小児の気管支喘息に対する吸入デバイスの長所と短所まとめ。

小児科外来や耳鼻科外来で、子どもが吸入治療を受けたという経験をお持ちのお母さんは多いと思います。
病院では、咳やぜーぜーとした喘鳴に対して吸入をします。

いっぽうで、気管支喘息のために、毎日自宅で子どもに吸入させているご家庭もあるでしょう。
家で吸入をさせるとき、どのような方法で吸入させていますか?

今回は、子どもの吸入デバイスの長所と短所について書きます。

子どもに処方される吸入薬

私が使ったことのある吸入薬を表にしてみます。

適応 薬剤の種類 吸入液 pMDI DPI
長期管理 抗アレルギー薬 インタール吸入液 インタールエアロゾル
吸入ステロイド パルミコート吸入液 フルタイドエアー

キュバール

オルベスコ

フルタイドディスカス

フルタイドロタディスク

パルミコートタービュヘイラー

ステロイドと長時間作動β2の配合薬 アドエアエアゾール アドエアディスカス
発作時 短時間β2 ベネトリン

メプチン吸入液

サルタノール

メプチンエアー

メプチンスイングヘラー

結構たくさんありますね。

外来では、主にベネトリンやメプチン吸入液、インタール吸入液など、「吸入液」というジャンルの薬を「ネブライザー」という機器で吸入されていると思います。

吸入液」とは、「ネブライザー」で吸入するお薬です。

他にも、pMDIDPIという形状の薬もあります。
これらはネブライザーは使わずに吸入することになります。

吸入液、pMDI、DPIの薬をそれぞれ見ていきましょう。

吸入液とネブライザー

前述の通り、吸入液とはネブライザーで吸うタイプの薬です。
約5分ほどかけて、ゆっくりと吸入します。
そのため、喘息発作で呼吸が不安定なときや、吸入に慣れていない小さな子どもでも、時間をかけて吸入することができます。
(吸入で泣いてしまうような子どもでも、5分間じっくりやりつつ、テレビやおもちゃで気をひいていれば、次第に泣き止むことがあります。泣いているときの吸入は無意味であることが知られていますので、ゆっくり吸入させつつ上手くあやすという手法は大切です)

吸入に時間がかかるという点は長所ではありますが、同時に短所でもあります
毎日2回吸入しなければならないとき、ネブライザーでは1回5分ずつ時間がかかってしまいます。

吸入液

インタール吸入液、パルミコート吸入液、ベネトリン、メプチン吸入液がこれに分類されます。
これらは完全に液体で、そのままでは吸いこむことができません。
ネブライザーという器具で霧状にすることで、初めて吸入できるようになります。

ネブライザー

ネブライザーにはジェット式と超音波式とメッシュ式があります。
ただ、超音波式は一部の吸入薬が使えません。(たとえばパルミコート吸入液)

そのため、ジェット式とメッシュ式をお勧めします。

上記はオムロンNE-C803はジェット式のネブライザーです。
値段が安く、他のジェット式と比べて静かです。
(といっても、メッシュ型のほうが静かですが)

ゾウのキャラクターが特徴的です。
またジェット式のネブライザー全般に言えますが、タフです。
なかなか壊れません。

どの吸入器を買えばいいのか悩まれるお母さんに、私は一例としてこの商品を紹介することがあります。
(これがベストの吸入器だというわけではありません)

上記のオムロンNE-U22はメッシュ式のネブライザーです。
ジェット式よりもはるかに静かで、乾電池でも動きますのでコンセントがない部屋でも使えます。
さかさまにしても吸入できるという利点もあります。

いっぽうで、ジェット式よりも値段が高いです。
また、お手入れがちょっと大変です。
ジェット式は流水でじゃばじゃば洗ったり、ミルトンにつけて消毒したりできますが、メッシュ式ではできません。
メッシュ式は流水でメッシュが壊れますし、ミルトンでメッシュが錆びます。

上記のNE-U2は使用後に毎回、水を1-2分噴霧させないと、すぐにメッシュが詰まります。
また週に1回は、水で満たした水槽の中でやさしくゆするように洗わなければなりません。
(繰り返しますが、流水だとメッシュが壊れます!)

どのネブライザーがいいか

結局、タフで安いジェット式か、デリケートだけど高性能なメッシュ式かのどちらにするかとなります。
私はお父さん・お母さんの好みで決めてもらっています。

pMDI

pMDIとは、ボタンを押すことで薬液がスプレー状に噴霧されるタイプの吸入薬です。
フルタイドエアー、キュバール、オルベスコ、アドエアエアゾール、サルタノール、メプチンエアーなどがこのタイプになります。

直接口にあてて吸うこともできますが、小児アレルギー学会ではスペーサーいう器具を使って吸入することを推奨しています。
pMDIとスペーサーについては、こちらの記事に詳しく書きました。

子どもの吸入。喘息治療管理料2とスペーサーを用いた吸入指導。

2017年12月18日

スペーサーを用いることで、pMDIは乳児から大人まで使用できる万能タイプになります。
1回5吸入ですから、吸入時間は数秒から数十秒で終わります。
ネブライザーのように高価な機器を買う必要がなく、スペーサーについても喘息治療管理料2を使えば、費用もすべて保険適応されます。

毎日吸入させるのが大変だというお母さんには、優れた選択肢になるでしょう。

DPI

この薬は液体ではありません。
容器の中に細かいパウダーが入っており、それを吸いこみます。
フルタイドディスカス、フルタイドロタディスク、パルミコートタービュヘイラー、アドエアディスカス、メプチンスイングヘラーがこのタイプになります。

DPIは自分のタイミングで吸えるのが特徴です。
ネブライザーもスペーサーも必要とせず、高い携帯性をほこります。

いっぽうで、吸う力がある程度必要です。
練習すれば3歳から可能と言われていますが、6歳以上からが無難かもしれません。

まとめ

吸入液、pMDI、DPIの特徴、および吸入器具としてネブライザースペーサーをまとめます。

長所 短所
吸入液+ジェット式 ゆっくり吸える

タフでお手入れ簡単

メッシュ式より安い

時間がかかる

持ち運び大変

うるさい

吸入液+メッシュ式 ゆっくり吸える

静か

傾けても吸入できるので、寝ながらでもOK

時間がかかる

電源または電池が必要

デリケートでお手入れ大変、壊れやすい

高価

pMDI+スペーサー 素早く吸える

幅広い年齢で使える

電源不要

ネブライザーより楽とはいえ、スペーサーの手入れが必要
pMDI単独 携帯性に優れる スプレーと吸入を同期させる必要があり、かなり難しい

口腔内カンジダ注意

DPI 携帯性に優れる

自分のタイミング吸える

吸うのにある程度力が必要で、少し難しい

上記の通り、どれが最もよいかというのは、簡単にはお答えできません。
どれも良い点があります。

お子さんに最も適した吸入デバイスを提案できることも、小児科医の役割だと思っていますので、気軽にご相談ください。

ABOUTこの記事をかいた人

小児科専門医、臨床研修指導医、日本周産期新生児医学会新生児蘇生法インストラクター、アメリカ心臓協会小児二次救命法インストラクター、神戸大学大学院医学研究科内科系講座小児科学分野に入局。現在、おかもと小児科・アレルギー科院長。専門はアレルギー疾患だが、新生児から思春期の心まで幅広く診療している。