モイゼルトは皮膚感染防御に働くかもしれない。

モイゼルト軟膏。
アトピー性皮膚炎に使用できる外用薬で、比較的新しい薬となります。
発売日は2022年の6月です。

今回は、モイゼルトが皮膚感染防御に働く可能性について、1つの論文を紹介します。

モイゼルトはディフェンシン産生を誘導し抗菌効果を発揮する

Difamilast induces human beta defensin 3 production via CREB and NRF2 in human keratinocytes. J Dermatol Sci. 2025; 119: 135-138.

今回の論文(letter)はこれです。
要旨をまとめます。

背景と仮説

  • 抗菌ペプチド の一つであるディフェンシンは、皮膚の自然免疫に重要で、黄色ブドウ球菌やMRSAに対する広範な抗菌活性を持つ。
  • アトピー性皮膚炎の主要サイトカイン (IL-4, IL-13) はディフェンシンの産生を抑制する。
  • モイゼルトは アトピー性皮膚炎の治療薬である。モイゼルトはディフェンシン産生を促進し抗菌作用を持つのではないかと仮定した。

方法と結果

  • ヒト表皮ケラチノサイトをモイゼルトで処理したところ、ディフェンシン(human beta defensin 3)のmRNAとタンパク質が有意に増加した。
  • モイゼルトで処理したヒト表皮ケラチノサイトの上清を黄色ブドウ球菌とMRSAに加えると、細菌増殖を有意に抑制した。
  • ディフェンシン中和抗体を加えると、上記の抗菌効果は消失した。つまりディフェンシンが抗菌効果に関与していると考えられた。

結論と意義

  • モイゼルトはディフェンシン産生を誘導し、皮膚の自然免疫を強化する。
  • モイゼルトはアトピー性皮膚炎治療における抗炎症作用に加え、抗菌作用という利点も示唆された。
  • 今回の研究は試験管内での研究である。今後の生体内での研究が必要。

読んだ感想

アトピー性皮膚炎の外用薬は、保湿剤とステロイド外用薬、プロトピック、コレクチム、ブイタマーなどがあります。

ステロイドには、感染を悪化させる可能性があります。
他剤に関しても、直接的な抗菌作用を示せた論文はまだありません。

今回、モイゼルトが直接的にディフェンシンを誘導し、抗菌効果を発揮したとする報告は、貴重です。
アトピー性皮膚炎は、特に小児科ではおむつ皮膚炎やとびひなどを合併しやすく、このような感染症に対してモイゼルトは有利に働くかもしれません。

ただ、まだ今回の研究は試験管内の研究です。
今後、臨床試験でも「細菌感染症が少ない」という方向が続くことを期待します。

ABOUTこの記事をかいた人

小児科専門医、臨床研修指導医、日本周産期新生児医学会新生児蘇生法インストラクター、アメリカ心臓協会小児二次救命法インストラクター、神戸大学大学院医学研究科内科系講座小児科学分野に入局。現在、おかもと小児科・アレルギー科院長。専門はアレルギー疾患だが、新生児から思春期の心まで幅広く診療している。