RSウイルス肺炎!軽い症状で済んだ生後11か月の症例。

注意事項:個人情報保護の観点から、この記事の症例提示は架空のものとなっております。ここに登場する患者の名前・年齢・性別・検査データ・臨床所見などは、科学的な矛盾が生じないように配慮されつつ、すべて架空のデータであることをご了承ください。

RSウイルスは2歳までにすべての子どもがかかると言われている感染症。
ほとんどの子どもは、感染しても軽い症状しか出ません。
今回は、一般的なRSウイルス肺炎の経過を提示します。

軽症RSウイルス肺炎の症例提示

はなちゃんは生後11か月の女の子です。
3歳のお兄ちゃんがいて、お兄ちゃんは保育園に通っています。

季節は12月。
寒い日が続きます。
お兄ちゃんは鼻水が出ていますが、元気です。
元気なので、特にお兄ちゃんは病院を受診していません。

鼻水と咳

ある夜、はなちゃんのいびきが大きいことにお母さんは気づきました。
どうやら鼻がつまっているようです。

そして、ときどき咳き込みます。
咳で起きることはありません。

お母さん
「そういえば、日中も鼻水が多かったなあ」

思い返すと、昼間のはなちゃんも鼻水がすごく多かったので、よくウェットティッシュで顔を拭いてあげてました。
おそらくお兄ちゃんのかぜがうつったのかな、とお母さんは思いました。

お母さん
「明日、念のために小児科に連れていこう。ついでにお兄ちゃんも診てもらおう」

はなちゃんのお母さんは、そんなことを考えながら眠りました。

小児科専門医からのワンポイント
RSウイルスの特徴は、とにかくひどい鼻水です。また冬に流行します。10月から3月はRSウイルスが蔓延しやすいです。

 

小児科を受診

翌朝、お母さんははなちゃんとお兄ちゃんを連れて小児科へ行きました。

先生はまずお兄ちゃんを診察しました。

小児科専門医
「のども赤くないし、胸の音もきれいです。元気そうですね。鼻水は多いようですが、鼻水の色は悪くありませんし、これならお薬はいらないでしょう。普段通りの生活をこころがけてください」
小児科専門医からのワンポイント
きょうだいで受診したとき、小児科医はまず年長のお子さんから診ることが多いです。
理由はいろいろありますが、まず年長のお子さんのほうが所見が取りやすいので診断がつきやすいというのがあります。年長だと「頭が痛い」とか「お腹が痛い」とか症状をしっかり言えることがあるからです。そして年長の子どもの診断がつけば、年少の子どももおそらく同じ病気でしょうから、診断のヒントになります。
また別の理由として、年少の子どもは診察すると泣いてしまうことが多いです。そして年少の子どもが診察時に泣いてしまうと、年長の子どもは緊張してしまって、そちらの所見が取りにくくなります。
もちろん、重症なほうを先に診たりすることもあるので、いつでも必ず年長からというわけではありません。

 

続いて、はなちゃんが診察されました。

小児科専門医
熱が38.0℃あります。少しだけ、胸にごろごろとした雑音が聞こえますね。咳も痰がからんだような湿った咳をしています。気管支炎か、または肺炎になっているかもしれません。体の酸素を測る機械をつけてみます。それと、RSウイルスの検査をしましょう」

肺炎かもしれないと聞いて、はなちゃんのお母さんは心配になりました。
お母さんの表情を察知したようで、小児科の先生はこう付け加えました。

小児科専門医
「大丈夫ですよ、お母さん。たとえ肺炎であっても、はなちゃんの呼吸はそれほど苦しそうではありません。表情もいいですし、今の時点では危険な状況というわけではありません」
小児科専門医からのワンポイント
呼吸が苦しいかどうか、小児科医は胸の動き方で判断します。胸が陥没するような動きをしていないか、肩を動かして呼吸していないか、呼吸の数ははやくないか、呻くような音がしていないかで判断しています。また、顔色や表情も参考になります。

 

