日に測定する。通常、デキサメタゾンを服用することで、下垂体副腎皮質刺激ホルモンの量が減少し、副腎で作り出されるコルチゾールの量が減少する。この値が上昇した場合には、クッシング症候群が疑われる。
  • 尿中17-KGSはコルチゾールの分泌状態と相関する。

腸管免疫

  • パイエル板:小腸粘膜の絨毛のない箇所。回腸に多い。
  • M細胞:パイエル板の一部。M細胞は腸管内腔側からエンドサイトーシスによって腸管内腔の細菌などの抗原を取り込み、円柱上皮直下の基底膜側で接触している樹状細胞に提示することによって、パイエル板のT細胞に抗原情報を伝達する。パイエル版の胚中心にはB細胞が分布している(リンパ節の胚中心もB細胞)。
  • 樹状細胞は樹状突起を腸管腔側に伸長し、抗原を取り込む。

母乳

  • 母乳にはオリゴ糖が含まれる。3-4糖類、虫歯になりにくい。
  • 初乳中にはマクロファージ、多形核白血球、リンパ球、TGF-βなどのサイトカイン(TGF-β2のほうがβ1より多い)、ケモカイン、IgAが含まれる。
  • 成乳より初乳のほうがIgA多い。
  • 成乳にはIgMも含まれる。(IgGは含まれない)
  • 母体が卵1個摂取すると、5-6時間後に母乳に1µg/mL程度のオボアルブミンが検出される。
  • 母乳にも乳糖が含まれる。牛乳より多い。

ワクチン

  • 2017年12月に米国アレルギー・喘息・免疫学会(ACAAI)より、卵アレルギーのある人でもインフルエンザワクチンの接種は安全であるとする診療指針が出された。ただし、卵アレルギーはインフルエンザワクチンの要注意者ではある。
  • ゼラチン含有ワクチンは近年減少した。(生ポリオくらい)
  • ワクチンアナフィラキシーの原因としてのゼラチンもほとんどない。
  • MRワクチンには卵白成分は含まれていない!(鶏の胚細胞を使っているだけ)
  • ステロイド外用はBCGに問題ない。
  • 水痘ワクチンは50歳以上の帯状疱疹予防に適応あり。
  • グロブリン後の生ワクチンは6か月以上空ける。ただし、ロタウイルスワクチンとBCGは除く。
  • ワクチンの成分に対してアナフィラキシーを起こしたことが明らかであるものは接種不適当者である。(アレルギーを起こす恐れがある程度では接種できる)
  • PSL 1mg/kg/dayであれば生ワクチン接種OK。PSL 2mg/kg以上を連日または隔日で14日以上服用している場合は接種できない。

アレルギー専門医試験を振り返るシリーズ一覧

アレルギー専門医試験を振り返る:①アトピー性皮膚炎。

2020年2月4日

アレルギー専門医試験を振り返る:②食物アレルギー。

2020年2月5日

アレルギー専門医試験を振り返る:③気管支喘息。

2020年2月6日

アレルギー専門医試験を振り返る:④アレルギー性鼻炎。

2020年2月7日

アレルギー専門医試験を振り返る:⑤免疫に関する知識。

2020年2月10日

ABOUTこの記事をかいた人

小児科専門医、臨床研修指導医、日本周産期新生児医学会新生児蘇生法インストラクター、アメリカ心臓協会小児二次救命法インストラクター、神戸大学大学院医学研究科内科系講座小児科学分野に入局。現在、おかもと小児科・アレルギー科院長。専門はアレルギー疾患だが、新生児から思春期の心まで幅広く診療している。