兵庫県の小児重症喘息ネットワークとゾレア症例の共有。

2019年3月13日、兵庫県の重症喘息ネットワークでゾレアの情報交換を行いました。
兵庫県立柏原病院も小児科医5人と医学生1人が参加しました。

今回は、小児重症喘息ネットワーク講演会で学んだことを備忘録として残します。

ゾレアの特徴:喘息コントロールの注射薬

ゾレア(オマリズマブ)は喘息のコントロールに使われる薬です。
すべての喘息で使えるわけではなく、6歳以上、体重20kg以上で、IgEの関与が確定していて、さらに吸入ステロイドを主体とした治療では発作を予防できないような重症の喘息に対してのみ使用されます。

ゾレアは注射薬です。
月に1回または2回注射します。
そのため、ステロイド吸入やLTRA(キプレスやシングレア、オノンなど)内服のように自宅で行う治療ではなく、通院して注射を受けます。
もちろんゾレアだけ注射していればOKというわけではなく、吸入薬や飲み薬の併用もします。

生物学的製剤であり、ゾレアは非常に高価です。
仮にIgE 1000IU/mL、体重30kgであれば、300mgを月に2回注射します。
体重が50kgであれば、450mgを月に2回注射します。
ゾレアは150mgが45000円ですから、後者の例では薬代だけでも月に27万円の治療になります。(もちろん保険適用があるので、負担額は下がります)

IgE1500IU/mL以上の場合どうするか

ゾレアはIgEの関与が確定している喘息にしか使えませんが、逆にIgEが高すぎるケースでは投与できません。
体重にもよりますが、基本的にIgE1500IU/mL以上では使えません。

講演会の印象では、どの施設も適応は厳格に守っているようでした。

アトピー性皮膚炎やアレルギー性鼻炎を合併しているケースでは、スキンケアや鼻炎コントロールをしっかり行うことでIgEが下がり、IgE1500IU/mL未満になったところでゾレアを使用するという意見もありました。

いつまでゾレアを使うか

喘息コントロールにおける治療ステップは、私は3か月から6か月コントロール良好であればステップダウンを考慮していました。
ゾレアもそのように使うのかな、思っていましたが、今回の講演会の印象では2年以上や、3-5年が目途という意見も聞かれました。
中止にあたっては、少なくても1年はコントロール良好であるべきであり、食物アレルギーやアトピー性皮膚炎を合併しているケースや、ゾレア投与前の呼吸機能が悪い児では中止に慎重となるべきだという意見もありました。

費用の面から、高校生以上になると負担額が増える自治体も多く、中学3年生まで続けるという意見もありました。

また、中止の前に、ダニやスギのアレルゲン免疫療法を導入しておくというアイディアもありました。

アレルゲン免疫療法についてはこちらに書きました。
舌下免疫療法は安全性が高く、鼻炎と喘息の両方に有効です。

アジアにおける舌下免疫療法の有効性。

2019.01.17

ゾレア注射の痛みについて

ゾレアを注射薬ですので、痛みや腫れが生じることがあります。
冷やしてから注射する、注射後も冷やす、腫れに対してマイザーなどのステロイド軟膏を使う、エムラクリームなどの局所麻酔剤を使う、などのアイディアがありました。

エムラクリームは私も試してみたことがあります。
注射の痛みを全く感じなくなります。

エムラクリームの使い方。実際に効果を確かめてみた。

2017.04.28

ゾレアはコンプライアンスを上げるか

喘息コントロールにおいて、薬をさぼることなく毎日しっかり確実に吸入したり飲んだりするということはとても大切です。
ついつい吸入をさぼってしまうと、なかなか喘息発作を予防できません。
さぼらずにきっちりと薬を使うことを「コンプライアンスが高い」と医療業界ではいいます。

ゾレアを使って発作が出ないという生活を経験させることで、「薬を頑張れば、こんなに生活が楽になるんだ」と思ってもらうことで、コンプライアンスが高まるかもしれないという意見もありました。

個人的には月に1-2回でいい注射薬に頼ってしまうと、毎日しなければならない吸入を軽んじてしまわないか心配でした。
慢性疾患全体にも言えることですし、それこそ禁煙外来でも使う言葉ですが、「もし治療が上手く行ったら、どんな生活が待っているでしょうか」と良い未来の話を患者さんとすることで、モチベーションを高める方法がいいように思います。

まとめ

喘息だけではなく、じんましんやアレルギー性鼻炎、アトピー性皮膚炎の治療における生物学的製剤の役割は今後ますます高まっていくと思われます。
ゾレアはその生物学的製剤の代表であり、この使い方を共有することは大切です。

兵庫県の重症喘息ネットワークを構築してくださった先生方に感謝します。

 

ABOUTこの記事をかいた人

小児科専門医、臨床研修指導医、日本周産期新生児医学会新生児蘇生法インストラクター、アメリカ心臓協会小児二次救命法インストラクター、アメリカ心臓協会PEARSインストラクター。神戸大学大学院医学研究科内科系講座小児科学分野に入局。現在、兵庫県立柏原病院小児科医長。専門はアレルギー疾患だが、新生児から思春期の心まで幅広く診療している。