熱中症を予防するには?ガイドラインとネルソン小児科学まとめ。

熱中症は、米国の高校生選手の死亡原因として第3番目に多くみられるものである。

ネルソン小児科学第19版 p2800-2802

厚生労働省の統計によると、日本では毎年500-1000人の熱中症による死亡が確認されています。
その多くは高齢者ですが、15歳以下の小児でも死亡例はあり、2018年7月17日の6歳児のケースで再認識させられました。

熱中症は予防が最も重要であることは論を待たないが、早期認識、早期治療で重症化を防げれば、死に至ることを回避できる。

熱中症診療ガイドライン2015

治療に関してはこちらに書きました。

熱中症の治療。「氷水に浸かるのが良い!」に対する疑問。

2018.07.24

今回は、熱中症の予防について書きます。

経口補水液

日本救急医学会が刊行した熱中症診療ガイドライン2015に、熱中症の予防について詳しく書いてあります。

熱中症では水分とともにNaなど電解質の喪失があるので、Na欠乏性脱水が主な病態であり水分の補給に加えて適切な電解質の補給が重要である。そのため、熱中症の徴候を認めた際には特に塩分と水分が適切に配合された経口補水液(ORS:Oral Rehydration Solution)が適切である。

熱中症診療ガイドライン2015

熱中症の予防には経口補水液がガイドライン上は推奨されています。
これはいわゆるオーエスワンやアクアライトORSのことです。


amazonへのリンクを張ってみましたが、ご覧の通り経口補水液は値段が少し高いです。
一般的なスポーツドリンクであるポカリスエット、アクエリアスなどではダメなのでしょうか?
さらには、水やお茶などではダメなのでしょうか?

ガイドラインにもある通り、小腸でNaとブドウ糖は1:1で吸収されますから、Na(塩分)と炭水化物(糖分)のバランスは重要な要素です。
糖分が多くなりすぎると、胃での停滞時間が長くなり吸収に時間がかかると小児科診療2018年増刊号p83-85にあります。

オーエスワンはNa50mEq/L、炭水化物25g/Lです。
アクアライトORSはNa35mEq/L、炭水化物35g/Lです。
ポカリスエットはNa21mEq/L、炭水化物62g/Lです。
アクエリアスはNa15mEq/L、炭水化物47g/Lです。
ちなみにコカ・コーラはNa1.6mEq/L、炭水化物112g/Lです。

オーエスワンやアクアライトORSのバランスが最適です。
ポカリスエットやアクエリアスといったスポーツドリンクは、塩分が少なく、糖分が多いです。

厳密には予防という観点からはスポーツドリンクでの頻回な飲水でも問題ないが、スポーツドリンクは塩分量が少なく、糖分が多いことを認識しておく必要がある。また、水分のみの補給では自由水は補給されるもののNaが希釈され痙攣の閾値を下げ、 また補給された水分は血清浸透圧の低下による水利尿によって体外に排泄されてしまう。

熱中症診療ガイドライン2015

スポーツドリンクは決して不適切というわけではありませんが、吸収に時間がかかることは留意すべきでしょう。

水やお茶に関しては、上記のガイドライン記述だと推奨されないように感じます。
しかし、ネルソン小児科学には「1時間以内の運動であれば水だけの補給で十分である」という記載や、ICUとCCU2012年36号p361-366には「労働中の水分摂取内容は来院時重症度と関連しない」という記載があり、状況によっては不適切とは言えないようです。

経口補水液を作ってみたい

自分の子どもを熱中症から守りたい。
だけど、毎日の水分補給をオーエスワンやアクアライトORSで行うのも大変。

そういうときに、家で簡単に作れる経口補水液を紹介します。
これは熱中症診療ガイドライン2015に書かれている内容です。

0.1から 0.2%程度の食塩水、つまり1Lの水に1から2gの 食塩と砂糖大さじ2-4杯(20-40g)の糖分を加え たものが効率よく水分を吸収でき有効な予防になる。

熱中症診療ガイドライン2015

0.1から 0.2%程度の食塩水というのは、Na17-34mEq/Lを指します。
水1Lに食塩2gと砂糖35gを加えれば、アクアライトORSとほとんど同じ組成になります。

その他の予防策

熱中症予防に朝ご飯でも工夫できることがあります。

梅昆布茶や味噌汁などもミネラル、塩分が 豊富に含まれており熱中症の予防に有効と考えられる。

熱中症診療ガイドライン2015

梅昆布茶を子どもが喜んで飲んでくれるかどうかは分かりませんが、味噌汁は夏の朝ご飯に良いでしょう。

運動中には20分ごとの水分摂取を勧める。

ネルソン小児科学第19版 p2800-2802

水分の定期的な摂取は熱中症の予防において大切です。

40-45℃の水滴を噴霧し温風を吹きかけるwarm air spray methodが有効である。

小児科診療2018年増刊号p83-85

冷水で体を冷やすと、皮膚表面の血管が収縮する上に、体が震えて余計熱が産生されるという理論からwarm air spray methodが提唱されていますが、エビデンスレベルについては私の調べた限りでは分かりませんでした。

まとめ

ガイドラインやネルソン小児科学から学んだ熱中症予防についてまとめます。

  • オーエスワンやアクアライトORSが適切。
  • スポーツドリンクや水やお茶は、短時間の運動では適切。
  • 水1Lに食塩2gと砂糖35gを加えれば、アクアライトORSとほぼ同じ。
  • 食事に味噌汁を。
  • 運動中には20分ごとの水分摂取。

まだまだ暑い日が続きます。
この記事が熱中症予防に役立つことを願います。

ABOUTこの記事をかいた人

小児科専門医、臨床研修指導医、日本周産期新生児医学会新生児蘇生法インストラクター、アメリカ心臓協会小児二次救命法インストラクター、アメリカ心臓協会PEARSインストラクター。神戸大学大学院医学研究科内科系講座小児科学分野に入局。現在、兵庫県立柏原病院小児科医長。専門はアレルギー疾患だが、新生児から思春期の心まで幅広く診療している。