PALSを実施するAHA公認国際トレーニングセンター5つ。

来月(2017年9月2日、3日)にコアインストラクターコースとPALSインストラクターコースを受講します。

インストラクターになろうと思ったきっかけはいくつかあるのですが、そのうちの一つが当院の救急科の看護師が「小児の救急について教えてください!」とすごく熱心で、その熱意に答えるためには私がPALSインストラクターになるしかないと思ったからです。

私自身、PALSの講座は2年おきに受講していますが、得られるものはとても大きいです。
インストラクターとしてもっと深い知識を持っていたいと思えてきます。

PALSのインストラクターになろうと思ったとき、今まで考えていなかった問題に直面しました。
それは、PALSを実施しているAHA公認の国際トレーニングセンターがいくつもあったのです。

今回は、AHA公認国際トレーニングセンターについて書きます。

AHA(アメリカ心臓協会)

AHAとはアメリカ心臓協会(American Heart Association)のことです。
1924年にニューヨークで創設され、現在は世界中に3千以上の国際トレーニングセンターを持っています。

突然の心停止は現在も主な死因の一つであるため、AHAは病院の外でも中でも生命を救うことができるよう、年間数百万の人々を訓練しています。

その訓練が、基本的な救命処置であるBLSと、小児の二次救命処置であるPALSです。

ITC(国際トレーニングセンター)

ITCとは国際トレーニングセンター(International Training Center)のことです。
ITCとは、アメリカ心臓協会(AHA)と提携し、日本国内でAHAの心肺蘇生法を含む救急心血管治療(ECC; Emergent Cardiovascular Care)を提供するAHA公認国際トレーニング組織です。

要するに、アメリカ心臓協会の教えを世界中に広めるのがITCです。
日本にもITCがいくつかあります。

日本のITC

私が確認できただけで、9個ありました。

  • 日本ACLS 協会
  • 日本医療教授システム学会
  • 日本小児集中治療研究会
  • 日本循環器学会
  • 福井県済生会病院-横浜トレーニングセンター
  • 国際救命救急協会
  • 日本BLS協会
  • 日本救急医療教育機構
  • ACLS Japan

これらは、アメリカ心臓協会(AHA)と正式に提携している国際トレーニング組織です。
このうち、PALSを実施できるのは、次の5つになります。

日本ACLS協会

日本ACLS協会

私が所属している国際トレーニング組織です。
これにしようと思ったのは、インターネットを用いた情報提供が非常に詳細だからです。

日本ACLS協会に登録すれば、自分が保有している資格、期限がホームページから瞬時に分かります。
さらにホームページでは受講予定のコース情報も確認できる上、領収書発行も行えます。

PALSの開催も多いです。

ただwikipediaには、他のITCとの連携を拒むという閉鎖的な側面も書かれています。
現時点でこの点を感じたことはありません。

日本医療教授システム学会

日本医療教授システム学会

2010年までは日本蘇生協議会ITCと呼ばれていた団体です。
日本蘇生協議会ITCは2010年に消滅し、日本医療教授システム学会という名称で新設されました。
情報元:http://aha-bls-instructor.seesaa.net/article/144518486.html

活動拠点はいくつかありますが、PALSを実施しているのは越谷ラーニングスタジオ(埼玉県)しかありません。

値段は日本ACLS協会のPALSと比べて安く、新規が35000円、更新20000円でした(2017年8月時点)

日本小児集中治療研究会

日本小児集中治療研究会

日本におけるPALSの導入は、この日本小児集中治療研究会が2002年に導入したのが初めてであったようです。
2012年までに、6500人のプロバイダーを教育し、インストラクターは250名います。
「小児」という言葉がついているだけあって、PALSに積極的な協会です。
日本ACLS協会ほどではありませんが、数多くのPALSコースを開催しています。

値段はプロバイダーコースで45000円、リニューアルコースで25000円で、日本ACLS協会とほぼ変わりません。

福井県県済生会病院-横浜トレーニングセンター

福井県済生会病院-横浜トレーニングセンター

もともと日本ACLS協会に所属していた横浜トレーニングサイトが、2009年に移籍した先が「福井県県済生会病院国際トレーニングセンター」というITCです。

このあたりの話は、別のブログに詳しかったのでリンクしておきます。
http://aha-bls-instructor.seesaa.net/article/97678103.html
http://aha-bls-instructor.seesaa.net/article/128044186.html

ホームページなどで確認する限りは、母体となっている福井県県済生会病院国際トレーニングセンターでは新たなPALSコースを確認できませんでした。
ですが、横浜トレーニングセンターは毎月PALSを行っているようです。

日本BLS協会

日本BLS協会

シンプルなホームページ。
開催されているPALSコースも、関東に少しだけです。

いわゆるプロバイダーコースが39800円、更新のコースが26580円です。

よく似た団体

日本ACLS協会とよく似た名前で、日本PALS協会という団体があります。
この協会自体は、AHAが認定する国際トレーニング組織ではありません。

この団体を端的に表現するのは難しいのですが、要するに「日本医療教授システム学会の一部(看護師限定)」という解釈がもっとも誤解なく伝わるのではないかと思います。

もちろん日本医療教授システム学会はAHA公認のITCですから、AHAが認めるPALSを受講できます。

まとめ

どの国際トレーニングセンターでPALSを受講すればいいかについては、受講者の住んでいる地域である程度限定されるでしょう。

少なくても兵庫県に住んでいる私には、日本ACLS協会か日本小児集中治療研究会のどちらかしか選択肢がありませんでした。

さらに言うならば、国際トレーニングサイトが日本にこんなにもあることを私は知りませんでした。
「PALSを実施しているのはAHA」だと思っていました。

いざインストラクターになろうとすると、どのITCのインストラクターになるんだという問題に直面し、調べてみてようやく知りました。
今さら知ったところで、BLSやPALSを受講したITCのインストラクターになりたいと思うのは必然でしょうから、最初にどのITCの講座を受講したかで決まったようなものです。

これからPALSを受ける人に、少しでもお役に立てば幸いです。
あと、この記事はがんばって調べたものの、まだ日本のITC事情に疎い立場で書きましたので、今後加筆修正いたします。

ABOUTこの記事をかいた人

小児科専門医、臨床研修指導医、日本周産期新生児医学会新生児蘇生法インストラクター、アメリカ心臓協会小児二次救命法インストラクター、神戸大学大学院医学研究科内科系講座小児科学分野に入局。現在、おかもと小児科・アレルギー科院長。専門はアレルギー疾患だが、新生児から思春期の心まで幅広く診療している。