はなちゃんの指にパルスオキシメータという装置が巻かれました。
10秒ほどすると、モニターに数値が現れます。
SpO2 98%、HR 110という数値でした。

小児科専門医からのワンポイント
SpO2というのは、体の酸素の量と思ってもらって大丈夫です。94%以上あれば心配ありません。93%以下は酸素化が悪い状態で、90%未満になる場合は酸素不足でからだがかなりしんどい状態です。

 

小児科専門医
「からだの酸素は大丈夫そうですね。次に、RSウイルスの検査をします」

先生は綿棒ではなちゃんの鼻水をとって、検査に出しました。

RSウイルス陽性

20分ほど待つと、検査結果が出ました。

小児科専門医
「RSウイルス陽性です。おそらくRSウイルス肺炎でしょう。ですが、はなちゃんはまだ軽い肺炎です。このあと鼻水を吸って、お薬を出します。ピークを超えるまでは毎日きてください」

先生の言葉に、お母さんは安心したような不安になったような、複雑な気持ちになりました。

お母さん
「あの、肺炎なんですよね? 入院とかしなくても大丈夫なんでしょうか?」
小児科専門医
RSウイルス肺炎の治療は、部屋をしっかり加湿することと、鼻水をしっかり吸ってあげることです。これが家でもできるのであれば、入院する必要はありません」
お母さん
「分かりました!」

お母さんは頷きました。
鼻水を吸う器械は、以前薬局で1000円くらいの口で吸うものを買ったことがあります。
部屋の過湿もなんとかなりそうです。

小児科専門医
「鼻水の吸い方は、鼻水吸引ドットコムというホームページを参考にしてください。RSウイルス肺炎のピークは4~5日です。そのあいだ毎日診察させてください。もし重症化してきたときは、入院するかどうか相談しましょう」

家で気をつけること

小児科専門医
「呼吸が苦しそうなときは体を起こすように抱っこしてあげてください。それですぐに治まるようであればよいですが、ゼイゼイヒューヒューの音が強くて息苦しさがなかなかおさまらないときはすぐに受診させてください

先生の具体的な指示のおかげで、お母さんの不安はいくぶんか和らぎました。

その後はなちゃんは、病院で鼻水を吸ってもらい、ムコダインという去痰薬をもらって帰りました。

その後

家ではしっかり加湿し、鼻水も朝昼夜の1日3回を目安に吸うようにしました。
また毎日小児科を受診し、肺炎が重症化していないかチェックしてもらいました。

幸いにもはなちゃんはあまりしんどくはならず、4日ほどすると熱も下がり、胸の音もきれいになりました。
鼻水はまだ多いですが、いつも通り元気です。

小児科の先生からは、もう診察はしなくても大丈夫そうだと言われました。
ムコダインはあと7日続けると、中耳炎や副鼻腔炎を予防できるということで処方されました。

症例のまとめ

  • 冬に鼻水と咳、熱が出た生後11か月女児。
  • 聴診とRSウイルス検査の結果で、RSウイルス肺炎と診断された。
  • 症状は軽く、加湿と鼻汁吸引、去痰薬の内服で4日で治った。

追記

はなちゃんは、3歳のお兄ちゃんからRSウイルスをうつされたと思います。

お兄ちゃんはRSウイルスの検査をされませんでした。
RSウイルスは検査して診断がついても、特別な治療法がありませんので、あまり検査する意味がないものです。
そもそも、1歳以上で入院の必要がない子どもにおいて、RSウイルス検査は保健適応外となっていますので、検査することができません。
こういう理由で、お兄ちゃんはRSウイルス検査をしませんでした。

また、はなちゃんは今回、レントゲン検査を受けずにRSウイルス肺炎と診断されています。
レントゲンを撮らないと、気管支炎か肺炎かはなかなか分かりません。
ですので、もしレントゲンを撮っていれば、意外と肺はきれいで、本当の診断はRSウイルス気管支炎だったということもありえます。
ただ、RSウイルス気管支炎であっても、RSウイルス肺炎であっても、すべき処置も気をつけることも変わりません。
このため、今回はなちゃんはあえてレントゲンを撮りませんでした。

「検査してほしい!」と強く願う親の気持ちは、私も親なので分かります。
ただ、レントゲン検査は被爆を伴いますし、採血は痛いです。
必要がない検査はやらないのが正解だと私は考えます。