小児科医視点の「ブラックジャックによろしく」

「ブラックジャックによろしく」という漫画を知っていますか?

2002年から2006年にかけて連載していた漫画ですので、もう10年以上前です。
私が読んだのも大学生のときでした。
当時は医者ではなかったので、「医者って大変なんだなあ」という感想でしたが、医者になった今あらためて読んでみると、違った感想を持ちました。

今回はブラックジャックによろしくの小児科編で、私が個人的に好きなエピソードを次の3つに分類してみます。

  1. 小児科外来の様子
  2. 小児科医の労働状況
  3. 小児科医のプロフェッショナリズム

小児科外来の様子

内科外来や外科外来に比べて、賑やかな印象がある小児科外来。
その様子が分かる場面を見てみましょう。

診察の難しさ

子どもの診察が難しい、という様子が描かれています。

ですが、実際の子どもはもっと素直で分かりやすいことが多いです。
痛いところを触れば嫌がりますし、元気になればとびっきりの笑顔を見せてくれます。
とても分かりやすいです。

おとなは隠したり、見栄をはったりするので、内科のほうが診察が難しいんじゃないかなと小児科医的には思っています。

カゼへの対応

カゼへの対応は、小児科医としての技量が問われますね。
ここまで極端な保護者はなかなかお目にかかれませんが、この親も子どものことを心配しているからこそ医者に攻撃的な対応をしてくるわけで、保護者の気持ちを汲み取れる心の広さが小児科医には必要です。

余談ですが、「本当にただのカゼですってば」という説明は、たまに大きな失敗つながるかもしれないので私は避けます。

トリアージの難しさ

親はわが子を一番に心配しています。
他人の子どもが優先的に診察されるケースを快く受け取ってくれる親はそれほど多くないでしょう。

重症度が高い患者さんを優先的に処置することは救急の現場では常識です。
(患者さんを重症度で分類することをトリアージといいます)

ですが、医療の常識が一般的なお父さん・お母さんの常識と同じであるとは限りません。
(予約時間ちょうどに診察できないとすごく怒ってしまう人もいます。忙しい最中に受診して下さっているのでお気持ちは察しますが、美容院とは違って病院は重症な人が来るとそちらを優先的に処置することがあり、どうしても時間通りに診療できないことがあります。待たせてしまうのは非常に心苦しいのですが、どうか分かってほしいです)

「どんなに理不尽でも親とケンカしてはいけませんよ。割を食うのは子どもですから」

これは小児科医のプロフェッショナリズムですね。
親が怒って「もう帰ります!」となったら、子どもがかわいそうです。
小児科医は子どもを守るためにも、絶対に親とケンカをしてはいけません。

時間外診療の多さ

小児科は夜間に受診されるケースが多いです。
いわゆる「時間外受診」や「コンビニ受診」と呼ばれるものです。

医者にとって負担となる「時間外受診」の半数近くは子どもであったというデータがあります(参考:平成13年度総括研究報告書)。
強い負担は、医者の過労死につながります。
医者の過労死については、こちらの記事に書きました。

医者の過労死について小児科医が考える。

2017.06.01

「時間外受診」を控え、小児科医を守ろうと呼びかけてくださったのが、「県立柏原病院の小児科を守る会」です。
この活動のおかげで、現在の柏原病院小児科があるといっても過言ではないでしょう。
県立柏原病院の小児科を守る会については、こちらの記事に書きました。

兵庫県立柏原病院の魅力。小児科の地域医療を考える。

2017.04.30

小児科医の労働状況

次は、小児科の経営的な面について、特徴的なシーンをまとめました。

処置に人手がいる

大人の採血だったら、一人の看護師でできます。
採血に要する時間は1分もかからないでしょう。
ベテランの看護師に10分の時間を与えれば、何人もの患者さんの採血をこなしてくれるはずです。

ですが、小児科ではこうはいきません。
私は採血の前にデモンストレーションを行い、できるだけ子どもの恐怖を取ることに努めます。
それでも動いてしまう子どもは多いですから、しっかり押さえてくれる看護師が一人ないし二人必要になります。
数人がかりで10分以上かけてようやく一人の採血ができる、ということもあるでしょう。

注射に関しても同様です。
注射にかける手技についてはこちらに書きました。

痛くない注射!子どもを泣かさない小児科医の9つのワザ。

2017.01.23

このように時間をかけていては、確かに小児医療は赤字になるかもしれません。

小児科医不足

実は小児科医の数は微増傾向ではあります。
ですが、現場はまだまだ不足しているように感じます。

どうにもならない現状

私にできるのは、「小児科医になりたいです!」という若い先生がもっともっと増えるように、小児科医の魅力を伝えることくらいでしょうか。

それと、私自身が身を粉にして働き続けるという方法もあります。
どちらも大切だと思いますので、どちらも頑張ります。

小児科医のプロフェッショナリズム

最後に、小児科医のプロフェッショナリズムが分かるシーンを紹介します。

いつも笑顔

笑っていてこその小児科医です。
どんなときでも笑顔でいましょう。

親の心配を共感する

親は自分の子どもがとにかく心配なんです。
その不安に寄り添いましょう。

子どもが好き

子どもが好きだから、小児科医を続けていけます。

小児科医としての誇りを持つ

私がもっとも好きなセリフです。

「僕がやらなきゃ、誰がやるんですか?」

この仕事に誇りを持ちましょう。

まとめ

本記事の画像は、以下の著作物を利用規約に則り正しく使用しています。
タイトル:ブラックジャックによろしく
著作者名:佐藤秀峰

ABOUTこの記事をかいた人

小児科専門医、臨床研修指導医。神戸大学大学院医学研究科内科系講座小児科学分野に入局。現在、兵庫県立柏原病院小児科医長。専門はアレルギー疾患だが、新生児から思春期の心まで幅広く診療している。