2017年9月18日追記。
ひよこクラブの「薬ガイドbook」の情報を追加しました。
6歳くらいまでの子どもは、カプセルや錠剤で薬を飲むことができません。
粉薬やシロップで飲むことになります。
粉薬やシロップは、舌の上に薬が広がるので、味をしっかりと感じます。
小児用の薬は甘く味付けしてあります。
中にはお菓子のようにおいしいものもあります。
(キプレスはラムネみたいで本当においしいです。子どもは「おかわり!」と言うくらいでした)
ですが、一部の例外を除けば、薬はちょっと甘味づけされていても、やっぱり苦いです。
そして、漢方薬はおいしくありません。
嘔吐に対する五苓散と、肛門周囲膿瘍に対する十全大補湯については、私は本当に効果を実感しているので、ぜひ子どもにこそ飲んで欲しいのですが、やはり薬の味がネックとなります。
今日は薬の味について、ワイン評論家のごとくコメントしたのちに、薬を美味しく飲むためのマリアージュを提案します。
このページの目次です。
苦い薬の四天王
- クラリス(クラリシッド)
- ジスロマック
- 麻黄湯
- 五苓散
この4つは、私がよく子どもに処方する薬の中で、特別においしくない薬です。
「四天王」と呼んで、恐れおののいています。
ですが、どれも臨床的な効果をとても感じるので、ぜひ飲んで欲しい薬なんです。
「これって本当に効いてるのかな」と多くの小児科医が首をかしげるようなかぜ薬がたくさんありますが、この四天王は使いどころさえ間違ってなければとても効いてくれます。
これらをさっそく飲んでみました。
(口直しのために、カルボシステインとメイアクトも飲みました)
さっそく、味の寸評をします。
クラリスドライシロップ(クラリシッド)
うすいピンク色で、桜の花びらを想起させます。
においは気になりません。
口に含むと思いのほか軽く、ふわっと心地よい甘みが広がります。
イチゴの味と言われますが、あまりイチゴの味はしません。
10秒後に苦みがおそってきて、よく言えばミネラル感とも例えられますが、少々不快です。
細かい砂のような食感が舌に残るのも不快です。
ひよこクラブの「薬ガイドbook」には「苦みのあるイチゴ味。牛乳では飲みやすく、オレンジジュースやイオン飲料と混ぜると苦くなり、飲みにくい」とあります。
私の感想よりずいぶんあっさりした表現です。
ジスロマック
はっきりとしたピンク色です。
口に含むと最初は甘いと思うのですが、遅れて強烈な苦みが襲ってきます。
この苦みは30分たっても消えません。
いつまでも舌の上で存在感を主張してきて、だんだん頭が痛くなってきます。
「長時間の不快感」とラップ調に表現してもぜんぜん笑えないほどに苦いです。
麻黄湯
薬を開けた瞬間から広がる中国四千年の香りです。
これはおいしくないに違いないという予想通りの味わいです。
じゃりじゃりとした食感と、独特の苦みと、蒸したハーブがこもったような香りが鼻につき抜けます。
無理やりにたとえるなら、動的な味わいです。
五苓散
シナモンの香りはしますが、それほど主張してきません。
食べてみると、思いのほか味がありません。
クシャクシャとした食感が強く、味がないことが強い違和感になります。
後から遅れて苦みがやってきますが、比較的すぐに消えます。
カルボシステインDS
ムコダインという名称で親しまれていますが、今回飲んだのはそのジェネリックです。
口直しのために飲みました。
ほのかな酸味が広がり、しゅっと儚く消えます。
ラムネのような味わいです。
甘味と酸味と少しの苦みの調和がすばらしいです。
ひよこクラブの「薬ガイドbook」には、先発薬であるムコダインの味について書いてあります。
「ヨーグルトなどと混ぜると、コーティングがとれてイオウの味がして食べにくくなる」とあります。
そのままでおいしい薬ですので、水で飲むのがよさそうです。
メイアクト
蛍光オレンジマーカーのような色合いで、なかなかケミカルな印象です。
口に含むと、まず苦みがやってきます。
ですが、すぐに強い甘みで打ち消されます。
苦みの余韻が少なく、不快感はありません。
ひよこクラブの「薬ガイドbook」には「オレンジミルク味で、そのままより水に溶かして飲むと苦みを感じにくい。牛乳やオレンジジュースで飲むのもOK」とあります。
最初に苦みがやってくる薬なので、水に溶かして飲むとよさそうです。
苦い薬の飲み方
年長児(4歳以上)であれば、飲まないと治らないと強く言って、飲んだら褒める「飴と鞭作戦」はある程度有効でしょう。
ですが、年少児(3歳以下)だとどんなに説得しても飲んでくれないときは飲んでくれません。
子どもが薬を飲まないのは、薬がおいしくないからです。
ですので、おいしく飲んでもらうことができれば、薬を飲んでもらえる確率はぐんと上がります。
龍角散のおくすり飲めたねはなかなか有効です。
ですが、今回私はおくすり飲めたねよりも安くて、おいしく飲める方法を提案します。
薬とのマリアージュ:プリン
薬は苦いです。
酸味は苦みとの対極ですので、酸味のある飲み物は基本的に薬の苦み強くします。
果汁とか、スポーツドリンク、飲むヨーグルトは酸味がありますので、基本的にはあまりおすすめしません。
苦い薬と合うのは、やはり苦いものです。
子どもが食べるものの中で、苦いものと言えば?
そう、プリンのカラメルです。
プリンのカラメルは苦いですが、多くの子どもはプリン好きです。
プリンがちょっと苦くても、子どもは気にせずに食べます。
カラメルの苦みが、薬の苦みを誤魔化すのかもしれません。
私はプッチンプリンが適しているように思います。
プッチンプリンのカラメルはそれほど苦くないのですが、薬と合わせるには十分です。
値段は140円で、おくすり飲めたねより安いです。
量も多いので、1個を3分割して、朝昼晩で使うこともできます。
プリンと合わせる4つの注意点
基本的にプリンに薬を混ぜて食べさせるだけですが、いくつか注意点があります。
プリンだけを食べさせない
最初にプリンだけを食べさせてしまうと、あとで薬を混ぜたときに味の違いに気づきます。
子どもは「味が違う」と勘付くと「危険かもしれない」と思うようで、警戒して食べてくれなくなります。
プリンは薬とセットで食べるようにしましょう。
しっかり混ぜる
粉末の部分が残ってしまうと、そこを食べたときにむせます。
苦い味もダイレクトで舌に伝わってしまいます。
しっかり混ぜて、薬の一粒一粒をプリンでコーティングさせましょう。
手早く混ぜてすぐに食べさせる
薬の表面をコーティングしている糖衣が溶けてしまいます。
しっかり混ぜるのですが、時間はかけ過ぎずに手早く混ぜて、すぐに食べさせましょう。
次々に口に入れる
ゆっくり味わっていると、薬の苦み成分がプリンから漏れ出します。
とにかく矢継ぎ早にプリンを子どもの口に放りこむことがポイントです。
次々口に入れれば、子どもは苦みを感じる間もなく食べきってしまいます。
まとめ
ワインを評価するとき、付け合わせの食事にも気を遣います。
ワインと食事は相性があり、最高の相性のとき、それを結婚にたとえて「マリアージュ」と言います。
薬との最高のパートナーは、私はプリンだと思います。
薬とプリンは、苦みと言う共通の要素で惹かれあっている理想のカップルです。
子どもに薬を飲ませるとき、苦労されているお父さん・お母さんは、ぜひプリンをお試しください。