Pediatrics Internationalの投稿規定。気軽に論文を書くワザ。

2017年から、小児科専門医になるためには論文を書くことが必須となりました。
しかし、論文を書くのはとても難しいものです。

  • 論文を書く時間がない。
  • 書いたことがないので書き方が分からない。

私もそうでした。
私のように論文を書き慣れていない人にとって、論文を書くというのはとてつもなくハードルが高いものです。

でも、論文の中には、ハードルが高いものもあれば、それほど高くないものもあります。
二重盲検ランダム化比較試験は雲の上まで届く勢いのハードルです。
一方で症例報告は高さ100cmくらいです。
ちょっと頑張れば飛び越えられます。

まずは症例報告から書いてみましょう。

症例報告を投稿できる雑誌

症例報告を出せる小児科の雑誌となると、Pediatrics Internationalしかないといっても過言ではありません。

インパクトファクターは0.6-0.8で決して高くはありませんが、しっかりと査読者がレビューしてくれましたし、初めて論文を出すにはとても教育的でよい雑誌だと思います。

小児科学会に入ってさえいれば、気軽に論文を読めるのもいいですね。
もしあなたの論文が受理されれば、多くの(日本の)人に読んでもらえるかもしれません。

字数制限が700単語までというのは、かなり要約した内容で書かなければならないので、実は少し大変です。
ですが、逆に考えると、たった700単語です。
もしかしたら1週間で書けてしまうかもしれません。
「時間がなくて、論文を書くなんて……」という人にぜひお薦めです。

というわけで、Pediatrics Internationalに狙いを定めましょう。

投稿規定を読む

こちらのページに投稿規定があります。

この投稿規定を読むという作業から、心が折れませんか?
私は折れました。
投稿規定を読むだけでお腹がいっぱいです。
このあと英語で論文を書かなければならないというのに、どんどん論文を書こうという気持ちが失われてしまいます。

