小児科ファーストタッチの「こだわり」7つ。

娘に出版記念パーティーを開いてもらえました。
嬉しいことに、チョコプレートを食べてもいい権利がもらえました。
(いつもチョコプレートは子どもに食べられる)

出版から1か月たって、環境的にも心情的にも落ち着いてきました。
そこで今回は、ちょっと冷静に「小児科ファーストタッチのこだわり」を考えてみます。

角が丸い

本の角を見てください。
なんと、小児科ファーストタッチの角は丸いんです。

「本の角で指のツボを刺激したい!」という尖った人に、残念ながら本書は適しません。
ですが、ポケットの中にオアシスが欲しいと考えている人には、小児科ファーストタッチの優しい丸みがあなたの心を癒してくれるでしょう。

あえてのカバーなし

小児科ファーストタッチには表紙カバーがついていません。
その理由は定かではありませんが、おそらく前述の「優しい丸み」を表現するために、あえてカバーを外したのだと私は確信しています。
(表紙カバーがあると、本の丸みが見えなくなってしまいますから)

カバーがないがゆえに本が「汚れやすい・傷つきやすい」という懸念があるかもしれません。
ですが、小児科ファーストタッチは不思議なコーティングがされているので、水をはじきます。
(製法は不明です)

かく言う私も、小児科ファーストタッチの上にコーヒーをこぼしてしまいましたが、染みになることなく拭き取れました。
筆者とは違って、「汚れない・傷つかない」ステキな表紙です。
(筆者の心は汚れ切っていますし、傷だらけです)

ちなみにカバーはやがて外れてしまいますが、もともとカバーがない本書にそんな心配は無用です。

「見返し」にも情報満載

表紙を開いて真っ先にあるページをなんというか知っていますか?
「見返し」といいます。
表紙と本の中身をつなげる役割があるようです。
表紙に貼りついている方を「効き紙」、貼りついていない方を「遊び紙」といいます。

小児科ファーストタッチにはこの「見返し」にも情報を詰め込みました。


表側の「見返し」には、感染症の出席停止期間や、登校・登園の目安が書かれています。

写真には「帯(おび)」「袖(そで)」が写っています。
「帯」というのはキャッチコピーや推薦文を載せる細長い紙のことで、「帯」の内容に惹かれて本を買ってしまうことを「帯買い」といいます。
「袖」というのは、カバーや「帯」を折り返した部分です。
「袖」にはキャンペーン(たとえば握手会とか)の応募券があるものですが、小児科ファーストタッチの「袖」にはいくら探しても応募券などありません。

裏側の「見返し」には、拒薬されやすい薬と服薬のヒントもあります。
アイスクリームとの飲み合わせが結構出てきますが、アイスクリームメーカーとの利益相反(COI)はありません。

ポケットサイズ

初めて出版社の人とお会いしたとき、「本のサイズはどうしますか?」と聞かれました。
私は「大きいほうがいいですね。平積みしたとき目立ちますし、自慢できますから」と答えました。
出版社の人は「なるほど、分かりました。ただやはり、ポケットリファレンスとして使用できるほうが役立ちますから、小さめにしますね」と返事されました。
私は「えっ、あっ、はい」と答えました。

このような喧々諤々の議論の末、小児科ファーストタッチは幅11cm、厚さ2.2cmとなりました。
コンパクトディスクと呼ばれるCDですら直径12cmですから、小児科ファーストタッチがいかにコンパクトか分かります。

逆に言えば、小児科ファーストタッチが本当にポケットに入るか不安な人は、そのポケットにCDが入るかどうか試してください。

写真がフルカラー

発疹の項目では27枚の写真がありますが、まさかのフルカラーです。
製本費用が気がかりです。

充実の索引

本文は388ページまでなのですが、その後に索引が26ページも続きます。
本体価格と消費税みたいな比率です。

消費税が侮れないのと同様に、小児科ファーストタッチの索引も侮れません。
薬剤索引と用語索引の二段構えで、とても充実しています。

ポケットリファレンスは索引が命だと思っています。
そのため、私も索引に関しては「こだわってください!」と注文しました。
具体的な指示ではなく、「とにかく、こだわってください!」と漠然とした注文をしました。
出版社からは、面倒くさい著者だと思われたと思います。

単著による一貫性

一緒に書いてくれる友達がいなかったので、単著になりました。
単著は一貫したぶれない内容になるのが良い点だと思っていますが、いっぽうで内容に偏りが生じる点が注意です。

内容の偏りはできるだけ配慮しました。
賛否両論のテーマはどちらの意見も書いた上で「私はこうしている」という書き方にしました。
また、私がふだん勉強している本のどのページにそういう記載があったのかが分かるように、引用文献も可能な限り記載しました。
ネルソン小児科学からの引用がもっとも多いです。

まとめ:「こだわり」たっぷりの小児科ファーストタッチ

小児科ファーストタッチを分析し、7つの「こだわり」を見つけました。
これらは私がこだわったのではなく、出版社がこだわってくれました。
(たとえば、「ここの記載に参考文献はありますか?」のように)

私は何をどうこだわればいいのかすら分からなかったので、本が出来上がっていく過程を見ながら、その「こだわり」を見つけるたびに「わぁー」と社会科見学中の小学生みたいな感想を呟いていました。

先日、神戸三宮のジュンク堂でアレルギー専門医試験のための本を買いに行ったついでに、自分の本も見てきました。

ポップがあります。
本書よりも幅広いポップが前面に飛び出ています。

ポップは飛び出すとか弾けるとかそういうポップコーン的な意味でポップなんだと思っていて、「おー、このポップ、飛び出てるなー」と感じたのですが、よく考えたらポップはPoint of purchase advertisingを略してPOPなので、飛び出してなくてもポップでした。

このポップも、本を買ってもらうための「こだわり」の一つなんでしょう。

こういう「こだわり」は他の本にもきっとあると思います。
一つ一つの本には、その著者だけではなく、その本の制作に携わった出版社の人々など、たくさんの人の想いが詰まっているのだろうと感じました。

最後に、宣伝です。
嬉しいことに重版出来です。

出版社の人に本当に助けてもらったので、「売れなかったら、出版社の偉い人からきっと怒られるんだろうな」とびくびくしてましたので、ちょっとだけ安心しました。

ABOUTこの記事をかいた人

小児科専門医、臨床研修指導医、日本周産期新生児医学会新生児蘇生法インストラクター、アメリカ心臓協会小児二次救命法インストラクター、神戸大学大学院医学研究科内科系講座小児科学分野に入局。現在、おかもと小児科・アレルギー科院長。専門はアレルギー疾患だが、新生児から思春期の心まで幅広く診療している。