舌下免疫療法の効果は、何年続きますか?

舌下免疫療法。

スギやダニのエキスを摂取することで、スギやダニに強くなるという、とても面白い治療法です。
スギ花粉症やダニのアレルギー性鼻炎に対して使用されます。

対症療法ではなく、アレルギー性鼻炎の根治療法として役立ちますので、私もアレルギー外来で積極的に導入しています。

舌下免疫療法の効果については、以前にブログでも紹介しました。

アジアにおける舌下免疫療法の有効性。

2019年1月17日

その記事の最後を、私は「舌下免疫療法の効果は何年続くのか。これが明らかになるといいなあと思いました」と締めくくりました。

今回は、「舌下免疫療法の効果は何年続くのか」について考えてみます。

舌下免疫療法の効果は何年続くか

今回紹介する論文はちょっと古いのです。

Long-lasting effects of sublingual immunotherapy according to its duration: a 15-year prospective study. J Allergy Clin Immunol. 2010; 126: 969-75.

舌下免疫療法(SLIT)の長期効果と最適な治療期間について調査しました。
SLITを3年、4年、5年投与した場合の長期効果を前方誌的に評価し、効果を比較します。

ダニへの感作を持つアレルギー性鼻炎・気管支喘息患者を15年間追跡調査しました。

対象者を次の4群に分けます。
①対症療法のみ
②SLITを3年
③SLITを4年
④SLITを5年

毎年、冬季に臨床スコア、皮膚感作、メタコリン反応性、鼻汁好酸球を評価しました。
臨床的効果期間は、臨床スコアがベースライン値の50%未満を持続している期間としました。
臨床的効果がなくなった後は、その患者にSLITの再投与を行いました。

78人の患者が登録され、59名が研究を完了しました。
①対症療法のみの12人は、試験期間中、臨床スコアの改善は認められませんでした。

②SLITを3年投与された患者では、臨床的効果期間はSLIT終了から7年でした

③④SLITを4年または5年投与された患者では、臨床的効果期間はSLIT終了から8年でした。

臨床的効果がなくなった後のSLIT再投与では、初回のSLIT導入よりも速やかに効果が発現しました。

メタコリン反応性や鼻汁好酸球は、臨床スコアと相関していました。

結論としてSLITの最適な投与期間は4年であり、3年よりも効果が持続し、5年と同様であることが示唆されました。

舌下免疫は4年すると終了後も効果は8年続く

小児アレルギーのトリセツには「3年間の治療終了後3-5年持続する」という表記があります。
私も5年くらいかなと思っていました。

今回の「4年続けたらやめたあとも8年続く」というのは、思った以上に長いと思いました。

4年というのは色々な意味でお勧めしたい期間です。
というのは、スギ花粉症に対して4年舌下免疫をすると、3年よりも鼻症状スコアが低下するという報告があるためです。

鼻症状スコア1以下への寛解率は、SLIT1年で20.9%、2年で18.8%、3年で31.9%、4年で41%と、舌下免疫を続けていくとだんだん効いてくることが分かっています。
(スギ花粉症舌下免疫療法のスギ花粉多量飛散年での臨床効果と治療年数の効果への影響. アレルギー. 2018; 67: 1011-1019)

舌下免疫療法は4年続けることで、より強く、より長く効く可能性があります。

8年後には効かなくなるのか?

舌下免疫療法を説明していると「効果は永遠じゃないんですね」と言われることがあります。
残念なことに、舌下免疫療法は4年がんばっても、その後8年で切れてしまうようです。

ただ、10歳から舌下免疫療法を始めるとすると、12年の間に、中学受験、高校受験、大学受験、就職活動など、人生を左右するイベントが相次ぎます。
鼻炎や喘息のコントロールがよくなれば、本来の力を発揮しやすくなるでしょう。

また、12年後には舌下免疫療法のキャッチアップスケジュール(効果が切れた人に対して再度舌下免疫を導入する方法)に関する知見がさらに高まっているでしょう。
さらには、12年後には新たな鼻炎治療が誕生している可能性もあります。

12年間もの間、ダニやスギに強い体質を手に入れることができるというのは、とても大切なことです。

まとめ

  • 舌下免疫は3年すれば7年、4年すれば8年続く。4年した方が効果が長続きする。
  • 舌下免疫療法は3年より4年したほうが効果が強くなる。
  • 舌下免疫療法は最低3年だが、私はできれば4年をお勧めしている。

ABOUTこの記事をかいた人

小児科専門医、臨床研修指導医、日本周産期新生児医学会新生児蘇生法インストラクター、アメリカ心臓協会小児二次救命法インストラクター、神戸大学大学院医学研究科内科系講座小児科学分野に入局。現在、おかもと小児科・アレルギー科院長。専門はアレルギー疾患だが、新生児から思春期の心まで幅広く診療している。