アジアにおける舌下免疫療法の有効性。

もうすぐ、スギ花粉の季節ですね。
アレルギー性鼻炎は日本人の39.4%にみられ、通年性は23.4%、スギ花粉によるものは26.5%です1)

舌下免疫療法とは、スギやダニのエキスを食べることで、そのアレルギーを治すという治療です(この表現は、厳密にいうと語弊があります。エキスを口に含んで吐き出すだけでも効果があるという説もありますし、また治すといっても、完全に治るわけではありません)。
以前にもこちらの記事に書きました。

減感作療法がアレルギー性鼻炎の運命を変える!根治につながる治療薬。

2017.03.02

小児アレルギー性鼻炎に新たな選択肢。舌下免疫療法の適応拡大。

2018.02.25

今回は、アジアにおける舌下免疫療法の有効性についての論文を紹介します。

The efficacy of sublingual immunotherapy for allergic diseases in Asia

The efficacy of sublingual immunotherapy for allergic diseases in Asia(Allergology International Volume 67, Issue 3, July 2018, Pages 309-319)1)を紹介します。
これはオープンアクセスで、全ての人が無料で読める論文です。

ちなみに、当院の初期研修医が抄読会で紹介・和訳してくれました。
とても優秀な研修医でした。
研修医が持ってくる論文は、ほむほむ先生のブログにすでに紹介されていることが多いので、チェックしてみましたが、この論文は大丈夫でした。

では、さっそく内容を紹介します。

はじめに

舌下免疫療法は、アレルギー性鼻炎や喘息に対する安全で効果的な治療だと考えられています。
皮下免疫療法(スギやダニのエキスを体に注射する治療)と比べて複雑ではなく、侵襲性もありません。

アジアにおける舌下免疫療法のデータは不十分です。
本研究は、過去のアジアの論文をレビューし、アジアにおける舌下免疫療法の特徴を調査するものです。

方法

  • PubmedやScopus、コクランを使って、舌下免疫療法の論文を検索。
  • アジアに関する記載がない論文は除外。

18件の無作為二重盲検プラセボ対照試験があり、そのうち9つは小児科領域に絞ったもので、主に中国と日本からの論文でした。

舌下免疫療法の効果

18件の無作為二重盲検プラセボ対照試験のうち、17件の論文でアレルギー性鼻炎の改善が確認され、そのうちの5件では喘息の改善が見られました。

症状の改善は、治療開始後8~12週でみられました。
1件の論文は、1年間の治療では効果が出なかったが、その後のフォローで改善が見られたと報告しています。

舌下免疫療法は55~80.5%の人に効果がありました。
すべての人に効いたわけではありません。

小児での報告では、3歳から投与されていて(注意:日本では5歳からです)、年齢に関係なく効果がありました。
1~2年間治療することで、鼻炎の85~100%で改善がみられ、喘息の76~92%で改善がみられました。

舌下免疫療法と皮下免疫療法の比較

アジアでは、舌下免疫療法と皮下免疫療法を比較した無作為二重盲検プラセボ対照試験はありませんでした。
(確かに、投与経路の異なる薬剤を盲検化で比較するのは、とても難しいです)

非盲検で試験では、ダニに対するアレルギー性鼻炎、アトピー型喘息のコントロールにおいて、舌下免疫療法と皮下免疫療法は同等の効果でした。

皮下免疫療法のほうがよいという報告は存在します。

  • 皮下免疫療法のほうが鼻閉の改善がみられた。
  • 皮下免疫療法のほうが鼻炎に対する薬物使用量を減らせた。
  • 皮下免疫療法のほうが即効性があった(投与1年では有意差があったが、2年以降では差がない)。

ただし、これらの結果は限定的です。

長期間の効果

無作為二重盲検プラセボ対照試験の中で、2年を超えてフォローアップしているものはまだありません。
非盲検試験か、後ろ向き試験でのみ長期間のデータが存在します。

最もフォローアップ期間が長い論文では、100人のダニアレルギー鼻炎およびアトピー型喘息を4年間調査しました。
1~3年にかけて、症状の改善度合いが強くなっていきますが、3年と4年とでは差がなかったので、治療期間は3年が適切と提案されました。

日本の研究では、4年間の調査で、治療期間に比例して症状が改善することを示しました。

安全性と副作用

舌下免疫療法によりアナフィラキシーは世界的にみても報告は稀で、1億分の1と言われています。
アジアで舌下免疫療法によるアナフィラキシーの報告はありません。

もっとも多い副反応は口腔内のかゆみ、浮腫、しびれでした。
鼻漏の悪化も見られました。
喘息の増悪は稀でした。

私の感想

舌下免疫療法の安全性は極めて高いと言えるでしょう。
あとは効果がどの程度か、というところでしょうね。
鼻炎と喘息の両方がある人にとっては、舌下免疫療法の利益はさらに高い可能性を感じました。

治療期間は少なくても3年はしたほうがいいようです。
ただし、フォローアップ期間が長くて4年と短く、どれだけ舌下免疫療法を続けるのがベストかについては、まだなんとも言えません。

また、免疫療法を終えてから効果がどれくらい持続するのかについても、分かっていないようです。

舌下免疫療法を何年するのがベストで、その場合効果が何年続くのか。
これが明らかになるといいなあと思いました。

ABOUTこの記事をかいた人

小児科専門医、臨床研修指導医、日本周産期新生児医学会新生児蘇生法インストラクター、アメリカ心臓協会小児二次救命法インストラクター、アメリカ心臓協会PEARSインストラクター。神戸大学大学院医学研究科内科系講座小児科学分野に入局。現在、兵庫県立柏原病院小児科医長。専門はアレルギー疾患だが、新生児から思春期の心まで幅広く診療している。