2018年8月19日追記:記載を具体的にしました。
子どもが病気になったら、学校をお休みさせると思います。
学校を休む理由は2つあります。
- 子どもにしっかり休養をとらせるため。
- 他のクラスメートに病気をうつさないため。
子どもの病気は、水分をとって、寝ていれば、たいていは良くなります。
休養はとても大切です。
では、子どもが元気になったら、次はどうしましょう。
もう学校に行ってもいいのでしょうか。
学校を休む理由は2つあると先ほど書きました。
ですから、たとえ元気になっても、他のクラスメートに病気をうつす可能性が高いのであれば、学校には行けません。
病気をうつす可能性がどれくらいに減れば、学校に行ってもいいのか。
それを判断するのは小児科医です。
ですが、ある小児科医は「熱が下がれば学校に行ってもいいですよ」と言い、ある小児科医は「咳が出なくなれば学校に行ってもいいですよ」と言い、基準があいまいに見えることがあります。
今回は、登校の目安について書きます。
学校保健安全法
学校保健安全法は、学校への出席停止や登校の目安などを定めた規則です。
学校で集団生活するうえで注意が必要な順に1種、2種、3種、その他の感染症の4つに分類されています。
ここで「学校」というのは、幼稚園から大学までを含めます。
(保育所は学校に含まれません。保育所には「保育所における感染症対策ガイドライン」という独自の感染対策があります。ですが、内容は学校保健安全法と同じです)
詳しくは文部科学省の学校において予防すべき感染症の解説に書いてあります。
見やすくなるように、登校の目安になるところだけをピックアップしてみました。
なお、通常の小児科医が一生診ることがないだろう1種の感染症については、省略しました。
出席停止が必要となる疾患
出席停止が必要であり、登校するためには投稿許可証が必要となる病気として、学校保健安全法の2種および3種の感染症を挙げます。
インフルエンザ
発症した日から5日経過し、かつ解熱から2日経過するまで出席停止です。
幼児では、発症した日から5日経過し、かつ解熱から3日経過するまで出席停止です。
たとえば、3月1日発熱し、3月2日インフルエンザと診断、抗インフルエンザ薬投与され、すぐ解熱したとしても、3月6日までは学校を休み、登校できるのは3月7日からです。
3月1日発熱し、3月3日インフルエンザと診断され、3月6日に解熱した場合は、小学生・中学生であれば3月8日までは学校を休み、登校できるのは3月9日からです。
幼児であれば登園できるのは3月10日からとなります。
百日咳
特有の咳が消失するまで又は5日間の適切な抗菌薬療法が終了するまで出席停止です。
麻しん
発しんに伴う発熱が解熱した後3日を経過するまでは出席停止です。
ただし、病状により感染力が強いと認められたときは、更に長期に及ぶ場合もあります。
流行性耳下腺炎(おたふくかぜ)
耳下腺、顎下腺又は舌下腺の腫脹が発現した後5日を経過し、かつ全身状態が良好になるまで出席停止です。
風しん
発しんが消失するまで出席停止です。
水痘(みずぼうそう)
全ての発しんがかさぶたになるまで出席停止です。
咽頭結膜熱(プール熱)
発熱、咽頭炎、結膜炎などの主要症状が消退した後2日を経過するまで出席停止です。
つまり、3月1日朝に熱が下がった場合、3月3日までは保育園・幼稚園・学校を休まなければなりません。
登園・登校できるのは3月4日からとなります。
結核
病状により学校医その他の医師において感染のおそれがないと認められるまで(目安として、異なった日の喀痰の塗抹検査の結果が連続して3回陰性となるまで)出席停止です。
それ以降は、抗結核薬による治療中であっても登校(園)は可能です。
なお、抗結核薬の予防投薬は、出席停止に該当しません。
髄膜炎菌性髄膜炎
症状により学校医その他の医師において感染のおそれがないと認められるまで出席停止です。
コレラ
治癒するまで出席停止が望ましい。
なお、水質管理や手洗いの励行などの日頃の指導が重要。
細菌性赤痢
治癒するまで出席停止が望ましい。
腸管出血性大腸菌
有症状者の場合には、医師において感染のおそれがないと認められるまで出席停止とします。
(明白な基準はありませんが、一例として便培養で2回連続陰性を確認するという方法があります)
無症状病原体保有者の場合には、トイレでの排泄習慣が確立している5 歳以上の小児は出席停止の必要はありません。
5 歳未満の小児では2回以上連続で便培養が陰性になれば登校(園)してよいです。
手洗い等の一般的な予防法の励行で二次感染は防止できるとされます。
腸チフス、パラチフス
治癒するまで出席停止が望ましいです。
トイレでの排泄習慣が確立している5歳以上の小児は出席停止の必要はありません。
5歳未満の小児では3回以上連続で便培養が陰性になれば登校(園)してよいです。
流行性角結膜炎
眼の症状が軽減してからも感染力の残る場合があり、医師において感染のおそれがないと認められるまで出席停止です。
なお、このウイルスは便中に1 か月程度排出されることもまれではありませんので、登校(園)を再開しても、手洗いを励行します。
急性出血性結膜炎
眼の症状が軽減してからも感染力の残る場合があり、医師において感染のおそれがないと認められるまで出席停止です。
なお、このウイルスは便中に1 か月程度排出されるので、登校(園)を再開しても、手洗いを励行します。
場合によっては出席停止となる疾患
学校保健安全法では「その他の感染症」に含まれます。
その他の感染症は、学校で通常見られないような重大な流行が起こった場合に、その感染拡大を防ぐために、必要があるときに限り、学校医の意見を聞き、校長が第三種の感染症として緊急的に措置をとることができるものです。
