突然ですが、節分の豆まきで何をまきますか?
「いや、豆でしょ」
という心無いツッコミもありそうですが、東北や北海道では落花生、すなわちピーナッツをまいています。
宮崎や鹿児島もピーナッツをまいているという情報があります。
私は関西なので、大豆をまいています。
関東でも大豆だそうです。
ピーナッツも大豆も同じマメ目マメ科に属しています。
だから節分でどちらをまこうが、同じマメまきです。
ですが、アレルギーの世界では大豆アレルギーとピーナッツアレルギーは別物です。
今回は、ピーナッツアレルギーについての豆知識を書きます。
このページの目次です。
ピーナッツアレルギーでは採血検査が参考になる
アレルギーの診断において、食物経口負荷試験はゴールドスタンダードです。
と前置きしたうえで、ピーナッツに関しては採血検査も参考になります。
ピーナッツの粗抗原に対する特異的IgE抗体測定は高い感度を持ちます。
そしてピーナッツのコンポーネントであるAra h 2は高い特異度を持ちます。
そのため、2つの検査が診断の目安として用いられます。
- 粗抗原 0.35U/mL未満ではピーナッツアレルギーは否定的。
- 粗抗原 0.35-50U/mLでAra h 2 4.0U/mL未満では経口負荷試験。
- 粗抗原 0.35-50U/mLでAra h 2 4.0U/mL以上ではピーナッツアレルギーと診断。
- 粗抗原 50U/mL以上ではピーナッツアレルギーと診断。
上記の診断目安の出典は「食物アレルギーのすべて」からです。
アレルギーを疑ったエピソードも大切だと私は認識していますが、ピーナッツに関しては採血結果も重要視しています。
ピーナッツアレルギーの30%が他のナッツ類アレルギーを併せ持つ
アーモンドはバラ科です。
カシューナッツやピスタチオはウルシ科です。
クルミやペカンはクルミ科です。
ヘーゼルナッツはカバノキ科です。
ピーナッツはマメ科なので、科が違うのですが、不思議なことにピーナッツアレルギー患者の30%が他のナッツアレルギーを併せ持ちます(出典:食物アレルギーのすべて)。
私はピーナッツアレルギーを診断したら、必要最小限の除去を行うために、できる限り他のナッツについても採血検査および経口負荷試験を実施しています。
ピーナッツアレルギーには発症予防策がある
LEAPスタディで乳児期(生後4-11か月)からピーナッツを摂取することでピーナッツアレルギーが予防されることが報告されました。
私の日常診療ではピーナッツアレルギー予防よりも卵アレルギー予防のほうが関心の高いお母さんが多いため、卵アレルギー予防策についてをよく外来で説明しています。
PETITスタディの説明をするときに、私は併せてLEAPスタディのことも説明することがあります。
すなわち現時点の医学では、ピーナッツと卵に関してはアレルギー予防策があるということです。
(なお、牛乳に関しても新生児期からの粉ミルク投与に関する研究がありますが、私はまだ日常臨床でこの話をすることはありません)
ピーナッツアレルギーは治りにくい
ピーナッツ、ナッツ類は重篤な症状を起こすアレルゲンの一つであり、明らかなアナフィラキシーの既往があれば、診断確定や耐性獲得の確認を目的とした食物経口負荷試験は原則として推奨されない。
食物アレルギーのすべて
耐性獲得の確認のための食物経口負荷試験ができないということは、一度診断されたピーナッツアレルギーは半永久的にピーナッツアレルギーのままということになります。
いっぽうで、2016年の日本アレルギー学会学術大会で相模原病院の発表の一つに「6歳時点で耐性獲得していないピーナッツアレルギー児29名の12歳までの自然歴と耐性化因子」という演題がありました。
8名(27%)で経口免疫療法がなされるというアグレッシブな管理の結果でもあるのでしょうが、12歳までに35.9%がピーナッツに対する耐性を獲得したという結果でした。
ピーナッツアレルギーは治りにくいという私の認識は変わっていません。
ですが、希望はあるという認識も同時に持っています。
大豆アレルギーとの違い
せっかくなので、今回の記事の導入となったマメ知識。
大豆ではどうなのかについても書いてみます。
まず、大豆アレルギーの診断は血液検査ではできません。
大豆特異的IgE抗体価は偽陽性となる症例も多いため、抗体価の上昇のみで除去指導を行うのではなく、確定診断として経口負荷試験を行うことが重要である。
食物アレルギーのすべて
次に、大豆アレルギーが他のナッツ類のアレルギーを併せ持つという話は聞いたことがありません。
発症予防策についても、大豆は聞いたことがありません(EATスタディにも大豆は含まれませんでした)。
治りやすさについては、大豆アレルギーは4歳までに25%、6歳までに45%、10歳までに69%が治るとされ、治りやすいアレルギーとして知られています(出典:食物アレルギーのすべて)。
同じマメ科なのに、ピーナッツと大豆は全然違います。
まとめ
ピーナッツのマメ知識について書きました。
アレルギーの世界では大豆アレルギーとピーナッツアレルギーは別物です。
そして、ピーナッツアレルギーだからといって、他のクルミやカシューナッツが食べられないわけではありません。
他のナッツ類アレルギーを合併するケースは30%ありますが、逆に70%はピーナッツアレルギー単独です。
ピーナッツアレルギーだからといってすべてのナッツ類を除去するのではなく、必要最小限の除去のために正しくアレルギーを診断することがアレルギー科医としての腕の見せ所です。