細気管支炎の重症化予測スコア。

気管支炎や肺炎という言葉は聞いたことがあると思いますが、「細気管支炎」というフレーズはなかなか聞き慣れないと思います。
細気管支炎とは、気管支の末梢、つまり気管支がさらに細くなったところに起きる感染症です。
生後6か月未満の児がRSウイルスやライノウイルスにかかると細気管支炎となる場合があります。

細気管支炎は、90%が重症化することなく自然治癒します。
いっぽうで、10%が重症化し、集中治療室(ICU)での管理や、人工呼吸器管理を要することになります。
(根拠は後述します)

過去の論文からは、生後3か月未満が急速に悪化しやすいことや、特に生後6週までは無呼吸発作を起こす可能性があり、月齢は重要なリスク予測因子と考えられていました。(Bronchiolitis in children: diagnosis and management NICE guideline )

今回は、細気管支炎の重症化を予測する因子が報告されたので、紹介します。

細気管支炎の重症化予測スコア

Predicting Escalated Care in Infants With Bronchiolitis(Pediatrics September 2018, VOLUME 142 / ISSUE 3)

Pediatrics誌はアメリカ小児科学会が刊行している雑誌です。
本記事は、無料で誰でも読むことができます。

研究の背景

細気管支炎は乳児の救急受診の主要な原因です。
細気管支炎は重症化するリスクがありますが、リスク高いのか低いのかを判断するツールが存在しません。

そこで、細気管支炎が重症化する因子を調査しました。

研究方法

生後12か月未満で、細気管支炎で救急外来を受診した乳児を対象とします。
基礎疾患(慢性肺疾患、心疾患、神経筋疾患、免疫不全など)を持つ児は研究から除外されました。

重症化したかどうかというのは、「エスカレートケアを受けたかどうか」で判断されました。
エスカレートケアというのは、人工呼吸管理や、ICU管理、呼吸補助装置(高流量鼻カヌラやCPAPなど)を行うことを指します。

研究の結果

2013年1月から12月までの1年間で、38施設から5305人の細気管支炎の乳児が集まりました。
基礎疾患を持っていた1580人と、データに不備があった1003人がを除いて、2722人が研究の対象となりました。
平均月齢は生後4.5か月でした。

2722人のうち、261人(9.6%)がエスカレートケアを受けました。
そのうち、人工呼吸管理を行ったのは12人でした。

エスカレートケアを受ける、すなわち重症化する因子として、生後2か月未満、摂食不良、無呼吸、脱水、呻吟、陥没呼吸、酸素飽和度90%未満がありました。

結果に基づいた議論

オッズ比に基づいて重症化スコアを決定し、14点満点のスコアで重症化の予測を行ってみました。

特徴 スコア
生後2か月以下 1
摂食不良がある 1
SpO2 90%未満 5
無呼吸がある 2
鼻翼呼吸がある 2
脱水がある 1
陥没呼吸がある 2

 

合計スコア 重症化する確率
0 0.9%
1 1.5%
2 2.7%
3 4.7%
4 7.9%
5 13.2%
6 21.3%
7 32.3%
8 45.8%
9 59.9%
10 72.6%
11 82.4%
12 89.2%
13 93.6%
14 96.3%

論文を読んだ感想

本研究の限界として、人工呼吸器の使用やICU管理の基準が施設によって様々であり、重症化という評価が一定ではないところでしょう。
また、本研究は後方視ですので、前方視研究で正しさを確認しなければなりません。

さらに、細気管支炎の診断基準も明確ではありません。
細気管支炎の診断はガイドラインによって様々ですが、私は「生後6か月未満で局所的なcracklesまたは肺野に広くwheezesやrhonchiは認めた場合は、細気管支炎である」と診断しています。
どうしてこのように定めたかについては、こちらの記事に書きました。

聴診器で気管支炎・肺炎・喘息発作・細気管支炎を区別できますか?

2018.06.04

いくつか問題があるものの、簡単な臨床的指標で重症化を予測できるというこの研究は大きな価値を感じました。

細気管支炎は重症化する可能性があるため、小児科医にとって注意が必要な疾患です。
2722人の細気管支炎のうち、261人(9.6%)がエスカレートケアを受けたという事実は、「やはり重症化しやすいのだ」と再認識できました。

また、生後2か月(スコア1)、呼吸・哺乳良好な細気管支炎の重症化率は、この論文の結果からは1.5%です。
1.5%だから安心、というわけではありませんが、外来治療とする理由の一つに付け加えることはできるかもしれません。

さらに陥没呼吸(スコア2)と鼻翼呼吸(スコア2)を伴えば、細気管支炎の重症化率は合計スコア5点ですので、重症化率13.2%となります。
こうなると入院を勧める理由の一つになるかもしれません。

上記の例が入院後に症状が悪化し、経口摂取不良(スコア1)とSpO2 89%(スコア5)という状況が合併したら、合計11点ですから、重症化率82.4%となります。
ただ、この例はすでに重症化しているともいえます。
そして、入院経過中に症状の進展があった場合に、このスコアは使用できないでしょう。
なぜなら、入院中はしっかり点滴すれば脱水にはならないからです。

医療介入後も継続評価できるツールに応用できる可能性はあります。
他にも、たとえば合計7点以上を高次病院への搬送基準とする、などいろいろ応用ができそうです。

より安全な細気管支炎管理に向けて、とても良い論文だと感じました。

ABOUTこの記事をかいた人

小児科専門医、臨床研修指導医、日本周産期新生児医学会新生児蘇生法インストラクター、アメリカ心臓協会小児二次救命法インストラクター、アメリカ心臓協会PEARSインストラクター。神戸大学大学院医学研究科内科系講座小児科学分野に入局。現在、兵庫県立柏原病院小児科医長。専門はアレルギー疾患だが、新生児から思春期の心まで幅広く診療している。