学校によって、対応がまちまちです。
時代の流れとしては、感染に対して慎重で、出席停止措置をとる学校が増えているのではないかと思います(エビデンスはありません)。
繰り返しますが、ここに挙げた感染症は、必ず出席停止にしなければならないものではありません。
学校が出席停止措置をとったときのみ、登校許可証が必要になります。
感染性胃腸炎(ノロウイルスやロタウイルスなど)
症状のある間が主なウイルスの排出期間であるが、回復後も数週にわたって便からウイルスが排出されることがあります。
下痢、嘔吐症状が軽減した後、全身状態の良い者は登校(園)可能だが、回復者であっても、排便後の始末、手洗いの励行は重要です。
サルモネラ感染症、カンピロバクター感染症
下痢が軽減すれば登校(園)可能ですが、菌の排出は長く続くことがあるので、排便後の始末、手洗いの励行は重要です。
マイコプラズマ感染症
症状が改善し、全身状態が良くなればは登校(園)可能です。
インフルエンザ菌感染症、肺炎球菌感染症
発熱、咳などの症状が安定し、全身状態くなれば登校(園)可能です。
溶連菌感染症
適切な抗菌薬療法開始後24時間以内に感染力はなくなるため、それ以降登校(園)は可能です。
伝染性紅斑(りんご病)
発しん期には感染力はないので、発しんのみで全身状態の良い者は登校(園)可能です。
急性細気管支炎(RSウイルスなど)
発熱、咳などの症状が安定し、全身状態の良い者は登校(園)可能ですが、手洗いを励行します。
EBウイルス感染症(伝染性単核球症)
解熱し、全身状態が回復すれば登校(園)可能です。
単純ヘルペス感染症
口唇ヘルペス・歯肉口内炎のみであれば、マスクなどをして登校(園)可能です。
発熱や全身性の水疱がある場合は欠席するのが望ましいです。
帯状疱疹
全ての発しんが痂皮化するまでは感染力があるものの、水痘ほど感染力は強くなく、水痘のような空気感染・飛沫感染はありません。
病変部が適切に被覆してあれば接触感染を防げるため、登校(園)可能です。
ただし、保育所・幼稚園では、免疫のない児が帯状疱疹患者に接触すると水痘にかかりやすいため、感染者は全ての皮疹が痂皮化するまでは保育児と接触しないこと。
また、水痘が重症化する免疫不全宿主(水痘ワクチン接種を受けておらず、白血病や免疫抑制剤で治療中の者)がいる場合には、感染予防に対する細心の注意が必要です。
手足口病
本人の全身状態が安定している場合は登校(園)可能です。
流行の阻止を狙っての登校(園)停止は有効性が低く、またウイルス排出期間が長いことからも現実的ではありません。
手洗い(特に排便後、排泄物の後始末後)の励行が重要です。
ヘルパンギーナ
全身状態が安定している場合は登校(園)可能ですが、長期間便からウイルスが排出されるので、手洗い(特に排便後、排泄物の後始末後)の励行が重要です。
A型肝炎
発病初期を過ぎれば感染力は急速に消失するので、肝機能が正常になった者については登校(園)可能です。
B型肝炎
急性肝炎の急性期でない限り、登校(園)可能です。
HBV キャリアの出席停止の必要はありません。
ただし、キャリアの血液に触れる場合は手袋を着用するなど、上記の標準予防策を守ることが大切です。
例外的な場合、例えばHBV キャリア児が非常に攻撃的でよくかみ付く、全身性の皮膚炎がある、出血性疾患がある等、血液媒介感染を引き起こすリスクが高い場合には、主治医、保育者、施設責任者が個別にそのリスクを評価して対応する必要があります。
伝染性膿痂疹(とびひ)
出席停止の必要はありませんが、炎症症状の強い場合や、化膿した部位が広い場合は、傷に直接触らないように指導します。
伝染性軟属腫
出席停止の必要はありません。
アタマジラミ
出席停止の必要はありません。
ただし、できるだけ早期に適切な治療をする必要があります。
疥癬
治療を始めれば出席停止の必要はありません。
ただし手をつなぐなどの遊戯・行為は避けます。
角化型は感染力が強いため、治癒するまで外出は控えます。
カンジダ感染症
出席停止の必要はありません。
乳児のオムツ交換時に、他の児と接触しないようにします。
白癬せん感染症、特にトンズランス感染症
出席停止の必要はありません。
ただし、接触の多い格闘技の練習・試合などは、感染のおそれがなくなるまでは休ませます。
出席停止日数の数え方
インフルエンザは、発症5日経過するまでは登校できません。
つまり、6月1日にインフルエンザで発熱した場合、6月6日までは登校禁止です。
6月7日から登校できます。
いっぽうで、解熱後2日は登校禁止という規則もあります。
つまり、6月1日にインフルエンザで発熱した場合、6月5日に熱が下がった場合、6月7日までは登校禁止です。
6月8日から登校できます。
(幼児であれば、解熱後3日は登校禁止ですので、6月9日から登校できます)
2つの条件の、どちらか遅いほうから登校できます。
まとめ
ここに書いた登校の基準は、あくまで文部科学省が定めた目安でしかありません。
また、登校の目安があいまいなものもあります。
マイコプラズマはEBウイルスなど「全身状態がよいもの」という定義は不明確です。
マイコプラズマの登校許可については、別記事に書きました。
学校において予防すべき感染症の解説にも「ただし、病状により学校医その他の医師において感染のおそれがないと認めたときは、この限りではない」と記載されています。
医者は、医者としての良心と倫理に従って、登校禁止の期間を調節することが可能です。
ですが、いろいろな医師がいろいろなことを言うと、学校も、患者さんも混乱してしまうでしょう。
原則をきちんと理解したうえで、適切な投稿許可証を書くようにしましょう。