このページの目次です。
川崎病の診断基準
川崎病の診断は実にシンプルです。
- 熱が5日以上続く。
- 手のひら、足の裏が赤くなり。手足が硬く腫れる。
- 全身に発疹が現れる。
- 白目が赤くなる。
- 口唇、のど、舌が赤くなる。
- 首のリンパ節が腫れる。
このうち、5つ満たせば川崎病と診断できます。
「すごく簡単そう」って思いますよね?
ですが、川崎病とよく似た病気はたくさんあります。
そのため、川崎病と診断するのは、実は難しいのです。
他疾患の除外
では、川崎病とまぎらわしい病気を紹介します。
化膿性リンパ節炎
熱が出て、採血検査では高い炎症反応、そして首が腫れます。
抗生剤投与が有効ですので、川崎病と鑑別するにあたって「抗生剤が効くかどうか」というのは非常に大切です。
おおむね48時間の抗生剤投与で所見が改善傾向にない場合は、川崎病の可能性が高くなります。
発熱、発疹をきたすウイルス疾患
アデノウイルス、エンテロウイルス、麻疹、EBウイルスが該当します。
アデノウイルスは迅速検査があります。
その他のウイルスも血液検査の炎症反応(CRP)でおおむね区別できます。
麻疹を否定するためには予防接種歴も大切です。
A群溶連菌感染症
猩紅熱(しょうこうねつ)という症状をきたすと、目が赤くなり、苺舌になり、川崎病とよく似た症状となります。
迅速検査で溶連菌を調べることができます。
しかし、溶連菌検査が陽性であっても、抗生剤を48時間投与しても症状が改善しない場合には、川崎病の可能性にも注意しなければなりません。
溶連菌感染をきっかけに川崎病を発症することも、稀ですがあるのです。
エルシニア腸炎
腸炎を起こす細菌です。
ネズミ、ウサギ、鳥、ネコなどが宿主となる人畜共通感染症です。
汚染された井戸水から感染すると言われます。
発熱、右下腹部痛など、まるで虫垂炎のような症状を起こしますが、ときどき苺舌、口唇発赤、結膜炎、爪周囲の皮膚落屑など川崎病に似た症状が出ます。
ネルソン小児科学によると、川崎病類似疾患の8%がエルシニア感染症とのことです。
Stevens-Johnson症候群、中毒性表皮壊死症
抗けいれん薬などの薬物や、マイコプラズマ感染、ヘルペス感染などを契機に、サイトカインという体を守る免疫が過剰に産生されて、自分自身を攻撃する病気です。
川崎病と似た病気ではありますが、目の周りの浮腫や口の中に潰瘍ができることが本症例の特徴です。
若年性特発性関節炎
川崎病と似た疾患で、発熱と発疹を認めます。
からだ全体のリンパ節が腫れたり、肝臓や脾臓が腫れたり、関節が痛くなった場合は、若年性特発性関節炎を疑いますが、なかなか鑑別が難しいのも事実です。
川崎病の鑑別疾患まとめ
川崎病は特徴的な6つの症状のうち、5つ満たせば診断できるので、とても簡単に診断できるように思えます。
しかし、実は紛らわしい疾患もたくさんあるので、なかなか診断が難しいです。
川崎病になると、BCGをうった痕が大きく腫れることがあります。
この所見が見られると、かなり川崎病の確率が高まります。
それでも参考所見でしかないので、診断の難しさはあまり変わりません。
川崎病と診断されると、血液製剤であるガンマグロブリンを使わないといけませんし、その後5年間も心臓フォローが必要です。
間違えて川崎病と診断しないように、注意しなければいけません。