「診療所」の工務店・ハウスメーカー選びは「間取り・見積もり・外構工事」

開業を考えるきっかけはなんでしょうか。

自由で効率的な診療を目指したいから?
地域医療に貢献したいから?
当直に疲れたから?
今の給与に不満があるから?

きっかけはいくつもあり、どれか1つということもないでしょう。

ですが、開業しようと思ったときに、最初に悩む点はおそらく1つです。

「どこで、どの規模の、どのような診療所を開くのか」

立地・資金・建築会社選びからスタートするはずです。
逆に言えば、これらが決まらないと勤務医を続けるしかないと思います。

今回は、建築会社選びについて書きます。

一般的な開業ポイント

勤務医から開業医になるとき、何がポイントなるでしょうか。

  • 立地(勤務していた病院の近く、競合が少ない地域、地元などが候補)
  • 資金(融資・自己資金、どの規模の診療所を目指すのか、新規か承継か)
  • 工務店・ハウスメーカー選び
  • 診療器材(X線装置、エコー、院内血液検査)
  • 電子カルテ
  • 予約システム
  • 問診システム
  • 会計システム(自動精算機、クレジットカード)
  • オンライン診療
  • スタッフ
  • 診療日・診療時間

ざっと思いつくだけでもこんな感じです。

立地・資金・建築会社選びは最初に選ぶべきポイントになると思います。
私の場合、どうであったかを書きます。

立地・資金

私の場合は、父の診療所の隣の土地がたまたま売却されたので、立地は悩みませんでした。
医療法人を引き継いだので、資金面も問題なく進みました。

医療法人の承継は、顧問税理士のおかげで滞りなく…と言いたいところですが、煩雑な手続きの中、クリニック名を「おかもと小児科」から「おかもと・小児科アレルギー科」に変更し忘れていて、しばらく看板と病院名が異なる時期が続いてしまいました。
医療法人の理事長も、開業日から変更したわけではなかったので、しばらく院長は私で理事長は父という状態があり、契約書面で面倒なことが多くありました。

工務店・ハウスメーカーを選ぶ前に

今回主題となる、建築会社選びです。
建築会社を決定する上で、必ず決めなければならないことがあります。

それは「間取りを確定させること」です。
間取りが決まっていないのに、建築会社を決定することはできません。

間取りが決まってないと、見積もりができません。(とてもアバウトになります)
さらに、「この間取りは、うちでは建てられない」ということもあります。

当院は、待合室が広いのですが、そこに柱が必要になるかどうかが重要でした。
柱があると、視認性が悪くなるので、私には「柱がない広い待合質」が重要でした。

「間取りを確定させること」で、ようやく工務店かハウスメーカーが決まります。

では、どうやって間取りを決めるのか。

個人的に重要なポイントは次の3点です。

  • 工務店・ハウスメーカーどちらの話も聞く
  • トータルサポートしてくれる組合に入る
  • 家づくりを経験しておく
  • 先輩の診療所を見学する

工務店・ハウスメーカーどちらの話も聞く

私は工務店・ハウスメーカーはどちらも見積もりしてもらいました。

顧問税理士の提案で、地元の「平尾工務店」さんに相談しました。
ハウスメーカーは、自宅を建ててくださった「ミサワホーム」さんに相談しました。

値段は、ハウスメーカーのほうが高いです。
診療所・病院建築の実績が高いのもハウスメーカーです。

平尾工務店さんも、兵庫県の診療所の建築実績があり、複数の診療所の間取りを見せてもらいました。

トータルサポートしてくれる組合

オンライン請求やオンライン資格確認など、診療所の医療DXを考えると、マイホームと同じインターネット環境で診療所は作れません。

また、多くの医療機器はアース付コンセントを必要とします。

薬品棚や、薬品用冷蔵庫などの手配も必要です。
大きな医療機器を部屋に持ち込むための導線も必要です。
X線室の設計も必要です。

私は、神戸医師協同組合さんにトータルサポートをお願いしました。
間取りの相談もしました。

家づくりを経験しておく

平尾工務店とミサワホームとで、間取り・外観・予算を決めました。
はっきり言って、この作業は家づくりと全く同じでした。

開業の3年前に自宅を建てていましたので、そのときの経験が生かせました。
家づくりを経験せずに、いきなり診療所の間取りと向き合っていたら、おそらくアイディアは生まれなかったかもしれません。

間取りの考え方、扉の位置は勉強しておいて良かったと思います。
方眼紙に線を引きながら間取りを考える作業は、ぜひ事前に経験しておきましょう。

「家は3回建てないと理想の家にならない」という格言があるようです。
3回建てることは難しいですが、可能であれば自身の診療所が家づくり1件目となることは避けるべきです。

先輩の診療所を見学する

先輩のクリニックはぜひ見学しましょう。

成功ポイント、失敗ポイント教えてもらえます。
私もいくつか見学させてもらって、バックヤードや導線の考え方などをアドバイス頂きました。

患者さんの導線と、スタッフの導線を分けて考えるのが、診療所の間取り作成で重要だと強く感じました。

「コンセントとLANは無限にあってよい」は格言だと思います。

見積もりと外構工事で決定

間取りが決定したら、見積もり額と外構工事計画(駐車場やガレージなど)を比較することができます。
これでようやく「工務店かハウスメーカーか」を選べます。

ミサワホームさんはトータルサポートを含めて提案くださりました。
大手の安心感は半端なかったです。

私の場合は、サポートは神戸医師協同組合さんにお願いしていたこともあり、また外構工事計画が平尾工務店さんのほうが明確であったため、平尾工務店さんに決定しました。

まとめ

立地と資金は出会いと偶然です。

いっぽうで、医院を新築できる場合の建築会社選びは、出会いと偶然以外に考える要素があります。
それが間取り、見積もり、外構工事です。

ABOUTこの記事をかいた人

小児科専門医、臨床研修指導医、日本周産期新生児医学会新生児蘇生法インストラクター、アメリカ心臓協会小児二次救命法インストラクター、神戸大学大学院医学研究科内科系講座小児科学分野に入局。現在、おかもと小児科・アレルギー科院長。専門はアレルギー疾患だが、新生児から思春期の心まで幅広く診療している。