2020年のアレルギー専門医試験を振り返るコーナー。
第3回は気管支喘息についてです。
このページの目次です。
気管支喘息の疫学
- 食物抗原の感作後に、吸入抗原に感作されることが多い。気管支喘息の期間有症率は小児の方が多い。
- 学童期では男子が多い。
- 成人以降は女性が多い。つまり成人移行例は女児のほうが多い。
- 有症率に地域差がある。
- 米国での出生コホート研究では、6歳未満の乳幼児期に喘鳴の既往のある群の60%は6歳の時点で喘鳴がなくなっている。6歳の時点で喘息と診断されている群では、22歳の時点での喘息有病率は57〜72%と高率である。つまり小児喘息寛解率はおよそ50%程度である。
- 寛解とは、無投薬で症状がない状態を指す。
- 小児喘息は過去30年で1%から5%に罹患率が増えている。ISAAC調査用紙では6-7歳の有症率は10%以上(2003年では18.2%)。13-14歳での有症率も10%以上である。2015年からは低下傾向。
- 入院患者数は2011年から横ばい。
- 入院例の半分以上が1-4歳である。
- 喘息発症は2-3歳がピーク。
- 近年、喘息発症時期の低年齢化がみられている。
- 小児喘息発作の原因ウイルス最多はライノウイルス。
- 好酸球性副鼻腔炎(手術しても鼻茸を繰り返す難治疾患)の合併は成人に多い。
- 好酸球性多発血管炎性肉芽腫症(チャーグストラウス)は40-50歳に多い。喘息+好酸球20%以上+好酸球肺炎or多発神経炎。
- 小児気管支喘息の50%は乳児期にアトピー性皮膚炎が先行し、50%はアレルギー性鼻炎を合併し、20~30%に食物アレルギーの既往歴がある。アレルギー性鼻炎の合併は成人よりも多い。
小児気管支喘息の急性増悪
- 小発作でもair leakは発症しうる。
- 乳幼児期は発作時に無気肺を合併しやすい。
- メチルプレドニゾロン(もしくはプレドニゾロン)0.5-1mg/kgをゆっくり静注。
- ヒドロコルチゾンでは5mg/kg。
- テオフィリンは大発作や呼吸不全で使用していいが、2歳未満では控える。血中濃度が正常でもけいれんを誘発することがある。初回投与量は4-5mg/kgで維持量が0.6-0.8mg/kg/h。
- ツロブテロールテープは効果発現に4-6時間かかり、急性期に即効性はない。
- イソプロテレノール30分で効果がないときは増量または人工呼吸管理を。イソプロテレノールが効くと、心拍数は低下していく。
- イソプロテレノールは生食500mlに対しdlイソプレナリン塩酸塩(アスプール)を2-5ml混ぜる。症状に応じて倍にして良い。
- イソプロテレノールの副作用は低K血症。
- β2は30分おきに3回まで吸入。
小児気管支喘息の長期コントロール
- テオフィリン徐放剤は6歳以上のステップ3、4で使える。
- β2刺激薬貼付はコントロールとしては適切ではない。
- アレルゲン同定のための検査は重要。
- C-ACTは4-11歳の喘息調査であり、学童期に有用。
- 間欠:年数回、軽症持続:月1-3回、中等症持続:週1-3回、時に睡眠が障害される、重症持続:ほぼ毎日、中・大発作を毎週
- ステップ3で毎週発作は「重症持続型」。
- ブデソニド(パルミコート)タービュヘイラ―には乳糖が入っていない。他のDPIは基本入っている。
- ベクロメタゾン(キュバール)は粒子径が小さい。
- 妊娠中でも吸入ステロイド薬は安全に使える.
