アレルギー表示の難しさについて思うところ。

アレルギー専門医試験の勉強中です。
試験まであと3か月と少ししかありません。

「加工食品のアレルギー表示」についても試験範囲です。
なんとなく知っていたつもりですが、勉強してみるとなかなかファジーでグレー

今日は、「加工食品のアレルギー表示」について思うところを書きます。

アレルギー表示の基本知識

消費者庁のホームページから、アレルギー表示に関する情報を参照できます。

アレルギー表示とは

食物アレルギーをもつ消費者の健康危害の発生を防止する観点から、過去 の健康危害等の程度、頻度を考慮し、特定原材料を定め、容器包装された 加工食品について、当該特定原材料を含む旨の表示を義務付けています。

要するに、加工食品では食物アレルギーで問題になりやすい「特定原材料」の表示しなければなりません、という意味です。

たとえば私が今晩食べようと思っているカップ麺。

特定原材料のうち、「卵、乳、小麦」が入っていることが分かります。

さらに裏表示を見ると、フタには記載されていなかった「大豆、豚肉」も入っていることが分かります。
これは、大豆と豚肉が「特定原材料に準ずるもの」であるからです。

他の加工品も見てみましょう。
医局に置いてあった「白い恋人」です。

箱の裏側に原材料が書いてありません。

しかし、中身には賞味期限と一緒にしっかり書いてありました。
卵、小麦、牛乳に加え、大豆由来の乳化剤が含まれていることが分かります。
でんぷんが何由来なのかは分かりませんが、コメ由来であろうとジャガイモ由来であろうとこれらは「特定原材料」でも「特定原材料に準ずるもの」でもないので、表示されていないのでしょう。

「特定原材料」と「特定原材料に準ずるもの」

「特定原材料」とは、えび、かに、小麦、そば、卵、乳、落花生(ピーナッツ)の7品目です。
「特定原材料」は「表示の義務」があります。

なお、これは2019年10月現在の情報です。
平成30年度食物アレルギーに関連する食品表示に関する調査研究事業報告書で、木の実類でもっとも多かったのは「くるみ」だったと記載されており、今後くるみが特定原材料となる可能性があります。

「特定原材料に準ずるもの」とは、アーモンド、あわび、いか、いくら、オレンジ、カシューナッツ、キウイフルーツ、牛肉、くるみ、ごま、さけ、さば、大豆、鶏肉、バナナ、豚肉、ま つたけ、もも、やまいも、りんご、ゼラチンの21品目です。
「特定原材料に準ずるもの」は「表示の推奨」があります。
ちなみに、アーモンドは2019年9月に追加されました。

参考までに、今までの変更の歴史を残します。
2004年:特定原材料に準ずるものに「バナナ」を追加。
2008年:特定原材料に「えび」 と「かに」を追加。
2013年:特定原材料に準ずるものに「カシューナッツ」 と「ごま」を追加。
2019年:特定原材料に準ずるものに「アーモンド」を追加。

アレルギー表示に思うところ

アレルギー表示にはなかなかファジーでグレーな部分があると私は思っています。

たとえば、「可能性表示」は認められていません。
つまり、「〇〇が入っているかもしれません」という表記はしてはいけないことになっています。
これは、十分な調査を行わずに安易に「可能性表示」を実施することを防ぐためです。
安全性をアピールし、責任を逃れる理由で「卵、乳成分、小麦、落花生、大豆、エビが入っているかもしれません」と安易に書くと、本当にアレルギーで困っている人たちの自由を妨げる可能性があります。

いっぽうで、コンタミネーションは注意喚起表示が望ましいとされています。
たとえば「本品製造工場では小麦・卵を含む製品を生産しています」という注意喚起は望ましいのです。

しかし、この注意喚起をどう解釈すればいいのか、私には判断できません。
結局、「小麦・卵が入っているかもしれません」という可能性表示との違いが私には分かりにくいのです。

コンタミネーションといえば、たとえば鶏肉に卵成分が検出されることがあります。
魚の胃袋からエビやカニが検出されることがあります。
コンタミネーションの可能性が否定できないものにおいては、最終製品で原材料の一部を構成していないと判断される場合は、表示の義務はないとされます。

でも、表示の義務はなくても、やはり注意喚起表示が望ましいのであれば「本製品に使用されている魚はエビやカニを食べている可能性があります」と書くべきなのでしょうか。
しかしこれでは可能性表示になってしまいますから、「本製品に使用されている魚の一部はエビやカニを食べています」という表記にすべきなのでしょうか。
記載を変えても、その本質は変わっていないように私は感じます。

さらに、原材料の一部を構成しているのかしていないのか、どうやって判断すればいいのでしょうか。
含有される蛋白が数ng/mlまたは数ng/g未満ではほぼ誘発しないと考えられ、表示義務がないという言われていますから、この濃度以下であれば「原材料の一部を構成していない」と言えるのでしょうか。

他にも、卵殻カルシウムは卵蛋白が含まれない科学的根拠があるため、表示義務はありません。
ですが、醤油に含まれる小麦蛋白についても同様の科学的根拠があると思うのですが、現時点では醤油を使えば小麦の表記が必要とのことです。

以上の問題は、消費者庁のホームページにある程度解答があります。
全66ページを読みましたが、私はますますファジーでグレーな気持ちになりました。

他に私がファジーでグレーな気分になるのは、以下です。

  • 「特定原材料」や「特定原材料に準ずるもの」などのルールが適応されるのは、加工食品だけ。レストランなどの外食産業や店頭で調理するお惣菜には義務がない。
  • 卵表示には鶏卵だけではなく、うずらやアヒルの卵も含まれる。いっぽうで、乳成分表示には山羊や羊の乳は含まれない。
  • 香料は「特定原材料」の表示義務がないとしつつ、香料(乳成分・卵を含む)をどう扱えばいいのか。

これはひとえに、アレルギー学自体にまだまだ解明されていない点が多いためだからでしょう。
今後知見が蓄積されることで、ファジーでグレーな部分が減っていくと思います。

ABOUTこの記事をかいた人

小児科専門医、臨床研修指導医、日本周産期新生児医学会新生児蘇生法インストラクター、アメリカ心臓協会小児二次救命法インストラクター、アメリカ心臓協会PEARSインストラクター。神戸大学大学院医学研究科内科系講座小児科学分野に入局。現在、兵庫県立柏原病院小児科医長。専門はアレルギー疾患だが、新生児から思春期の心まで幅広く診療している。