そこで、できるだけ論文投稿のハードルを下げるために、私なりに投稿規定を訳してみました。
かなり意訳していますし、症例報告に関係ないところは省略しています。

Pediatrics internationalの投稿規定

  • 投稿規定はしっかりと読んでください。
  • 規定に書かれている指示に従っていない原稿は、査読せずに送り返します。
  • 学会の会議録以外で掲載された論文または、別の雑誌に投稿中の論文は出さないでください。
  • 投稿には20ドルかかります。
  • PI誌は日本の雑誌ですが、著者の約45%は日本人ではありません。
  • 査読者は2人います。
  • 迅速なレビューをするために、あなたの論文を評価するのに適切な専門家を何人か教えてください。名前と、住所と、メールアドレスが必要です。(医中誌などで検索して、あなたの論文を評価してくれそうな日本の専門家を探せばいいだけです。参考文献の中の著者でもよいです。もちろん、海外の専門家でもいいですが、探すのが難しいかもしれません。面識はなくてかまいませんし、ないほうがいいように思います。最低2人見つけておかないと、投稿できません)
  • 編集者は査読なしにリジェクトできます。
  • 原稿は簡潔に書いてください。
  • 二次的な出版は、同じ言語であろうが違う言語であろうが、編集者がPI誌の読者にとって有益だと判断されれば考慮されるかもしれません。
  • 症例提示であれば、両親や保護者に同意をとり、患者の匿名性が守られるようにしてください。
  • 著者に含めていいのは、1.研究デザインを着想した人、2.研究デザインを構築した人、3.原稿の最終チェックをした人、4.研究に関するあらゆる疑問について調査し、解決した人です。純粋に技術を提供した人や、原稿を書くのを手伝って人や、施設を提供した人は著者ではなく、acknowledgementsに含めてください。
  • 論文のコピペを見つけるプログラムであなたの原稿をスクリーニングします。
  • 症例報告はclinical notesとして投稿します。
  • Referenceや図表を除いて700単語以内です。
  • 著者は5人まで、要約は不要、Referenceは5つまで、図表は1つまでです。
  • 図は、たとえば顕微鏡写真3枚を横に並べて1枚とするいわゆるマルチパネルフィギュアになっても構いません。
  • clinical notesは現在の問題を解決できる技術で、医者の興味をひけるようなものを報告してください。詳しい症例報告やdiscussionは不要です。
  • 英語を母国語としないなら、必ずプロのeditorにチェックしてもらってください。
  • すべて英語で書きましょう。アメリカ英語でもイギリス英語でもいいです。
  • 単位はメートル法です。
  • 標準的な短縮語は、1回目の使用時に定義して下さい。 (あとでcopy editorに直されたのをみると、HIVやLDHなどは定義せずに最初から短縮語で使えました)
  • Referenceはバンクーバー方式で書きます。要するに、引用順に番号を振ります。
  • 原稿はwordで書きます。1.タイトルページ、2.要約は不要、3.キーワード、4.本文、5.acknowdgement、6.COIがないことの表記、7.一人一人の著者が論文において何の協力をしたか、8. Reference、9.表、10.図の説明を書きます。図自体はwordに入れずに、別のファイルで送ります。
  • タイトルページには以下を入れてください。1.論文のカテゴリー(投稿サイトで選べます。腎とか血液とか)、2.80文字以内のタイトル、3.欄外表題として使う40文字以内の短いタイトル(略語を使ってよいです)、4.著者の名前と、M.DとかPh.Dとか、5.著者の所属施設、6.筆頭著者の郵便番号、住所、電話番号、7.メインテキストのページ数、単語数、Referenceのpage数、表の数、図の数、、図の説明の数。
  • キーワードは5つです。MeSHに登録されているワードがよいです。
  • clinical notesの書き方については書かれていませんが、introduction、case、discussionの3段落でよいです。
  • Disclosureはメーカーなどから提供がなければ、Dr.○○ has nothing to disclose.となります。http://www.icmje.org/downloads/coi_disclosure.pdfからpdfファイルをダウンロードしてください。名前は筆頭著者かどうか、論文のタイトルなど必要な項目にチェックして、あとはすべて「NO」となるはずです。COIがないことを明らかにしてください。著者が5人いれば、5人分のCOIファイルが必要です。著者の名前ごとにファイル名をつけて、データとして保存してください。(投稿時にサーバーにアップデートします)
  • 著者の貢献を例に従って書いてください。
  • Referenceも例に従って書いてください。引用文献の著者が6人以下なら全員、7人以上なら筆頭の3人だけ書いて、あとは「et.al」としてください。
  • 図はTIFF形式(拡張子.tif)で、600-1200dpiの解像度が必要です。(フォトショップでもいいですし、フリーソフトならpixiaというソフトがTIFFで保存できますし、画像の修正やトリミングにも適してます。解像度については、とにかく大きな画像を用意するようにすれば大丈夫です)
  • 共著者全員のORCID iDが必要です。作っていない人がいれば、IDを取得してください。
  • 投稿には投稿料20ドルと、カバーレターと、5人分のCOIファイルと、原稿と、TIFF形式の図が必要です。
  • メインテキストはwordで、ダブルスペースで書いてください。
  • その他、投稿規定には書かれていませんが、普通フォントサイズは12、フォントはTimes New Roman、改行幅はダブルスペース、紙のサイズはレターサイズで私は投稿しました。形式段落にはスペース5文字くらい空けましょう。

注意点

参考文献にあげた著者を論文を評価して欲しい専門家に選ぶといいというわけではありませんが、しっかり評価がもらえそうな気がします。
とにかく2人の専門家を見つけないと投稿できませんので、がんばって探しましょう。

Disclosureが全員分必要です。各著者ごとに名前をつけて保存してください。

結語

大学病院であれ、市中病院であれ、必ずいつか「珍しい疾患」や「一般的な疾患の非典型例」に遭遇するはずです。
そういう疾患を幸運にも乗り越えられた時、「もしかしてあのときこうしたから上手くいったのかな」と思うことがあるはずです。
あなたの気づきは、もしかしたら医療の進歩に繋がるかもしれません。

投稿規定を読んで、ぜひ症例提示を書いてください。

原稿が書けたら、今度は投稿サイトから原稿を投稿します。
次回、投稿編は以下になります。

Pediatrics Internationalに投稿する7つのステップ。

2017年1月26日
投稿も少し分かりにくいところがあるので、できるだけハードルを下げるために、解説します。

ABOUTこの記事をかいた人

小児科専門医、臨床研修指導医、日本周産期新生児医学会新生児蘇生法インストラクター、アメリカ心臓協会小児二次救命法インストラクター、神戸大学大学院医学研究科内科系講座小児科学分野に入局。現在、おかもと小児科・アレルギー科院長。専門はアレルギー疾患だが、新生児から思春期の心まで幅広く診療している。