- 乳児では吸入ステロイド後、飲水させる。
- ステップ4の吸入ステロイドは身長を1.6cm低下させる可能性がある。
気管支喘息に対する精神療法
- 各種自律神経訓練法、ヨガ等の効果は認められている。
- 認知行動療法による介入で治療薬の減量が得られる場合もある。
- ストレスは発症因子ではなく増悪因子である。しかし成人では発症因子となり得る。
- パニック障害は予定外受診の頻度を増やすが、パニック障害の重症度と喘息の重症度は無関係である。
- 抑うつ症状があると入院回数の頻度が増える。またステロイド依存性重症喘息患者では抑うつの有病率が高い。
- Alexithymia(自らの感情を自覚・認知したり表現することが不得意で、空想力・想像力に欠ける傾向)と気管支喘息は相関がある。
- 母体の心理社会的ストレスは子どもの喘息発症に関与する。
呼吸機能検査
- 一秒量(FEV1):努力して吐き出した空気のうち、最初の1秒間に吐き出された空気量。
- %一秒量(%FEV1):身長年齢性別からの予測値に対する一秒量の割合。正常値(コントール良好)は80%以上。
- 一秒率(FEV1%):FVC(努力肺活量)に対する一秒量の割合。
- %一秒量より一秒率のほうが重症度を反映する。1秒率が低下すると残気量は増える。
- 一秒率または%1秒量が80%以上でコントロール良好。β2刺激への反応性は12%未満が正常。
- ピークフローは日内変動20%未満がコントロール良好。
- ピークフローは3回吹いた最高値をとる。
- V50やV25は努力非依存性。(PEFは努力依存性)
- 気道炎症や気道過敏性は呼気NO、喀痰好酸球で測定でき、喘息の重症度と相関する。
- 気道過敏が高いと寛解しにくい。気道過敏性が正常化すると寛解は維持されやすい。
- 気道過敏性試験はメタコリン吸入または運動負荷。標準法では、徐々にメタコリン濃度を上げ、%FEV1が20%低下する濃度を指標とする(PEFでは代用できない!)。β2刺激薬やLTRA、抗ヒスタミン薬は休薬する。
- 運動負荷試験では運動後5分おきに30分まで%FEV1またはPEFをみる(もっとも重要なのは負荷後5分!)。15%以上低下すれば運動誘発性喘息。
- 強制オシレーション(モストグラフ)は気道過敏性試験ではない(スパイロメトリーやピークフローと同じ呼吸機能検査である)。
声帯機能不全
- 喘鳴・呼吸困難が夜間より日中に多い。
- 心因性因子が存在することがある。
- 喘鳴が呼気より吸気で強い。
- スパイログラムが正常あるいは上気道閉塞パターンが特徴。気管支喘息の合併も多い。
- 確定診断には喉頭ファイバーで喘鳴・呼吸困難時に声帯の閉鎖・内転を観察する必要。吸気時に声帯が内転する。
アスピリン喘息
- NSAIDs過敏が不明の場合は選択的COX-2阻害薬を用いる。
- アスピリン喘息は小児では稀である。
- リン酸エステルはOK。コハク酸エステルは避ける。
- パラベン(防腐剤。パラオキシ安息香酸エステル)に注意。
- 塩基性NSAIDsはOK。酸性は禁忌。
- 発症機序は非アレルギー性である。
過敏性肺炎
- 血液検査:急性型では、白血球増多(好酸球は増えない!)、CRP上昇、LDH上昇など。間質性肺炎マーカーであるKL-6、SP-Dが高値を示す。抗原に対する特異的IgG抗体が陽性となる。
- 呼吸機能検査:拘束性障害と拡散障害を認める。
- 画像検査:急性型では、胸部X線では中下肺野を主体とする均一で辺縁が不明瞭なびまん性散布性粒状陰影を呈することが多い。
- BAL所見ではTリンパ球の増加を認める(好酸球は増えない!)。
- ツベルクリン反応が陰性化する。
- 夏型過敏性肺炎:Trichosporon cutaneum、Trichosporon asahii、Trichosporon mucoidesが原因。
好酸球性肺炎
- 第一選択はステロイド。
- BALの好酸球で診断。
- 急性好酸球性肺炎は喫煙が原因であることが多い。20-40歳の男性に多い。
- 慢性好酸球性肺炎は喫煙と関係ない。40-50歳の女性に多い。半数が喘息を合併する。
- 急性→慢性とはならない。