腸重積は腸の中に腸が入りこんで、ぎゅーぎゅーと締め付けられる病気です。
放っておいても自然に治ることはほとんどなく、そのうち締め付けられた腸管が壊死して穴が開いて、最悪死に至るという怖い病気です。
今回は、その腸重積について具体的な経過を示します。
腸重積の症例提示
間欠的な啼泣
たかし君は2歳の男の子です。
昨日までは元気に遊んでいましたが、今日は様子がおかしいです。
急に不機嫌になり、あまり遊ばなくなりました。
ご飯もあまり食べません。
おなかを触りながら、泣くこともあります。
足や膝を折り曲げて、声を張り上げるように泣きます。
お母さんがたかし君のお腹をさすっていると、たかし君はそのうち寝てしまいました。
しかしその後も30分から1時間おきに起きては泣くのを繰り返します。
しばらくすると泣くのをやめておもちゃで遊んだりもするのですが、定期的に不機嫌になります。
少し顔色も悪いような気がします。
お母さんはたかし君を連れて小児科を受診しました。
診療所を受診
小児科を受診すると、先生は丹念にお腹を触りました。
たかし君は今は機嫌が悪くありません。
熱も36.9℃で、特に高くはありません。
小児科の先生はたかし君に浣腸をしました。
10分後、たかし君はおむつに便をしました。
腹部エコー検査
紹介状を書いてもらって、たかし君は大きな病院を受診しました。
お母さんは不安でいっぱいです。
腸重積かもしれないというのはどういうことなんでしょうか。
それは治る病気なんでしょうか。
病院に着くと、すぐにお腹のエコーをされました。
小児科の先生はたかし君のお腹の右下のあたりをエコーの機会で押さえながら、うつった画像を説明してくれます。
腸穿孔と聞いて、お母さんは高圧浣腸をするのが不安になりました。
ですが、お腹を切るのもかわいそうです。
どうしたらいいか分からず、先生に不安を伝えました。
先生の説明に、お母さんは少し安心しました。
高圧浣腸
たかし君は点滴をし、眠くなる鎮静剤の注射をされて、うとうと眠りました。
そのあいだに造影室に運ばれて、高圧浣腸の処置がされました。
高圧浣腸の時間は、10分ほどでした。
たかし君は鎮静剤の影響でうとうとしてはいますが、顔色がよくなっています。
先生はお腹のレントゲンのような画像を見せてくれました。
おしりから造影剤が入って、腸の中を進んでいる写真を何枚か見せてくれました。
顔色がよくなったたかし君を見て、お母さんは安心しました。
その後
たかし君は1泊入院しました。
鎮静は3時間ほどで覚めました。
元気におもちゃで遊びます。
痛がって不機嫌になることはありません。
お腹に造影剤が残っているので水のような便は出ますが、苦しくなさそうです。
翌日は朝ご飯もしっかり食べたので、退院となりました。
症例のまとめ
- 2歳の男の子がお腹を間欠的に痛がった。
- 浣腸でイチゴゼリー状の便が出た。
- 腹部エコーで腸重積と診断された。
- 高圧浣腸で速やかに治った。
未処置の腸重積は致死的です。
6か月から3歳までの子どもがお腹を痛そうにしたときは、すぐに治まるようならしらばらく様子を見ていてよいですが、痛くなったり和らいだりを繰り返して数時間以上続くときは小児科に相談ください。