アトピー性皮膚炎の診断。私はこのように診断している。

久々の更新となりました。

理由はいくつかあります。
単純に忙しかったというのもあります。
COVID-19診療は患者数以上に時間と労力を奪いました。

また、2022年はすごくたくさんの仕事を依頼されました。
講演、監修、記事執筆など…一部は受けられましたが、一部(かなりたくさん)はお断りしました。

さらには、開業するための準備をしていたことも、忙しさに拍車をかけました。
2023年4月に、私は丹波医療センターを退職します。

本当はもっと早くに退職し、新しいことを始めたかったんです。
ですが、部長からもう少し長く働いて欲しいと依頼され、退職日を延長しました。
退職日延長は、今までとてもお世話になった恩返しという意味合いもあります。

2023年になって、ようやくいろいろなことが少し落ち着いてきたので、またブログを書いていこうと思います。

今回は、私が頻繁に診ている疾患「アトピー性皮膚炎」の診断について書きます。

アトピー性皮膚炎と診断されていますか?

こんなお子さんが、私のアレルギー外来に来ました。

  • 乳児期から湿疹があり、かかりつけ医に処方された保湿剤やステロイド外用薬(少量)で、寛解増悪を繰り返していた。
  • 3歳4カ月、当院初診。全身に苔癬を伴う湿疹があった。
  • この児は、アトピー性皮膚炎とは診断されていなかった。

赤ちゃんの頃から、湿疹が良くなったり悪くなったりしながら、3年以上続いていたようです。
私が拝見したとき、この児の皮膚は「苔癬(たいせん)」という分厚くなった湿疹がありました。
「苔癬」は皮膚の炎症が長く続いたときにみられるサインです。

この児は、典型的なアトピー性皮膚炎を持っていました。

私は、この児の保護者に「アトピー性皮膚炎と診断されたことはありますか?」と質問しました。
すると母親は「アトピー性皮膚炎と言われたことはありません」と答えました。

どうして、アトピー性皮膚炎はアトピー性皮膚炎と診断されないのでしょうか。

アトピー性皮膚炎を自信をもって診断できる医師は少ない

アトピー性皮膚炎の診断基準は、ガイドラインに記載されています。
このガイドラインはインターネット上に無料公開されているので、誰でも読むことができます。

ですが、この診断基準。
少し難解ですよね。

このため、アトピー性皮膚炎を自信をもって診断できる医師は少ないと私は感じています。

さきほどのお子さんは、3年以上アトピー性皮膚炎の診療が続けられたにも関わらず、アトピー性皮膚炎と診断されていませんでした。
その理由は、かかりつけの先生が、アトピー性皮膚炎の診断に自信がなかったためではないかと私は思います。

私はアトピー性皮膚炎をこう診断している

診断名にこだわる必要はないという考え方はあります。
たとえば発達障害は、診断を急ぐよりも、環境調整を優先することが大事だと思っています。

アトピー性皮膚炎も、乳児湿疹や脂漏性皮膚炎、おむつかぶれなどとの区別が難しく、診断を急ぐよりも、治療を優先させた方がよいという考え方も分かります。

ですが、3年以上も診断名が確定しないで治療を続けるというのは、医師と患者の「ゴールの共有」ができておらず、診療内容自体も適切ではないと思えます。

私は、若手医師にもアトピー性皮膚炎を自信をもって診断してほしいので、シンプルな診断方法を指導しています。

皮疹は必ず触りましょう。
ザラザラしているかどうか、触って確かめることが大切です。

痒いかどうかは保護者に聞いてもいいですが、掻き傷があれば痒いと一目で分かります。

普段は赤くなくても、お風呂に入って温まったときに赤くなるのであれば、「赤い」と判断します。

赤い、痒い、ザラザラする、この3要素がそろえば、湿疹です。
湿疹を理解することは、診断にも重要ですが、重症度評価や治療においても重要です。
湿疹に対してステロイドを塗ることが治療の主体であり、ステロイドを塗るのは基本的に保護者の役目となることを考えれば、保護者にも湿疹を理解してもらうことが大切です。

まとめ

  • 左右対称な湿疹が慢性的に続けばアトピー性皮膚炎です
  • 赤い、痒い、ザラザラする、この3要素がそろえば、湿疹です

アトピー性皮膚炎をシンプルに理解することで、診断に自信が持てると若手医師には指導しています。

ABOUTこの記事をかいた人

小児科専門医、臨床研修指導医、日本周産期新生児医学会新生児蘇生法インストラクター、アメリカ心臓協会小児二次救命法インストラクター、神戸大学大学院医学研究科内科系講座小児科学分野に入局。現在、おかもと小児科・アレルギー科院長。専門はアレルギー疾患だが、新生児から思春期の心まで幅広く診療している。