病診連携。近隣の診療所に挨拶に行きました。

病診連携という言葉を知っていますか?

「病」は病院、「診」は診療所を指します。
つまり、病院と診療所とがうまく連携していきましょう、という意味です。

つい先日、柏原病院の近くで開業している小児科や産婦人科にご挨拶に行きました。
病診連携をこれからも続けていきましょうという挨拶です。

そのときの経験もふまえ、今回は病診連携について具体的に書いてみます。

病院と診療所

病院も診療所も、医師が診療を行う場所であるという点で同じです。

この2つの違いは、入院病床の数です。
病院は入院患者さんのために20床以上のベッドがあります。
いっぽうで診療所は入院ベッドがないか、あっても19床以下でなければなりません。

これらは「医療法」という法律で規定されます。
面白いことに医師国家試験の公衆衛生という分野でよく出題されます。

病院は、看護師や薬剤師の設置など細かく規定があります。
診療所には医師が1名必要ではありますが、その他の細かい規定がありません。
したがって、診療所は開設しやすく、病院はなかなか開設できません。

そのため、病院の数は診療所に比べて少ないです。
医療施設動態調査(平成28年1月末概数)では、診療所の数はおよそ10万あるのに対し、病院の数は8千程度です。
診療所は病院の10倍以上あるということを覚えておきましょう。

病診連携の利点

「病診連携って、まずは診療所にいって、そこで紹介状をもらって、それから病院に行くってことでしょ?二度手間じゃないですか。最初から病院に行ったほうが楽でいいです」

こういう意見は必ずあります。

まずは診療所で診て、必要なら紹介状をもらって、病院を受診する。
これが病診連携です。
ですが、二度手間という意見や、たらいまわしという意見は必ずあります。

ただ、そんなネガティブな意見を上回る大きなメリットがあると私は思います。
このメリットを「まず診療所を受診するメリット」と「紹介状をもらってから病院を受診するメリット」に分けて考えてみます。

まず診療所を受診するメリット

診療所の利点は、病院の10倍以上あるという数の面での優位性です。
診療所がたくさんあることで、数々のメリットがあります。

  • 病院よりも診療所のほうが家の近くにあるケースが多い。
  • 待ち時間が少ない。

また診療所は多くの場合、医師が一人ないし少人数です。
病院であれば毎回担当医が変わってしまうことがありますが、診療所であれば同じ医師にずっと診てもらえます。
それが次のメリットを生み出します。

  • 今までの既往歴や薬剤歴を詳細に話さなくてよい。
  • 変化に気づいてもらえやすい。
  • 気ごころが知れて、話しやすい。

さらに言うなら、病院では研修医や専攻医が主治医となることがあります。
彼らは勤勉ですが、経験が不足しています。
もちろんカンファレンスを通じて経験不足は補われます。

ですが、診療所の先生の臨床能力に適うかどうかは分かりません。
診療所の医師は来る日も来る日も外来診療を続けています。
その圧倒的な臨床経験はぜひ信頼すべきでしょう。

  • 診療所の医師は臨床経験が豊富。

つまり、何か不調があったとき、最初に診療所を受診するのはとても理に適っていると思います。

紹介状をもらってから病院を受診するメリット

診療所だけではすべての疾患に対応できません。
CTやMRIなど高度な精査が必要な場合もありますし、入院が必要なケースもあるでしょう。

こういうときに、診療所は病院に紹介状を書きます。

病院は、診療所から託された比較的重症な患者さんを診ます。
精密検査を要し、十分な時間と検討を重ねて治療を計画します。

ですが、このスケジュールが達成されるには、病院の医者に十分な人的・時間的リソースが確保されていることが必要です。

軽い風邪の患者さんが病院にたくさんやってきて、その対応に追われていれば、入院患者さんの対応が不十分になります。
軽い病気が診療所で対応されず、病院のリソースを削ることになれば、病院の機能は落ち、重症な患者さんは満足な医療を受けられなくなるでしょう。

つまり、紹介状をもらってから病院を受診するというのは、病院に人的・時間的リソースを与えるということです。
「病院が本来の機能を発揮できる」という点が、病診連携の利点の一つと言えるでしょう。

余談ですが、医療費の節減にもなることが多いです。
兵庫県立柏原病院の場合、紹介状なしで受診すると2600円余計にかかります。
この費用は、乳幼児医療制度が適応されません。
すなわち、2600円がそのまま負担金額となります。
詳しくは兵庫県立柏原病院のホームページにあります。

ちなみに、2600円という金額は私が今までで働いてきた病院の中ではもっとも安いです。
(大きな病院では5000円というケースもあります)
それでも、医療費は安ければ安いほうがよいでしょう。

紹介状は基本的に保険が効きます。
3割負担だとか、2割負担だとか、小児科の場合は乳幼児医療で無料になるケースもあるでしょう。

金銭面的な部分はやはり余談であり、もっとも大切なのは「病院が本来の機能を発揮できる」ために紹介状を持って受診するのだと考えてください。

病診連携のための挨拶

2017年8月29日、小児科の井上部長と一緒にささやま医療センターとタマル産婦人科に挨拶してきました。
(ささやま医療センターは立派な病院ですので、正確には病診連携ではなく病病連携になります)

  • これからも丹波市・篠山市で周産期医療・小児医療を頑張りましょう。
  • 新生児蘇生法講習会を柏原病院で行ってますのでぜひ来てください。
  • 「小児アレルギー診療の実際」というテーマでセミナーもしますのでぜひ来てください。

主にこの3点を話してきました。

タマル産婦人科の生川先生は、今回の挨拶についてブログにレスポンスがありましたので、紹介します。

地域医療連携のお話(タマル産婦人科のブログへリンクします)

地域連携の話は中盤以降に書かれています。
生川先生の開業当時の苦労を垣間見ることができます。

当時のことを私は知らないので、柏原病院とタマル産婦人科の経緯がどこまで事実かは判断できませんが、少なくても現在は柏原病院からもっとも近くにある産婦人科診療所はタマル産婦人科であるわけで、同じ周産期医療を携わる者同士、連携は必要不可欠です。

まとめ

病診連携は患者さんに効率のよい医療を提供するためのシステムです。
このシステムを上手く機能させるために、病院と診療所は密な情報交換を行い、良好なコミュニケーション関係を築かなければなりません。

私はあまり人付き合いが得意ではないのですが、これもよりよい医療のためですから、また近く他の診療所にも挨拶に行くつもりです。

ABOUTこの記事をかいた人

小児科専門医、臨床研修指導医。神戸大学大学院医学研究科内科系講座小児科学分野に入局。現在、兵庫県立柏原病院小児科医長。専門はアレルギー疾患だが、新生児から思春期の心まで幅広く診療している。